楽器デザイナー中西宣人
誰でもすぐにミュージシャン!
直感的な電子楽器は
どうやって生まれた?

手のひらサイズのかわいい電子楽器を開発

中西宣人さんが現在制作をしているオフィスは、小さいラボのようだ。
たくさんの配線やスイッチ類とともに置いてあるのは、
デジタル機器のような形をしているが、れっきとした楽器。
中西さんは、こうした電子楽器を製作している。

かつてはバンドでベーシストとして活動し、楽器デザイナーを目指したこともある
〈貝印〉商品本部デザイン室チーフマネージャーの大塚淳さんは、
「音楽とデザインは常に隣り合わせだと思っていて、
それを実践されている希有な人だと思います」と感心する。
そこで楽器とサウンドのデザインについて、中西さんに話をうかがった。

楽器デザイナーの中西宣人さん(左)と〈貝印〉商品本部デザイン室チーフマネージャーの大塚淳さん(右)。

中西さんが初めてつくった電子楽器は、2011年製作の〈B.O.M.B.〉(Beat Of Magic Box)。
手のひらに収まるサイズ感で、片手で音の大きさと高さと音色の3つをコントロールできる。
8つの圧力センサーを、やさしく握れば低い音が、強く握れば高い音がでる。
本体をシェイクすると楽器モードが変わるなど、
使用における最適化を目指したら、丸みを帯びた形状になった。

SF映画に出てきそうな〈B.O.M.B.〉。

翌年、2012年に開発したのは〈POWDER BOX〉。
かまぼこのような半円形で、黄色、赤、オレンジなどカラーバリエーションが揃っており、
色によって音色が異なる。
圧力センサーや接触位置センサーなど、
操作部分のインターフェイスを自由に差し替えることができ、
簡単に奏法をアレンジできる。
デバイス自体を傾けることで、音量を調整することが可能だ。

並べるとギターエフェクターのような〈POWDER BOX〉。

〈B.O.M.B.〉も〈POWDER BOX〉も、小さくて、かわいいデザインが特徴。

「電子楽器って、かちっとしてツマミがたくさんついている、
難しそうなものが多いですよね。
プロだけではなく、誰でも気軽に親しんでもらえるようなものを目指して
デザインしました」

玩具のような、つい触りたくなるデザイン。使い方を知らなくても、触れば音は出る。
すぐに曲らしきものができあがる。
生楽器には音を出すことすら難しいものも多いし、
コードや曲を演奏するとなると、ひとつ上のテクニックが要求される。
しかし中西さんのつくる電子楽器は、より直感的だ。

8つある圧力センサーを押すと音が出る。

「既存の楽器を真似てしまうと、ただの焼き直しになってしまうので、
その形式にとらわれすぎないよう気をつけています」

一方で、ここが課題でもある。“楽器”っぽく見えないと、楽器として認識されない。
しかし“楽器”っぽいままのデザインだと、イノベーションは起こらない。
現状、電子楽器とはこれだ、というアイコンやイメージは、まだない。
ユーザーがそれを思い浮かべられるようになるまで普及させるのには、
まだまだ時間がかかりそうだ。

「電子楽器の分野では、音の発生については、シンセサイザーなどすごく研究され、
独自性があります。
しかし、まだ演奏のためのインターフェイスとしての独自性を獲得しているとは
言えないと思います。だからこそ国内外でさまざまな電子楽器が日々開発されています」

〈POWDER BOX〉に差し込むインターフェイスのひとつ。

貝印・大塚さんも、自身の仕事に関連づけて、
これからのテクノロジー活用の可能性を話す。

「たとえばエレクトリックバイオリンは、
バイオリンのイメージを崩さずにデザインされていますよね。
電子楽器という記号性はまだない。
当社が扱う商品も、これから機能として劇的に変わることはないかもしれません。
しかしテクノロジー領域のエッセンスを用いて、
新しいライフスタイルを実現できるのならば挑戦していきたいと思っているんです」

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