連載
posted:2012.8.2 from:岐阜県郡上市明宝 genre:活性化と創生
〈 この連載・企画は… 〉
全国に52カ所ある、自然エネルギー自給率100%の地域 = 100%Village。
TOPICでは、全国各地の100%Villageやそれを目指そうとするモデルケースをひもとき、
STUDYでは、自然エネルギーにまつわる用語を解説していきます。
writer's profile
Hidefumi Kurasaka
倉阪秀史
くらさか・ひでふみ●千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。 専門は環境政策論・環境経済論。著書に、『環境を守るほど経済は発展する』(朝日選書)、『エコロジカルな経済学』(ちくま新書)、『環境-持続可能な経済』
岐阜県では、環境省の委託費を得て、新エネルギーパークの運営事業を進めています。
全国と同じように、岐阜県でも民生用と運輸用部分のエネルギー需要が伸びています。
民生用のエネルギー需要の伸びに対処するため、
岐阜県では、太陽電池、燃料電池、蓄電池からなる
次世代エネルギーインフラを各家庭に導入していくことを計画しています。
岐阜県次世代エネルギー・産業技術推進室の千原さんは、
この三つを「電池三兄弟」を呼んでいました。
千原さんによると、次世代エネルギーインフラは
2030年に岐阜県の半数の30700世帯に入れる計画を立てているということです。
今回紹介する郡上市明宝の古民家サイトでは、
築110年の古民家に、太陽電池、燃料電池、蓄電池の「電池三兄弟」に
まきストーブと小水力発電を組み合わせて導入しています。
郡上市は、2005年の国勢調査の46000人から、2010年には3000人減少しました。
旧明宝村は2000人の人口です。
このまま何もしないと集落の存亡の危機を迎えるのではないかという危機感があり、
古民家の所有者で郡上市の職員でもある置田さんが中心となって、
2009年度から空き屋になっていた古民家を使って「栃尾里人塾」が始められました。
週末に受講生に参加してもらうかたちで、
受講料3800円(食費、宿泊費別、宿泊は雑魚寝なら古民家でただ)
農、森、自然エネルギーの三つのテーマですすめています。
このような活動があったところに、環境省の委託費7000万円が出て、
2011年3月に明宝サイトが完成しました。
今後、10年間の成果測定を県が実施する予定です。
太陽電池は、古民家の屋根ではなく、古民家前の空き地に置かれていました。
古民家の上に載せるには重すぎたということです。
この地区は雪が降るので、雪が落ちるように傾斜角度をつけて置かれていました。
ここに導入されている燃料電池は、ENEOSの試作機で900万円したということです。
エネルギー効率が70%から80%です。
今は、250万円でまだ価格の引き下げが図られていますが、
問題は、システム内部が900度まで上がるため、
常に動かしていることが求められることだということでした。
明宝サイトは需要がすくないため、結果的に過大な設備投資になってしまっていました。
LPガスの消費量が約10倍になってしまい、
この分が地域の負担になっているということでした。
明宝サイトに設置されたリチウムイオン電池10kWも試作機で、
300万円から400万円かかっています。
寿命は鉛蓄電池よりも長くて、約10年ということです。
蓄電池の容量で電力自給率が決まり、今は7割から9割ということでした。
小水力は、公称出力が0.5kWですが、通常の出力は50Wくらいということです。
これに500万円かかっています。
実際に見学すると騒音がかなりありました。
敷地内に入り込んでいる水なので、水利権の問題はなかったということです。
これらを制御するシステムは特注品で2000万円かかっています。
今は、ハウスメーカーがパッケージで650万円で販売しているということです。
千原さんは、栃尾地区は災害時に橋が落ちると孤立する集落なので、
コストはかかるが、避難所へのエネルギー供給としては有効ではないかとおっしゃっていました。
このような集落は、岐阜県の中でも500か所(2010年調べ)強存在するということです。
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