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淡路はたらくカタチ研究島 後編

Local Action
vol.047

posted:2015.3.2  from:兵庫県淡路島  genre:暮らしと移住 / アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。

editor’s profile

Yu Ebihara

海老原 悠

えびはら・ゆう●コロカル編集部エディター。生まれも育ちも埼玉県。淡路島はこれで4度目の訪問。昨年は旅行でも行きました。甘い甘い淡路島産たまねぎのダッチオーブン・ローストに夢中。

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撮影:津留崎徹花(メイン画像以外)

淡路島はたらくカタチ研究島 前編はこちら

地域と商品の魅力をデザインする。彼らはどんなパッケージ・商品をつくったのか?

淡路島の雇用創出をサポートする、淡路はたらくカタチ研究島。
厚生労働省の委託を受け、淡路地域雇用創造推進協議会が手がけており、
さまざまなバックグラウンドを持つ島民や移住希望者に対して、
淡路島でどんな仕事をつくり、どうライフスタイルを構築するかを、
ワークショップや講義を通じて学ぶ機会をつくっている。
そして、2013年からは、島民が主体となって「仕事をうみだす」ということを目的に、
研究島の事務局員と提案者、専門家、デザイナーがタッグを組んで、
商品の企画・開発・試験販売までを行っている。
後編では2年目となる2014年に開発された商品の全貌をお伝えする。

商品を開発するうえで大切にしていることは、
デザイナーを企画段階から巻き込むということだった。
デザイナーは淡路島在住デザイナーや、近県のデザイナーなど、
研究島のスーパーバイザー・服部滋樹さんや江副直樹さんと
つながりのあるデザイナーも多く参画した。
どの商品も、商品の持つ魅力や物語をそのまま伝えられるよう、
パッケージデザインにこだわったが、
表面的なデザインではなくしっかりと商品の背景を知ってつくったことが伺える。

前回お伝えした、鶏糞や菜種かすなどを肥料にした「島の土」は、
関西を中心に活躍するデザイナーの原田祐馬さん(UMA Design Farm)が担当した。
「コンセプトをつくる打ち合わせから原田さんに入っていただき、
ネーミングや、ブランディングに関してもアドバイスをいただきながら
開発しました」と話すのは、
淡路はたらくカタチ研究島の実践支援員・大村明子さん。
できあがったのは、非常にコンパクトでシンプル、素朴なデザイン。
500g入りの家庭菜園用と、主に島内の農家向けの15kg入りのパッケージができた。
500gの方には鶏糞を発酵させた肥料で農作物に栄養を与え、
その農作物をエサに鶏が育つという、
商品提案者・北坂養鶏場の北坂 勝さんが望む
「島の循環」の説明をイラストで入れた。
さらに、洲本市で菜種油をつくる生産者も「島の土」プロジェクトに参画し、
搾りかすを利用した肥料を製造。同時開発と相成った。

日本蜜蜂のはちみつをつくっていた淡路島日本蜜蜂研究会は、
淡路島在住のデザイナー森 知宏さん(森のいえ)とタッグを組んだ。
森さんは、昨年度に同事業で開発された
「かおりのまちのかおり」という線香の販売者でもある。
春のみつと秋のみつの違いが色でわかるパッケージは、
ごくシンプルに文字情報を少なくし、採取した年と季節のシールを蓋に貼った
(写真左の濃い色が秋のはちみつ、右の淡い色が春のはちみつ)。
「日本蜜蜂は多種多様な樹々からみつを集めるという性質があるので、
毎年・毎季同じ味にならないという変化を楽しんでもらえれば」
と淡路はたらくカタチ研究島の実践支援員の藤澤晶子さん。
春のスッキリとキレのいい甘さもいいけれど、
秋のまったりと濃厚でひとさじごとに印象が違うような複雑な味わいもよい。
日本蜜蜂たちがそれぞれ集めた樹々のみつが折り重なって
味わい深いものになっていくのだと感じられる。
今後は販売先の選定や少ないながらも安定した製造といった課題に挑む。

淡路島のギフトセット「GOTZO(ゴッツォ)」は、その内容でずいぶんと悩み、
試作とフィードバックを繰り返していたが、
なのはな油、ローズマリーとタイムのドライハーブ、淡路島産海塩、
日本蜂蜜のはちみつを使ったマリネビネガーのコンパクトなセットに決定した。
神戸を中心に活動する近藤 聡さん(明後日デザイン制作所)
がデザインをした箔押しの箱も、
ギフトセットという用途にふさわしい高級感・スペシャル感が出ている。
淡路島の素材をおいしく食べるというテーマで厳選された調味料たちは、
手作業で丹念につくられたものばかり。
淡路島の質の高い食材を更にレベルアップさせてくれる名脇役の集まりだ。
塩は、淡路の海水を丹念に釜炊きした海塩。
野菜や魚などを漬けて楽しみたいはちみつビネガーは、
洲本市のフレンチレストランのシェフ成瀬孝一さんの監修のもと製造。
淡路島のハーブ園育ちのローズマリーとタイムは、塩との相性も抜群で、
肉や魚のグリルに最適。
なのはな油は、油を搾り取った残りかすを「島の土」でも使用し、
島の循環のかたちを見せた。
淡路島で活躍する料理家のどいちなつさんのレシピ集もついていて、
すぐに試したくなる優れもの。料理のレパートリーが一気に広がりそうなセットだ。

Page 2

渋谷・ヒカリエの商品発表会で得たもの

2015年1月26日〜2月1日まで東京渋谷のヒカリエで行われた、
淡路はたらくカタチ研究島の「つながりをうみだす商品発表会」。
統括実践支援員の加藤賢一さんをはじめとする研究島のスタッフは、
ひっきりなしに訪れるお客さんの対応に追われていた。
東京に住む淡路島出身者も多く訪れ、
今淡路で起こっていることや島の変化を喜ぶお客さんの姿は印象的だった。
「樹々のはちみつ」や淡路産の古代米(黒米)を使ったお神酒「縁起」の試食と試飲は、
たまたま立ち寄った人にとっても嬉しいサービスだったに違いない。
そして、淡路島の食の豊かさ、人の温かさに触れたはずだ。

「淡路はたらくカタチ研究島」プロジェクトメンバー。左から、藤澤晶子さん、大村明子さん、やまぐちくにこさん、加藤賢一さん。やまぐちさん以外の3名は淡路島への移住者という、移住の“先輩”でもある。

研究島スタッフ・手作りの展示スペース。建築科出身の女性スタッフ2名が主導となって什器の制作をしたのだとか。

試飲で振る舞われた淡路産の古代米を使った祝い酒「縁起」。伊弉諾(いざなぎ)神宮で奉献される黒酒(くろき)に由来する。パッケージデザインは香川のデザイン事務所D.N.Aが手がけた。慶事でいただきたいお酒。

淡路島に興味を持つお客さんと話をしながら、楽しい試食タイム。日本蜜蜂の超濃厚なはちみつに驚いたよう。

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訪れた人々の目を特に引いていたのが、エッセンシャルオイルの「Suu(すう)」。
化学肥料や農薬を使わず、混じりけのない島の素材を使って
ていねいに抽出した、香り高いエッセンシャルオイルだ。
その中でも淡路島原産の、希少価値の高い柑橘「鳴門蜜柑」を使った
エッセンシャルオイルは、その珍しさから、来場者の関心を集めていた。
生産者の高齢化で、鳴門蜜柑は数多く生産できない。
さらに、200kgのみかんからわずか30mlしかオイルを抽出できないのだという。
そんな貴重なオイルは、甘酸っぱく、フレッシュな香りで、
他の柑橘系オイルとはまた違った雰囲気を持つ。
そして、エッセンシャルオイル特有のツンとした香りはないのも特長だ。

たまたま会場で出会ったのが、
専門アドバイザーとしてSuuの商品開発に携わったアロマセラピストの松尾祥子さん。
鳴門蜜柑のエッセンシャルオイルの香りを嗅いでにっこり。
「すごく優しい香りですね」とそのできあがりに満足のよう。
「アロマってまだまだ敷居が高いように思えるんですけど、
このエッセンシャルオイルはほんの少しで香りがたつから、
お風呂の湯にたらしたり、コップにお湯を張ってそこにたらして楽しむ
という方法でも、十分お部屋に香りが広がりますよ」と、
アロマディフューザーなどの専用機器を持っていなくても
楽しめる方法を教えてくれた。
「国産のエッセンシャルオイルはまだまだ珍しい。
でもこんなに質の高いオイルが島内だけでつくれるなんてすごいことだと思うんです」
と松尾さん。その他、ラベンダーや、カモミール、ジャパニーズミントなど8種類揃えた。
小さい瓶ながらも存在感があり、淡路島の新名物として期待される。

パッケージを手がけたのは、大阪在住のデザイナー増永明子さん。

「発表会に来たお客さんの意見はさまざまでしたよ」と加藤さん。
「特に商品に関しては改良点も含めて意見をいただけたのはよかったですね」
と客観的に感想を述べる。
そのお客さんの意見を反映するように、ギフトセットの「淡路島GOTZO」は
その場で買い求める人も多く、商談に訪れた人の心をつかんでいた。
一緒に開発をして、商品を知り尽くしている研究島のスタッフは、
実際に手に取って試してもらい、ダイレクトに意見をもらえるこの機会に
手応えを感じていたようだ。
今回の「つながりをうみだす商品発表会」では、
各地の企業が販売に関心を持っていたり、意欲的であるということがわかり、
研究島のメンバーは安堵の表情。
それもそのはず。この場に来られなかった提案者や開発パートナーの分まで
期待を背負ってやってきたのだから。
今後これらの商品は、開発過程を公開し、ノウハウは地域に還元され、
発売・製造・販売する事業者を公募することによって、
3月以降に順次発売される予定だ。

ここからが本当のスタート。商品として自立し、
多くの事業者がこれらの商品を手がけるようになり、
より多くの雇用を生み出せるようになるまで、
「淡路はたらくカタチ研究島」はサポートを続けていく。
彼らの活動に今後も注目していきたい。

開発のドキュメンタリー写真も上映。淡路島の農作業でおなじみの日除け帽をリデザインした「こかげ帽」の制作風景。

information


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淡路はたらくカタチ研究島(淡路地域雇用創造推進協議会)

住所:兵庫県洲本市塩屋2-4-5 (兵庫県洲本総合庁舎3階)

TEL:0799-26-2580

淡路はたらくカタチ研究島では、開発した商品を発売・製造・販売する事業者を募集しています。開発商品は3月以降に順次発売される予定。発売情報はウェブサイトでご確認ください。商品のお問い合わせは、淡路はたらくカタチ研究島事務局まで。
awaji@hatarakukatachi.jp

http://hatarakukatachi.jp

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