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STUDY 木質ペレット

100%Village
vol.013

posted:2012.10.2   from:全国  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  全国に52カ所ある、自然エネルギー自給率100%の地域 = 100%Village。
TOPICでは、全国各地の100%Villageやそれを目指そうとするモデルケースをひもとき、
STUDYでは、自然エネルギーにまつわる用語を解説していきます。

editor’s profile

Hironao Matsubara

松原弘直

まつばら・ひろなお●特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所 理事、主席研究員。工学博士。エナジーグリーン(株)、おひさま進歩エネルギー(株)技術アドバイザー。桜美林大学非常勤講師。環境プランナーER。東京工業大学においてエネルギー変換工学を研究、製鉄会社研究員、ITコンサルタントなどを経て、持続可能なエネルギー社会の実現に向けて取組む研究者として現在に至る。持続可能なエネルギー政策の指標化(エネルギー永続地帯)や長期シナリオ(2050年自然エネルギービジョン)の研究などに取り組みながら、日本初の自然エネルギー白書の編纂をおこなう。自然エネルギー普及のため、グリーン電力証書の普及やグリーン熱証書の事業化、市民出資による地域エネルギー事業の支援などに取り組む。

環境エネルギー政策研究所
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個人ブログ「サステイナブルなもの」
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国内ペレット生産規模の増加の背景。

木質バイオマスの熱利用としては、
製紙工場や製材工場等に併設される大型のバイオマスボイラーや
施設に設置される木質チップやペレットによるボイラー、
そして家庭などに設置される薪や木質ペレットによるストーブの熱利用など、
さまざまな種類があります。
この中で化石燃料を代替する固形のバイオ燃料として注目されている木質ペレットは、
日本国内でも1980年代に石油ショックの影響で一時生産が増加した時期がありましたが、
1990年代に入ると石油価格が下がり木質ペレットの生産量も大きく減少しました。
その後2000年代になって、環境問題や地域資源の見直しなどで
再びペレット生産が増加してきており、
2008年度には年間生産量が6万トンにまで増加しています。
ただし、欧州のペレット工場と比べて1か所あたりの規模が小さく、
全国のペレット工場の平均的な規模は年間生産量が1000トン程度となっています。
木質ペレットの生産を効率化し、普及につながる価格に下げるには、
木質ペレットの原料の調達方法や生産方法などに多くの課題があります。
例えば、原料の調達面では、間伐材の破砕や乾燥から行う必要があり、
製材工場などにペレット製造工場を併設することによる改善が期待されます。
一方、欧州では2000年代の初頭から木質ペレットの本格的な生産が始まり、
オーストリアでは年間50万トン以上生産され、国内での利用のみならず輸出も行われています。
また、スウェーデンでは年間200万トン以上の需要があり、
国内で大規模工場での生産が行われると共に、国外から輸入しています。
いずれの国でも大型の施設でのペレットボイラーの利用だけではなく、
地域での熱供給や家庭でのペレットボイラーの設置まで行われており、
木質ペレットの生産・流通・供給体制がしっかりと構築されています。
この際、木質ペレット運搬には、バルク供給方式が採用され、
タンクローリーのような輸送車が使われています。
また林業の盛んな地域では木材産業まで一貫した木質バイオマス利用が進んでおり、
木材生産時の端材やおがくずなどが地域内で流通し、
各ペレット工業が比較的容易に使いやすい原料の調達が可能となっています。
一方、近年の原油価格高騰により木質ペレット価格が灯油と競争できる価格になってきたことが、
国内ペレット生産規模の拡大の背景となっていると考えられます。
木質ペレットは暖房用ストーブと温水用ボイラーに利用されています。
ストーブは家庭向けが中心ですが、
ボイラーは温泉・プール・農園芸施設・公共施設・官庁などでの利用が普及し始めています。
国内全体としてのバイオマス熱利用の統計データはまだまとまったものがなく、
自然エネルギーの統計データとして今後の課題となっています。

木質ペレットの外見(スウェーデンにて筆者撮影)

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