連載
posted:2016.3.14 from:埼玉県秩父市 genre:活性化と創生
〈 この連載・企画は… 〉
埼玉県秩父市。山々に囲まれ、自然豊かなこの地で、
メープルシロップをつくる取り組みが行われています。
その秩父の森で生まれたメープルシロップを味わえる〈シュガーハウス〉ができるまでを
秩父にUターンした井原愛子さんが綴る短期連載です。
writer profile
Aiko Ihara
井原愛子
いはら・あいこ●埼玉県秩父市生まれ。2014年外資系企業を辞めて、秩父にUターン。秩父の森づくりを行うNPOやメープル関係団体の活動に参加しながら、自然とそこに関わる人々にたくさんの刺激を受け、勉強の日々。2015年に自然の恵みを生かした商品開発やエコツアーの企画などを行う〈TAP&SAP〉を立ち上げた。現在、シュガーハウスオープンを目指して、秩父の地域プロデューサーとして日々奔走している。
http://tapandsap.jp
credit
協力:NPO法人秩父百年の森 http://www.faguscrenata.com/
樹液シーズン真っただ中の1か月間に、NPOや秩父樹液生産協同組合の協力を得て、
樹液採取の現場を訪れるエコツアーを企画しました。
コロカルニュースでも取り上げていただき、
平日2日間を含む全6日間の日程はほぼ定員が埋まり、
延べ120名以上の方に参加していただきました。
私が、このエコツアーの企画に力を入れているのには大きな理由があります。
もともと、自然や森に縁のない生活を送っていた私が、
一大決心をして秩父にUターンすることを決めた最初のきっかけが、
NPOが企画した森林観察会に参加したことだったからです。
木や山に関してまったく知識がない私に、
NPOのメンバーたちは丁寧に教えてくれました。
秩父の豊かな自然だけではなく、そこに関わる人たちにも感動したのでした。
だからこそ、知識のない人にも、NPOの活動や秩父の森に興味を持ってもらいたい、
私があのとき感じた感動をほかの人も感じてくれるのでは? と思ったのです。
和メープルエコツアーでガイドを務めるのが、以前のコラムにも登場した
秩父のカエデの仕掛け人、島崎武重郎さんです。
島崎さんの幅広く深い知識と、経験から語られる内容、
そして巧みな話術に、参加者たちは大変興味深そうに聞き入っていました。
何を隠そう、私自身が島崎さんのトークで
すっかりこの活動にのめりこんでしまったのです(笑)。
今回、ツアーで訪れたカエデの森は、
ほとんどの樹液を採取している大滝の槌打というエリアにあります。
森にはカエデだけではなく、栗や朴の木など
たくさんの広葉樹がある植生豊かな天然林です。
エコツアーの日にちによって、雪が残っていたり、
寒すぎて樹液が滴り落ちるのを見られなかったりしましたが、
皆さん樹液の出るメカニズムや採り方について、熱心に話を聞いていました。
そして、木ごとに味が違うという話を聞いて、
何種類かの木の樹液の味を確認している方も!
そして、森の中で冷えた体を温めるべく、お楽しみのティータイム!
まずは採れたての樹液を味わいます。
そして、島崎さんが最初に感動したという、
カエデの樹液だけで淹れた紅茶が提供されます。
自然の甘さと温かさが染み入ります。
暖をとるために用意した焚き火で焼く焼きマシュマロは、
子どもだけでなく大人にも大人気でした。
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そして、今年のエコツアーの目玉のひとつ!
それは、大人限定のバータイム。
秩父の地ウィスキー〈イチローズモルト〉を贅沢に使った、樹液ホットウィスキー!
普通のホットウィスキーはお湯で割りますが、これは温めた樹液で割ります!
狙ったとおりで、参加者たちに大好評でした!
海外で賞をとるほど評価が高く、なかなか手に入らない〈イチローズモルト〉は
そのまま飲んでもとてもおいしいのですが、贅沢に樹液で割ることで、
口当たりがまろやかになり、さらにウィスキーの風味が際立ちます。
私はもちろん飲めませんので、皆さんに樹液ホットウィスキーを
おつくりしていただけですが、その香りだけで幸せになれました(笑)。
樹液もウィスキーをつくる樽も、もとをたどれば木から生まれたものですので、
その相性が抜群なのも頷けます。
ティータイムでひと息ついたあとは、市内中心部まで戻って
お待ちかねの和メープルランチ!
採れたてのカエデの樹液を使った特別なランチコースを提供してくれるのは、
自然と環境に配慮した運営を行っている、
〈ナチュラルファームシティ農園ホテル〉です。
農園ホテルは、ここ数年和メープルエコツアーや
〈TAP&SAP〉が企画している第3のみつの販売で、
NPOや私たちの活動にたくさんのサポートをしてくれている地元の強い味方です。
提供された料理は、普段食べ慣れているメープルシロップの甘さに比べると、
ほのかで上品な甘さですが、これは料理に合わせて、
樹液の煮詰め具合を変えて提供してくれているからです。
普通、メープルシロップは樹液を40分の1に煮詰めなければできませんが、
料理ごとに最適な糖度と粘度を選べるのも、
樹液という素材を使う大きなメリットと言えるでしょう。
そして、最後に食後のデザートとコーヒー・紅茶とともに登場したのが、
メープルシロップ! これまでのほんのりとした
自然の甘さに慣れていたところで、とっても濃く甘く感じます。
先ほどの森での風景を思い出しながら味わうメープルシロップは、
参加者たちにとっては格別だったのではないでしょうか?
自然が与えてくれる恵みは、心も体も幸せいっぱいの甘さで満たしてくれます。
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