連載
posted:2021.2.26 from:山口県下松市 genre:旅行
PR 下松商工会議所・下松市観光協会
〈 この連載・企画は… 〉
ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。
writer profile
Shinsuke Isomura
礒村真介
いそむら・しんすけ●山口県生まれ。神奈川県葉山町在住。男性モノ情報誌『Begin』の社員時代にアウトドアギアの造形に魅せられ、運動経験ニアリーゼロながら「試してみたい」という編集者魂でトレイルランニングに没頭。やがて自分の体力を試す方向にも目覚め、もっと山を駆けまわりたいとフリーランスに。「トレイルランがサーフィンみたいになればいいな」と本気で思っている。ホームマウンテンは仙元山(標高118m)。
自分の足で直に自然を感じられるからと、
世界的に人気が高まっているトレイルランニング。
日本でも、全国各地で地域おこしを兼ねた大会が開かれている。
そのなかで毎年リピーターを増やし、存在感を高めている大会のひとつが
〈くだまつ笠戸島アイランドトレイル〉だ。
舞台となるのは山口県下松(くだまつ)市の笠戸島。
住みよいまちランキングの上位常連である下松市から、
瀬戸内海にひょっこりと突き出す、三日月形をした12平方キロ弱の島になる。
例年なら2月に行われる大会は、新型コロナウイルスの影響で
残念ながら2020年に続き、2021年も2年連続で中止となってしまった。
けれども「あのコースをもう一度、タイムを気にせず回りたい」と、
大会のコースを走りに訪れるトレイルランナーも少なくない。
くだまつ笠戸島アイランドトレイルのプロデューサーである、
プロトレイルランナーの奥宮俊祐(おくのみやしゅんすけ)さんもそのひとり。
実は、この大会が縁で「くだまつ観光大使」にも選ばれている。
トレラン×地域創生にも取り組む奥宮さんに、
コースを振り返りながら笠戸島の観光スポットを聞いた。
「笠戸島は大部分が森林で、細長く延びた形をしています。
集落は山あいに点在していて、古くからそれぞれをつなぐ山道が切り拓かれていました。
それらの古道を整備した、
島の端から端までをつなぐ『スカイ・ハイキング・ルート』もあるんですよ。
こうした島の特徴は、
トレイルランニングの人気大会の舞台になりやすい条件が揃っているといえます。
もともとは縁もゆかりもない場所だったのですが、
今ではコースの準備や、トレイルランのセミナーにかこつけて訪れるのが待ち遠しくって」
コース上からはところどころで瀬戸内海の海と島、いわゆる多島美を眺められる。
日本ではそう数の多くないオーシャンビューのトレイルだ。
西側が開けているから夕陽も抜群に美しい。
「なかでも好きなのが、〈国民宿舎 大城〉から眺める夕陽です。
客室からもいいのですが、ここの温泉が自分史上最高クラス。
目の前のオーシャンビューを遮るものが何もない『インフィニティ露天風呂』があるんですよ。
陽が沈めば少し先の造船所の明かりが夜景を彩って、
何ともいえない雰囲気に浸れます」
大会でもスタート・ゴールの会場として使われ、
笠戸島唯一の温泉宿として島の観光では外せない。
笠戸島は魚の養殖も盛んだ。
「山を走るだけでなく、海で釣りをするのも趣味」という奥宮さんは、
大城に泊まるときに、新鮮な魚介に舌鼓を打つのも忘れない。
「『笠戸ひらめ』と呼ばれる養殖ひらめが特産品で、
ランチでも夕食でもひらめ尽くし。何といっても一番はお刺身ですね。
あとはとらふぐ。ヒレを熱燗に浸したふぐのヒレ酒は病みつきになります。
笠戸ひらめが恋しくなったら、
炊飯器で手軽につくれる〈笠戸ひらめパエリアの素〉をお土産にぜひ。
養殖ひらめをはじめ、きのこやレモン、にんにく、容器のブリキ缶にいたるまで、
オール下松産のお土産なんです」
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トレイルランニングを通して回れる距離に見どころが凝縮されている笠戸島。
2月に開催されている大会では、
32キロのロングと、19キロのミドルという2カテゴリーが用意されている。
どちらかのコースを走りつつ観光し、1日かけて回ってみたい。
「大城の近くにある『海上遊歩道』はお気に入りのポイントで、
スタート後にここを通ってもらいたいからとコースを変更したほどです。
海の上にせり出した遊歩道が数百メートル続きます。
風光明媚な瀬戸内海を眺めながら、海の上を漂う感覚を味わってください。
釣り用の桟橋もあって、走らないときにはアジなどを狙いに行くことも。
笠戸島の周りは潮の流れに恵まれていて、魚影が濃いから釣り好きにはたまりません」
このポイントをはじめ、笠戸島は全島的に岸から狙いやすく、
安全に楽しめる釣りのポイントが多い。奥宮さんも毎回ルアーを持参しているとか。
海上遊歩道から臨めるのは「はなぐり浜」。
内海に面したおだやかなビーチとして知られている。
西日本有数の夕陽の名所として知られる「夕日岬」と、
海水の浸食により不思議な穴の開いた「はなぐり岩」にも目を奪われる。
「大会開催期間中は、私たちスタッフはコースの4キロ地点にある
〈家族旅行村〉のコテージに宿泊しています。
アウトドアを満喫できるバーベキュー場やオートキャンプ場が完備されているので、
アクティブ派の方はこちらもオススメですよ。
大城よりもさらに高台に位置しているので、夕陽の見事さはそれ以上かもしれません」
さらにその少し先、5キロ地点にある「夕映えの丘」まで登れば、
一帯の頂上にあたるため、四方八方に島と海の眺望が展開。
本土と島を結ぶ笠戸大橋もその全貌がくっきりと浮かぶ。
車道はないので、自分の足でトレイルを登らないとアクセスできないのだ。
でも、それがまたいい。
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三日月のような形をした笠戸島の真ん中、
くびれの中央に当たる地点はコース上の8キロ過ぎ。
ここには今もバリバリに稼働する造船所の〈新笠戸ドック〉がある。
「下松では鉄道車両を製造していたりもして、
工場好きの方にはたまらないと思います。
先ほどお話しした、大城の温泉から眺められる夜景は
この新笠戸ドックです」
島の南西部はより手つかずの自然が色濃く残り、
トレイルランやハイキングなど、自分の足でないと辿ることはできない。
この付近には戦時中に使われていた砲台や壕の跡もある。
「車でアクセスできるのは深浦の集落まで。
レースでは島の南西部をぐるっと回ってから、深浦の集落へと降ります。
スタートからは17キロの地点で、エイドステーションが設置されます。
ここではおじいちゃんおばあちゃんが大漁旗を振りかざして応援してくれるんですよ。
私は全国各地でレースをプロデュースさせてもらっていますが、
笠戸島の大会は地元の方々の想いがとりわけ熱いです。
請け負う側としてもその熱量に応えたいという気にさせてくれますし、
どうしたら参加者に楽しんでもらえるかを本気で考えてくれている、
おもてなしの島なんです」
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大会ではロングコース26キロ地点にあたる本浦集落のエイドステーションから、
「夕映えの丘」まで登り返し、大城に戻ってフィニッシュとなる。
この登り返しが「スカイ1号」と呼ばれるトレイルで、なかなかにタフな急登だ。
「観光でトレイルランしているならスカイ1号を登り返さず、
本浦から笠戸大橋のたもとにある〈下松市栽培漁業センター〉に足を延ばすのもいいですね。
ここでは笠戸ひらめなどの養殖を見学できるほか、
小さい子向けにタッチングプールでの手づかみやヒラメのさばき方講座も開かれていて、
子ども連れのファミリーでも楽しめます。
もちろん海産物の販売もしていて、先ほど紹介したパエリアの素はこちらでも購入できます」
コンパクトにたどれる距離感が魅力の笠戸島は、
本土側にあるJR山陽本線の下松駅からも路線バスに揺られて10分ほど。
下松駅の周辺は、全国でも珍しい牛骨醤油スープの
「下松ラーメン」がご当地グルメとして知られている。
「毎回必ず立ち寄る〈中華そば 紅蘭〉という贔屓のお店があって、
このあたり一帯の牛骨醤油ラーメン発祥の店だと聞いています。
コクのあるまろやかなスープに、チャーシューとともに食べると、もう絶品!
濃厚な舌触りは、走り終わったあとのカロリー補給にもぴったりです」
「紅蘭のラーメンでシメると、また笠戸島に帰ってきたいなと思わせてくれるんです」
そう笑顔で語ってくれた奥宮さん。
瀬戸内海の多島美を、せかされることのない自分のペースで味わえる。
トレイルランを通した島旅は、笠戸島観光の新しい選択肢になり始めているようだ。
profile
Shunsuke Okunomiya
奥宮俊祐
埼玉県在住のプロトレイルランナー。FunTrails代表。学生時代は箱根駅伝を目指すも、不整脈に悩まされ叶わず。一時はパン職人として働くも、25歳のころにトレイルランニングと出会ってその道へ。日本山岳耐久レース(ハセツネ)での活躍のほか、数々の国際レースで好成績を収めている。大会プロデューサーとしての顔も持ち、数多くのトレイルレースに関わりつつ普及活動に努めている。
information
くだまつ笠戸島アイランドトレイル
Web:くだまつ笠戸島アイランドトレイル
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