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体にいいラーメン!?
〈BASE FOOD(ベースフード)〉
が仕掛ける主食のイノベーションとは?

KAI 先端研究所
vol.009

posted:2019.4.5  from:東京都目黒区  genre:食・グルメ

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  創業110周年を迎えた貝印。歴史ある企業こそ革新を怠らぬことが肝心。
7シーズン目となるKAI×colocalは、未来的な思考、仕組み、技術(ソリューション)を持つ
新進スタートアップ事業者を訪ねます。

writer progfile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影:石阪大輔(Hatos Inc.)

栄養をとるのが一番難しい

「アメリカ人がピザばかり食べて健康になったら?」
そんな無邪気な発想で主食にイノベーションを起こそうとしているのが〈ベースフード〉だ。

〈ベースフード株式会社〉代表の橋本舜さんは、
前職では自動運転バスやタクシーの事業に携わっていた。
高齢者や運転ができない人たちが、外出する機会を創出できる事業だ。
そのなかで、特に地方における少子高齢化から来る健康寿命の問題に直面した。
健康寿命を延ばすための基本的なファクターは、栄養と睡眠、適度な運動である。
橋本さんが自分のライフスタイルを顧みたときに、
「栄養をとる」ということが一番ハードルが高いと感じた。

ベースフード株式会社代表取締役の橋本舜さん。

ベースフード株式会社代表取締役の橋本舜さん。

「食事に関しては、なんとなく不安がありました。
ひとり暮らしなので、ファストフード、カレー、ラーメン、どんぶり……。
みんなで食事するときは、お酒を飲みながら派手に食べる。
ひとり飯か、パーティみたいな(笑)」

実際に同じような食生活を送っている人も多いことだろう。
そこでどのような手段があれば、みんなが栄養をとりやすいか考えた。

「栄養を正しくとったほうがいいことは誰もがわかっているのに、
ほとんど実行されていません。
ということは、徐々に変わっていくことはないのだろうと思いました。
それならば、一番直接的なソリューションにアプローチしようと、主食に注目したんです」

毎日食べるパンや麺の栄養バランスが良ければなによりだ。
こうして橋本さんはまずはパスタ麺をつくろうと、
まるで“麺職人”のごとく自宅で試作を始める。
前職での最後の仕事が、伊勢志摩サミットのメディアセンターで
自動運転のデモンストレーションを行うことだったというから、
そのギャップは周囲に驚きを与えただろう。

「実は、誰もつくり方を知らないんです」と橋本さん。麺づくりは今や当たり前過ぎて、
「“水と小麦粉、入れても卵”という制約のなかで、どれだけ技術を磨くか」という世界。
だから“栄養素の入れ方”は誰も知らなかった。

試作は100種類以上に及んだ。
近所のスーパーなどで海苔、きなこ、ドライフルーツやナッツなどの
乾燥食品を購入してきて、1食で食べるべき栄養素が揃う組み合わせをたくさんつくった。

さまざまな食材を粉末にしたもの。

さまざまな食材を粉末にしたもの。

「最初は、動画サイトで勉強したパスタのつくり方に従って、
家庭用製麺機で試作していました。でも当然、うまくいきません。
茹でたら溶けてしまったり。
では“なぜパスタは溶けないんだっけ?”という基本に戻って始めました」

試作をつくって、専門家に話を聞きに行く。アドバイスを得たら、また試作にトライ。
それを何度も繰り返すことで、人脈も増えていった。
当然、最初は誰もが「できるわけない」という冷たい反応だったが、
次第に反応が変わっていく。

「30回目くらいの試作だとかたちはできているのですが、
おいしくなかったり、見た目が悪かったり。
そうすると、一応もの自体ができているので“できない”という人はいなくなるんですね。
次は、どうおいしくできるかという議論に変わっていくんです。
食品業界ではなかったからこそ業界の常識を知らず、
基本や原点に立ち返ることができたのが役に立ったと思います」

こうして試行錯誤を繰り返し、〈ベースパスタ〉が完成した。
1食に約30種の栄養素が含まれ、厚生労働省が定める「食事摂取基準」が定める
1日に必要な栄養素の3分の1をとることができる麺である。

麺はスパゲッティとフェットチーネの2種類。

麺はスパゲッティとフェットチーネの2種類。

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ないのなら挑戦してみたい

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ビジネスを立ち上げる経験が役に立った

前述のとおり、橋本さんは、食品業界にいたわけではなく、
まったくの異業種から参入した。そこに不安はなかったのだろうか。

「当時は、それほど不安は感じなかったですね。
やりたいことをやるのがベストだと思っていたので、
不安や心配より“なんでこれがないんだろう”とか、
“ないのならば挑戦してみたい”という気持ちのほうが大きかったです。
1年やってみてダメだったら、いい経験だったと思えばいいかなと」

そうはいうが、前職で新しい事業を立ち上げることに慣れていたことは大きいだろう。
ビジネスをしていて、立ち上げ経験がある人とない人とでは、見据えているものが違う。

「立ち上げのイメージを何パターンか持っていたことが、大きかったかもしれません。
ものづくりは、車も、スマホも、麺も、基本的にすべて同じ。
目的や課題があるなかで、ブレずに解決策を探していくことです。
そもそも考えた通りにいかないのは当たり前。
そのときは自分の情報が足りなかったということだから、その情報を取り入れるために、
本を読んだり、人に会いに行ったり。
そのような“前へ進む走り方”みたいなのは、なんとなくわかっていたと思います」

一部コンビニで発売されている即席カップパスタ〈BASE PASTA quick〉。
(※2019年4月22日までの販売)

一部コンビニで発売されている即席カップパスタ〈BASE PASTA quick〉。
(※2019年4月22日までの販売)

主食が変われば、日本が豊かになる!

2017年にサービスを開始して約2年。パスタ麺から商品を展開し、
最近では〈ベースブレッド〉というパンの発売も開始した。

同じくらいの栄養価で値段も同じ。
「原材料はパスタと似ているのですが、焼くと香ばしさがでるので、パンのほうが合っているように感じます」
と橋本さんも納得の一品だ。

パンの展開を始めたもうひとつの大きな目的は、利用シーンを増やすことだという。
パンだと朝食として取り入れやすいからだ。

「月に20食ぐらい、栄養バランスの良い食事をしてほしい。
それは子どもの給食と同じくらいの頻度なんです。給食は子どもの栄養のベースになっています。
それの社会人バージョンを目指したい。
月20食、ベースフードが食べられたら、あとは好きなものを食べてもいいのではないかと」

冷凍で届くパンをリベイク(焼き直す)して食べる。(写真提供:BASE FOOD)

冷凍で届くパンをリベイク(焼き直す)して食べる。(写真提供:BASE FOOD)

このように、一般家庭のライフスタイルのなかに、
栄養バランスのよい食事習慣を浸透させたいというのが
ベースフードの目標だ。

「日本を豊かにするには、普通の人に食べてもらわないと駄目だと思う」と言う橋本さん。
「パン、パスタ、ラーメンや焼きそば。そういうものを健康にすることによって、
健康に興味が強い層だけではなく、健康無関心層にこそ届けたい。
ただし、そこにもグラデーションがあります。
健康を気にして行動している人もいれば、行動していない人もいる。
本来、健康無関心という人はいるわけがありません。
風邪をひいてもいいと思っていたり、病気になりたいと思ってる人なんていませんよね。
世の中は行動をとっている人が健康関心層に見えるだけであって、
行動していない人も含めて、みんな健康に関心があるはずなんです」

ベースフードが発売している「今井シェフ特製ポモドーロ」ソースを使用したパスタ。

ベースフードが発売している〈今井シェフ特製ポモドーロ〉ソースを使用したパスタ。

健康のことだけを考えたら、栄養素さえとっていればいい。
しかしそれは「食事」ではない。

「“明日から食事しなくていいので、栄養ドリンクとサプリのみにしてください”と言っても
ほとんどの人は駄目でしょう。欲求をなくすというのはポジティブではありません」

だから栄養のことを考えずに、ラーメンが食べたいのだ。
〈ベースパスタ〉をラーメンの麺に使用することを推奨するようになってから、
ユーザーの広がりが変わってきたという。
“体に悪くないラーメン”という言葉の強さたるや。
そこがベースフードの目指す世界である。

“スケール”することで健康を当たり前に

ベースフードが目指す取り組みを広めるためには、
外食産業に取り組んでも良かったかもしれない。
それを考えていないわけではないが、しかし現在はその段階ではないという。

「オーダーメイドな建築を建てるより、かっこいい既製品の柱をデザインしたい。
主食をデザインするというのは、そういうことだと思っています。
レストランをやるよりも、私たちがやりたいのは“健康を当たり前にする”ことなので、
スケールすることを念頭においています。
ファストフードが健康的だったらいいなと思いますよ。
しかし実際にそれが行われないのは、店舗運営よりも、
そういう主食がないことがボトルネックになっているのだと思います」

明るい一軒家オフィスで働くスタッフ。ランチはもちろんベースパスタ。

明るい一軒家オフィスで働くスタッフ。ランチはもちろんベースパスタ。

健康習慣が大切だと考えているので、一部店舗を除き、
毎月お届けするサブスクリプションモデルを中心としている。
そのなかで、ベースパスタの調理法など、双方向の情報交換が行われているという。
そして会社のスタッフは、毎日、ベースパスタでつくったランチを食べている。

「ユーザーさんが飽きないように、いろいろな食べ方を自分たちでも実験しています」

このまま展開していけば、より手軽に手に入る商品になっていくだろう。
まだまだ広がる可能性。
ベースフードは、まだ世の中にないものをつくり、届けている。

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BASE FOOD 
ベースフード

住所:東京都目黒区中目黒5-25-2

https://basefood.co.jp/

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貝印株式会社

1908年、刀鍛冶の町・岐阜県関市で生まれた貝印は、刃物を中心に、調理器具、化粧小物、生活用品、医療器具まで、生活のさまざまなシーンに密着した多彩なアイテムを製造・販売。現在は、日本だけでなく、欧米やアジア諸国など世界中に製造・販売拠点を持つグローバル企業に発展しています。
http://www.kai-group.com/

貝印が発行する小冊子『FACT MAGAZINE』

http://www.kai-group.com/factmagazine/ja/issue/3/

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