連載
posted:2016.9.24 from:北海道帯広市、鹿追町、新得町 genre:活性化と創生
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〈 この連載・企画は… 〉
ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。
writer's profile
Team YumYum
チームヤムヤム
(山本 学 ・ 山本えり奈)
旅をしながら十勝に暮らす編集デザインチーム。あいうえお表やカレンダー、すごろくやイラストマップなど、日々の楽しみをデザインする作品をつくっています。「ヤムヤム旅新聞」にて、旅やローカルな魅力を発信中。
http://www.tyy.co.jp
photographer profile
Nobuo Minoura
箕浦伸雄 (ケルビン堂 )
東京生まれ。十勝に移り住んで24年、農業と人の営みをテーマに撮影しています。30年ぶりに自転車に乗り始めました。
kelvin-do.com
credit
supported by WAIGAYA TOKACHI
昨年北海道十勝地方と台湾台北市を舞台とする短編映画が、
YouTubeで動画配信され大きな反響を呼びました。
タイトルは『My little guidebook(マイ・リトル・ガイドブック)』。
台湾の女優を主演に起用し、台湾人のヒロインが新たな夏の北海道の観光スポットを探しに、
海を越えて十勝をひとりで訪れるというストーリー。海外からの視点を織り交ぜながら、
十勝に暮らす人々と美しい風景を鮮やかに描き出した映画です。
今秋2016年10月23日、
その続編『My little guidebook -ICE-』が公開されることになりました。
続編の舞台は、冬の十勝。
実はこの映画、制作会社も配給会社もない、十勝出身の有志による自主制作映画。
映画館での上映ではなく、世界に向けてYouTubeで無料動画配信されています。
そこには、映像の力で、地元十勝の魅力を
世界中に情報発信をしたいというプロジェクト参加者の強い想いがありました。
この少し変わった映画ができるまでのストーリーを紹介する前に、
まずは真冬の十勝で行われた、映画の撮影風景を紹介します。
氷点下20度にもなるという、極寒の中でこその美しさあふれるシーン。
それはどのように撮影されているのでしょうか?
今年2016年1月末〜2月にかけて行われた『My little guidebook -ICE-』の撮影。
取材に訪れた日は、凍った湖の上でのシーンが撮影されていました。
舞台は、北海道大雪山国立公園にある、然別湖(しかりべつこ)。
14名の撮影チームに加え、エキストラ出演に協力してくれた
地元ボランティア約30名が湖上で撮影を行っていました。
毎年冬になると、全面凍結した湖上に〈しかりべつ湖コタン〉と呼ばれる氷の村が現れます。
地元や有志の人たちのボランティアにより、
“イグルー”と呼ばれるかまくら型の氷の家が手づくりされる、
今年で36年目を迎える鹿追町観光スポットです。
日中にもかかわらず、気温は氷点下10度以下。
取材のメモを取るペンも凍ってしまうほどの寒さです。
過酷な寒さのなかで、撮影クルーは、帽子、手袋、ダウンジャケット、
スノーブーツと完全防寒して撮影に臨みます。
それでも長時間の撮影では次第に寒さがこたえます。
映画の主演は、台湾で活躍する女優・吳心緹(ウー・シンティ)。
facebookで80万人以上のファンを持つほどの人気があり、
台湾の旅番組やドラマにもレギュラー出演。1作目に続き、続編でも主演を務めます。
極寒の過酷な撮影のなかでも、明るい笑顔で撮影に臨むシンティ。
「台湾では基本的に雪はほとんど降らないので、冬の十勝での撮影は初めてのことばかり。
山も湖もいろんなところが雪で包まれてるのがとてもきれいで楽しいです」
監督・脚本は、十勝・幕別町出身、東京在住の逢坂芳郎さん。
地元十勝の高校卒業後、ニューヨーク市立大学で映画制作学を学び、
帰国後、東京を拠点に映像作家として活動しています。
本プロジェクトの1作目『My little guidebook』は、映画初監督となった作品です。
カメラは、マイナス30度まで耐えられるものを使用。雪による照り返しを防ぐため、
モニターチェックは遮光カバーをつけた状態で行っています。
撮影に使うドローンは、低温だとバッテリーが起動しなくなってしまうため、
カイロを入れた袋にバッテリーを保管し、使う前にはお腹に入れて
人肌で10分温めてから飛ばします。氷上のため、重い機材は運ぶ込むことは避け、
小さなソリにカメラをのせて撮影する方法も行われていました。
そんな撮影手法も十勝の冬ならでは。
この日を含めて、撮影は約1か月間、冬の十勝を舞台に行われました。
この撮影で、ロケハンも含めて逢坂さんが車で走った距離は、8000キロ以上。
十勝の広さを再認識するとともに、
久々に過ごす十勝の雄大な自然のなかでの生活を体験することで、
都会では忘れていた感覚が戻ってきたといいます。
「十勝に来ると、おなかがすくし、ごはんがおいしい、夜になると眠くなる。
十勝で生活していると、東京では感じられない、
そういう当たり前の感覚がよみがえってくるんです。
時間や場所によって少しずつ変わる景色にも自然の恵みや偉大さを感じることができます」
昨年公開された1作目の夏編、そして今回撮影が行われた2作目の冬編。
発案から製作資金の調達、撮影、公開まで、
すべてが地元出身の有志の手によって進められています。
人気女優のキャスティングや、製作資金の調達はどのように行われたのでしょうか?
次ページでは、この映画づくりが始まるまでのストーリーを紹介します。
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映画のエグゼクティブ・プロデューサーを務めるのは、十勝・帯広市出身で、
東京でビジネス系の弁護士をしている柏尾哲哉さん。
生まれ育った十勝を離れ、東京で暮らしているなかで、
地元のために何かしたいという想いが年々強くなっていったそうです。
「東京では、十勝出身者や十勝好きの人たちが集まる交流会に参加していました。
そうした人たちと集まって話していると、みんな地元愛が尋常じゃなく強いんです。
十勝はとてもいい場所で、いい人たちがたくさんいるから、
そのよさをもっと広めたい……そんな想いを持った人たちがたくさんいました」
“十勝愛”全開の会話で盛り上がるなか、何か実際の活動を行ってみようということで、
まずは、自分たちが好きな十勝を、
もっとたくさんの人に見てもらう機会をつくろうと”十勝ツアー”を企画することに。
ツアーの協力者を呼びかけたところ、約20人ほどのメンバーが集まりました。
“十勝が好き”という想いを共有して、年齢性別問わず初めての人でも仲良くなれる。
そんな十勝らしい地元愛が人と人とをつないでいきました。
「十勝をキーワードにすぐ仲間が集まるのも、地元愛の強い十勝ならではかもしれませんね」
十勝への想いをかたちにする第一歩として、「ワイガヤ十勝」と名づけられたその会は、
その後の映画製作の母体となっていきます。
2013年7月にツアーは開催され、東京に住む人や、台湾など海外からも人が集まり、
総勢30人の参加がありました。とうもろこし畑の中を散歩し、
もぎたてのとうもろこしを食べたり、トラクターが引く客車に乗って
広大な小麦畑を走り抜けたり、森の中でのセグウエイ体験を楽しんだりと、
十勝ならではの体験を織り交ぜながらのツアーは、
これまでと違った魅力を伝えることができたと反応も上々でした。
「ツアーで十勝に来てもらうだけでなく、
映画をつくって十勝からの情報発信を行うのもいいのでは」
実はこのツアーを準備するなかで、
テレビ局に勤めていたメンバーからこんなアイデアが出ていました。
札幌、函館、小樽、富良野、知床や阿寒などに比べ、
北海道の観光地としてまだあまり知られていない。
「十勝」を舞台にした映画をつくり、
映像の力でその観光地としての魅力をより広く紹介したいという想いが募りました。
当時、北海道を舞台にした中国映画『狙った恋の落とし方。』(2009年)が、
中国での”北海道ブーム”の火付け役となったといわれるほど話題になっていました。
しかし、その映画の舞台に、十勝は登場していなかったのです。
「知床や阿寒湖は訪れているのに、どうして十勝に来ないんだと、
もどかしく思っていました。それなら自分たちで
十勝を舞台にした映画をつくったらいいんじゃないかと思いました」と柏尾さん。
映画製作の方向性について、メンバーで話し進めるうちに、
YouTubeで無料動画配信するアイデアが浮かびました。
「映画館での上映は見る人も期間も限定されてしまう。どうせやるなら、
日本だけではなく、全世界で十勝を有名にするような取り組みにしよう」
映画館での上映にこだわらず、
インターネットで公開すればより世界に広く届けることができる。
東京など中央の制作会社に頼らず、
地方から世界に向けてダイレクトに発信することもできる。
短編映画をYouTubeで配信することは当時とても珍しいことでしたが、
十勝の魅力を多くの人に届けたいという想いにはぴったりでした。
映画のターゲットとして、柏尾さんが注目したのは、
世界のなかでも、日本への旅行者が多いアジア・台湾の人々。
「十勝の観光客には台湾人が多いというデータもあり、
人口的にも中国語圏の言葉でつくると数十億人規模の広がりがあるんですね。
海外、特に身近なアジアからの視点から見ることで、地元の人では気づきにくい
十勝の魅力をもう一度見直すことができるんじゃないかと考えました」
映画づくりのプロジェクトが始まるなか、
柏尾さんは、知人の紹介で若手映像作家・逢坂芳郎さんに出会います。
映画の構想を大まかに伝えると、
「僕も十勝出身で、映像で十勝のすばらしさを伝えたいと思っていました」と逢坂さん。
逢坂さん自身も、個人的に十勝の映像を撮りためていて、
いつか映画をつくってみたいという、同じ想いを持つ人でした。
YouTubeで配信することについても、
最初の打ち合わせの段階から賛同してくれていました。
逢坂さん自身も、奥さまが台湾の人で、
また台湾の映画監督侯孝賢(ホウ・シャオシェン)氏に憧れていたり、
台湾に対する思いも特別なものがありました。
逢坂さんが米国で映画製作を学んでいた時代に知り合い、国際的な多くの映画プロジェクトを
一緒に手がけてきたプロデューサーの粟田経弘さんも台湾に長く在住して活躍していました。
粟田さんも、映画のプロデューサーとして参加することになり、
海外からの視点で十勝の魅力を表現することのできる制作チームが一気にでき上がったのです。
監督やプロデューサーと出会い、製作チームは揃ったものの、問題は資金づくり。
通常の映画制作は、配給会社が映画館で配給し、
観客からの入場料で収益を生み出す仕組み。しかし、無料で動画配信するのであれば、
入場料による収益を期待できません。柏尾さんは、
「収益性を目的として今回の映画づくりを考えたことはありません。
十勝と世界をつなぐ映像資産を地域の力でつくり出す、
未来への投資プロジェクト」と位置づけていました。
「地域による未来への投資」としての映画づくり。
そのような製作資金を調達するために、柏尾さんたちが注目したのは、
海外で広まり始めていた「クラウドファンディング」。
インターネット上で、取り組もうとするプロジェクトを広く紹介し、
共感してくれる支援者からの小口の資金を数多く集める仕組みです。
「僕たちは有志の集まりで、同じ企業に属しているわけでもなく、
またこのメンバーでの実績といえる作品もまだありませんでした。
地元への思いから“まずはやってみよう”というもの。補助金や銀行融資などには馴染みにくく、
クラウドファンディングで直接資金支援を訴えることが局面を切り開くと考えました」
(柏尾さん)
当時、日本ではその言葉にもまだ馴染みもない頃。
大手企業サイバーエージェントが、国内でクラウドファンディングを行う
プラットフォームを立ち上げようとしていたところでした。
柏尾さんは、社長に直接会って映画づくりへの熱い想いを伝えます。
そうして、サイバーエージェントが提供するクラウドファンディング
〈makuake〉(マクアケ)の第1号のプロジェクトとして
資金集めがスタートすることになったのです。
映画づくりのために集めるべき最低限の金額として掲げた目標は、200万円。
この金額が集まらない結果であれば、
プロジェクトへの十分な共感が得られていないと判断し、
映画づくりそのものをあきらめるものと決めていました。
クラウドファンディングは、2013年8月から約2か月半の期間をかけて行われました。
前述の十勝ツアーを開催した2週間後のことでした。
「まずは、十勝自体に関心をもってもらうこと、
僕たちが何に情熱をもっているのかを知ってもらうことから始めました。
「十勝サポーターズ」というfacebookページをつくってプロジェクトを紹介するほか、
地元で説明会を開催したり、知人やその知人をあたったりと、地道に活動を続けました」
と柏尾さんは当時を振り返ります。
最初の2週間で30万円集まり出足は好調かと思いましたが、
その後ずっと伸び悩み、残り2週間というところでも
目標金額の4分の1しか集まりませんでした。
当初の期待とはまったく異なる展開。多くの人に伝えることの難しさを実感する一方、
自分たちの取り組み自体に思い違いがあるのではないかと不安な気持ちになりました。
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ところが、最後の48時間で奇跡が起こります。
100人以上の人から120万円以上の支援がどんどん集まっていったのです。
「地元出身の若い才能が手を挙げて地元のための映画づくりに
取り組もうとしているのを実は多くの人が見ていてくれたのです。
最後の最後で、プロジェクトをみんなの力で実現しようという思いがつながり、
ネットを舞台としたムーブメントが生まれました。
ネットの画面を開くたびに金額が伸びているのに興奮しました。
その頃開催されていた日本シリーズよりも見応えのあるドラマでした(笑)」
期間ギリギリでの劇的な展開。地道な活動が実を結び、
最終的には123名もの人が支援し、約217万円の支援が集まりました。
地域に根ざしたクラウドファンディングの活用法としても、
各方面から注目を集めることになりました。
製作資金にもようやく目処が立ち、次に取りかかったのは、脚本づくりとキャスティング。
主演女優として、吳心緹(ウー・シンティ)を候補に挙げたのは、
監督・脚本を担当する逢坂さん。当時facebookで16万人以上のファンを持つ、
台湾の人気タレントでした。
「facebookで人気のある台湾のタレントを調べていたら、シンティのことが出てきたんです。
当時はまだ映画出演の実績はなかったのですが、
元気で表情が豊かなので、十勝を元気づける映画にとても向いていると思いました」
と逢坂さん。
台湾の映画業界につながりを持っていた粟田さんがコンタクトをとり、
映画のプロジェクトについて説明。
シンティは、日本の作品ということにも興味を持ってくれて、
彼女にとっても映画初主演ということもあり、
前向きに逢坂さんたちの相談に応じてくれました。
その後、進められた脚本づくり。
逢坂さんは、連日台北のカフェで脚本を書き上げ、
フィードバックを柏尾さんやスタッフにもらいながら仕上げました。
「観光地をめぐるストーリーが自然になるよう、シンティの設定は、
旅行代理店の社員ということにしました。外国人を主人公にすることで、
外からの視点で十勝の魅力を再発見できると考えたのです」
撮影は、夏の十勝を舞台に、およそ2週間をかけて行われました。
限られた資金での映像づくりは、
エキストラとして地元十勝の人たちも多く参加しながら進められました。
訪れる旅人に対してオープンで懐の広い対応をしてくれると言われる十勝の人々。
映画の撮影にも快く協力してくれたと逢坂さん。
「普通なら前もって申請がいるようなこと、
例えば、撮影当日にふとビルの屋上から夜景が撮りたいって思っても、
十勝だとすぐ実現するんです。商工会やデパートの受付で相談すると、
すぐ使っていいよ、と言ってくれて。その場で思いついたことでも、
すぐに対応してもらうことができたんです。
そのおかげでより深みのある撮影ができました。
この映画は地元十勝でないと撮れなかったと思っています」
原作なしのオリジナル脚本。逢坂さんの描くストーリーは、
フィクションにもかかわらず、限りなくリアルな、
ドキュメンタリーにも近い構成を感じさせます。
「夏の十勝を舞台に、農業や酪農文化に根ざした風景や、人々を描きたいと思いました。
十勝の人たちの暮らしが息づく、広い畑の美しさ。
そうした風景が観光客を迎える場にもなるということを、
世界中の人に知ってほしい」と話します。
美しい風景の中に、人間の成長や心境の変化を捉える優しい視線。
そして、新しく知ることでつながる風景。『My little guidebook』では、
美しい風景の中に刻まれた人々の営みが描き出されています。
YouTubeでの配信がスタートすると
1週間で10,000人以上が視聴し、台湾のニュースにも取り上げられました。
地元自治体関係者の紹介でトランスアジア航空の台湾・日本間での機内上映も実現し、
まさに十勝と台湾を結ぶ橋渡しとなりました。
2015年の札幌国際短編映画祭で「北海道監督賞」を受賞。
地元の魅力を世界に発信をしたいという想いでゼロから始まり、
つくられた小さな映画は、世界に向けて発信され、各方面から注目を集め、
そして今もYouTube上で、十勝の魅力を世界中に日々伝え続けています。
『My little guidebook』」夏編は、以下のURLにて公開されています。
そしていよいよ、
2016年の今秋公開される『My little guidebook -ICE-』(冬編)。
続編の舞台を冬に設定したことについて、柏尾さんはこう話します。
「十勝の冬は、観光のオフシーズンだと地元の人たちは思っています。
でも、雪を見たことない台湾や東南アジアの人からすると、
ただ雪を見るだけでも来たいという声もあるんです。
冬の十勝の美しさを、観光の魅力として伝え、
冬を舞台とした新しい十勝と世界のつながりをつくり出せればと思いました」
今回の冬編もYouTubeで世界への無料動画配信する方針は前作夏編と同じ。
ただし、より国際色を豊かにするため、夏編の中国語と日本語から
冬編では、日本語、中国語、英語が飛び交うマルチリンガルな台詞劇になっています。
冬編の製作に向けては、大きな後押しをしてくれた方々がいます。
もうひとりのエグゼクティブ・プロデューサーである林克彦さんは、
帯広市のクラシカルなホテルとして知られる〈北海道ホテル〉の専務。
「逢坂さんは高校の後輩でもあるので、夏編の製作時も応援していましたが、
実際に見るまでは、正直どんな作品になるかわかりませんでした。
試写会で初めて作品を観ると、不覚にも涙が出るほど感動しました。
この情熱とクリエイティブな才能は、
地域のためにもっと大きく生かすことができると確信しました」と林さんは、
1作目同様のクラウドファンディングに加え、
十勝管内の地方自治体からの支援や民間企業からのスポンサー支援の取りまとめに
精力的に動いてくれました。
また、台湾とのかけ橋となってくれた十勝日台親善協会の中村浩和副会長も、
冬編の製作に向け心強い応援の手を差し伸べてくれました。
「夏編の上映会に参加し、大いに感動しました。
映画のクオリティの高さに驚き、続編の製作を積極的に応援したいと思いました。
2016年は、帯広市内の〈幸福駅〉と台湾北西部、新竹県の〈合興(ごうこう)駅〉との間で、
友好駅締結が予定されています。今回の続編が、さらに
十勝と台湾の友好推進を加速する役割を担ってくれることを期待しています」
冬編製作に向けたクラウドファンディングも、前回同様出足は苦戦したものの、
最終盤の劇的な展開で、今度は193名から316万円という、
前回を大幅に上回る支援を集めることができました。
「夏編での取り組みと完成した作品のクオリティの高さのおかけで、
冬編の製作はスタートの段階から、
前作とは比較にならないほど幅広い地域からの支援を受けて
プロジェクトを開始することができました。
映画づくりで地域が動いた、と感じました」と柏尾さん自身も驚いたそうです。
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続編のストーリーは、旅作家となった主人公のチィチィが、
休暇を使って台湾から十勝を再び訪れるところから始まります。
舞台は、氷点下20度にもなる真冬の十勝。
メインロケーションは、上士幌町、新得町、鹿追町。
雄大な自然によるネイチャースポットやアウトドアアクティビティが豊富で、
然別湖コタン、サホロスキー場、糠平温泉など、
十勝の冬を体験するのにも魅力的なエリアです。
前述の然別湖コタンでの撮影シーンでは、チィチィがアイスブロックづくりを取材。
チィチィはそこで、オーストラリアからやって来た
ルークというアーティストに出会います。
チィチィは、十勝に魅せられるルークを取材することに。そこから、
ふたりのドラマが展開していきますが、それは映画を観てからのお楽しみ。
このシーンに登場するアイスブロックづくりは、
凍った然別湖の上で、たくさんの地域ボランティアの人たちが
スノーダンプやスコップを手に作業してつくりあげました。
農業用コンテナに、湖水の水をまぜた雪をぎっしりつめていく作業。
寒さにより、あとはアイスブロックは自然に凍っていきます。
極寒にも関わらず、汗だくになるほどハードな作業です。
そんなたくさんの地域の人たちの想いものせて、物語は紡がれていきます。
冬編の映画のなかで、印象的なテーマとして登場するのが、
“雪の結晶”。寒さならではの美しさを撮影することは、
逢坂さんの今回の目標でもありました。
「今回はたくさん雪の結晶を撮影しましたが、氷点下12度以下で降る雪は、
その結晶が大きく、形が美しいままに残るんです。
然別湖畔で朝に見た雪は、今回の撮影で一番美しい結晶でした」
六角形の花のような美しい形をとどめた雪の結晶は、
十勝の厳しい寒さだからこそ生まれた自然の美。さまざまな姿かたちの結晶は、
映画の中では大切なメッセージとして映しだされています。
ほかにも、海辺に打ち上げられた宝石のような氷の群れ、
川を覆う透明なカーテンのような霧氷現象など、
極寒の十勝だからこそ生まれる、神秘的な美しさを収めた映像。
十勝の冬の空気を映画でそのまま感じられるような仕上がりになっています。
「僕が持っていた冬のイメージ、冬の十勝の空気や色をそのまま映像で表現しています。
何気ないシンプルで純粋なストーリーが、十勝の純粋な景色とマッチしていくと思います」
出会った人々の言葉によって、映画の中の主人公は心を動かされ、
風景の中に自らのストーリーを紡ぎ出していきます。
実は、それは監督自身が実際に出会った人々であり、心に響いた部分でもあります。
「農業や酪農の文化が強く根づいている十勝では、人はいつも土に触れて生活してきました。
僕は十勝にいるとよく”earth”という単語を思い浮かべます。
地球、地表、地球の住民というさまざまな意味がありますが、
十勝ではそれをすべて感じられる。個人的にですが、
人間が生活するうえでの理想的な基準がここににあるんじゃないかと感じています」
チィチィと一緒に真冬の十勝を旅して、
十勝の人々のありのままの暮らしや生き方に触れてみてください。
完成したばかりの、映画のトレイラーはこちら。
本編は2016年10月23日に公開予定。youtubeにて世界無料配信されます。
十勝、札幌、東京、台北でプレミア上映会も予定されています。
information
インフォメーション
『My little guidebook -ICE-』
主演:吳心緹(ウー・シンティ)
監督・脚本:逢坂芳郎
プロデューサー:粟田経弘
エグゼクティブ・プロデューサー:柏尾哲哉・林克彦
企画:WAIGAYA TOKACHI
オフィシャルサイト:http://mylittleguidebook.jp/
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