連載
posted:2016.5.21 from:長野県南佐久郡川上村 genre:活性化と創生
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〈 この連載・企画は… 〉
ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。
writer profile
Ikuko Hyodo
兵藤育子
ひょうどう・いくこ●山形県酒田市出身、ライター。海外の旅から戻ってくるたびに、日本のよさを実感する今日このごろ。ならばそのよさをもっと突き詰めてみたいと思ったのが、国内に興味を持つようになったきっかけ。年に数回帰郷し、温泉と日本酒にとっぷり浸かって英気を養っています。
credit
Supported by 川上村
八ヶ岳の麓に広がる、長野県南佐久郡川上村。
人口4000人ほどの小さな村ながら、標高1300メートルの
冷涼な気候で育まれるレタスは、日本一の出荷量を誇っています。
世帯の平均年収が2500万円という裕福な村なのですが、レタス栽培は重労働。
収穫時期となる夏場は、深夜1時くらいに起きて暗いなかで収穫が行われ、
朝採りの新鮮なレタスが首都圏などに出荷されます。
そんなレタス農家を陰で支えているのが、女性たち。
そのなかでも家事と育児の両立で、
自由な時間をなかなか持てないお嫁さんたちを中心に、
村ではいま、小さな変化が起きようとしています。
〈KAWAKAMI Re:BRANDING事業〉というプロジェクトは、
「変わることは、希望。」という事業コンセプトのもと、
村が抱えるさまざまな問題を解決しながら、村民の意識改革を促すもの。
村の女性たちが家の中だけでなく、社会的にも活躍できる場や機会を創出するのが、
柱のひとつになっています。
その実現のためにつくられた仕組みが〈KAWAKAMI IDEA FOREST〉で、
村の女性などから出たアイデアを、企業や専門家のサポートを得ながら
事業化していくことを目指します。
村の農産物などを活用した新しい特産品のアイデアを募集する
「地域特産品事業アイデア部門」と、
ライフスタイルを向上させる事業のアイデアを募集する
「地域ライフスタイル事業アイデア部門」の2部門でさっそく募集をしたところ、
村内外46名の応募者から106点のアイデアが寄せられました。
そして2月21日に開催された
『KAWAKAMI 地域イノベーションアイデアコンテスト 2016』で、
一次選考を通過した8点のアイデアがプレゼンテーションされました。
こうした試みは初めてなので、どんなアイデアが出てくるのか
予測がつかない不安はあったものの、蓋を開けてみると興味深いものがズラリ。
最優秀賞を受賞した「Mama’s Rescue『森の手当て屋さん』」は、
病院のない川上村の課題に着目。
アロマテラピーなど薬草を使った自然療法で、
病気を未然に防ぐことを目的とした地域社会をつくるという、
いかにも女性の視点らしいアイデアでした。
ほかにも、おにぎりをレタスで包んだ「レタむすび」の商品アイデアをSNSで募り、
決勝大会を川上村で開催する「全国レタむすび選手権 in 川上村」や、
さるなしのジャムとヨーグルトと川上村の水で作る「さるなっしーでラッシー」と、
川上村産レタスと白菜を使った「川上ぎょうざ」を商品化し、
ご当地グルメにするアイデアなどなど。
またコンテストと同時に、『#discoverkawakami』と名づけた
ワークショップが開催され、ライフスタイルプロデューサーの村上萌さんとともに、
村の女性たちが川上村のいいもの、いいところを話し合う場も。
参加した女性は、次のような感想を述べています。
「いままでは周りに何か言われるのが怖くて、こんなことがしたいと
言えずにいましたが、コンテストとワークショップを通して
たくさんの人に関わらせていただき、共感してもらったり刺激をもらって、
自分でも何かできるかも、何かしてみたいと思うようになりました」
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参加者の「変わりたい」と思う気持ちは強かったようで、
そのわずか2か月後に、彼女たちが主体となって
『KAWAKAMI GIRL’S COLLECTION』というイベントを開催。
「村の女性による、村の女性がイキイキと輝くためのイベント」と銘打ち、
マッサージやネイル、手づくりアクセサリー、体験型のワークショップなど、
趣味や特技、前職でのスキルを生かした商品やサービスを、
すべて1コイン(500円)で提供。
女性たちの主導でこうしたイベントを開催するのは、実に村史上初!
一大イベントを終えて、参加者からはこんな感想が。
「『嫁ぐ相手は間違ってなかったけど、嫁ぐ場所を間違えた』って
口癖のように言ってたけど、初めてちょっとだけ川上に嫁いでよかったかな? って
思えました。これってほんとにほんとにすごいこと!!」
「『つながることは厄介なこと』みたいな価値観を、
なんとなく子どもの頃から感じていたけど、
友だちや仲間が増えていくって、やっぱり心強いしワクワクする‼」
「いつも受け身で自信がなく『私なんか……』が口癖だったのに、
ちょっとずつかもだけど変われてるんじゃない? 私!!」
「妻」「嫁」「母」という普段の役割を、束の間お休みして過ごした時間は、
いつもとは違う充足感とともに、今後の自信と希望につながったようです。
一連のプロジェクトをずっと見守ってきた西尾友宏副村長はこう話します。
「女性の才能やアイデアがまだまだ眠っていることを実感しました。
彼女たちが新しい村をつくってくれるエンジンだと思います」
また、プロジェクトをサポートしている、パートナーエージェントの田中淳一さんも
「村そのものが変わっていくのはまだまだこれからですが、
客観的に見ても少しずついい影響が出始めているのは事実です」と、
いい兆しが見えてきたことを教えてくれました。
変わっていく過程をそのまま記録することは、
彼女たちのモチベーションにもつながり、村内外へのアピールにもなる。
そんな思いから、川上村の女性たちのいまをとらえた動画も制作されました。
地域活性化や移住支援の方法はそれぞれですが、
地域のいいところを外に向けて発信するのではなく、
まず自分たちが地域の現状に目を向け、意識を変えて、
活性化させるというアプローチを選んだ川上村。
彼女たちの挑戦は、地方に暮らす多くの女性に勇気を与えてくれるはずです。
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