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TOPIC 「御神火温泉」の温泉熱ヒートポンプ

100%Village
vol.008

posted:2012.5.25   from:東京都大島町  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  全国に52カ所ある、自然エネルギー自給率100%の地域 = 100%Village。
TOPICでは、全国各地の100%Villageやそれを目指そうとするモデルケースをひもとき、
STUDYでは、自然エネルギーにまつわる用語を解説していきます。

writer's profile

Hidefumi Kurasaka

倉阪秀史

くらさか・ひでふみ●千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。 専門は環境政策論・環境経済論。著書に、『環境を守るほど経済は発展する』(朝日選書)、『エコロジカルな経済学』(ちくま新書)、『環境-持続可能な経済』

credit

参考資料 2012年3月の現地ヒアリング
撮影 著者

まちの財政的な効果も促す、火山島・大島の新しい試みとは。

東京都の伊豆大島では、温泉熱を利用したヒートポンプが動いています。
大島町の地域エネルギー自給率
(域内の再生可能エネルギー供給量/民生・農林水産業用エネルギー需要量)は
3.97%(2009年度)と高くありませんが、
適用範囲が広い試みですので紹介したいと思います。
三原山を抱く大島は火山島のイメージがありますが、
意外なことに温泉には恵まれていませんでした。
しかし、1986 年の三原山大噴火の影響で、元町地区の井戸の温度が上昇して、
念願の温泉利用ができるようになったのです。
現在は、「元町浜の湯」と「御神火温泉」の2か所が営業しています。
温泉熱ヒートポンプが導入されたのは、
観光協会が運営する温泉施設「御神火温泉」です。
「御神火温泉」では、一時40℃を超えていた源泉温度は、徐々に落ち着き、
現在は33.5℃から34.0℃で推移しています。湧出量は毎分220リットルです。
「御神火温泉」では、従来は灯油を用いて
湯温を入浴に適する43℃程度まで上げていましたが、
2009年から2年間にわたって大島町が東京都の補助金を受け、
2011年4月1日から6台のヒートポンプを導入しました。
補助金総額は1億2600万円で、補助率は10分の10です。
なお、内訳にはヒートポンプ装置代以外の事業費も若干含まれています。
このヒートポンプは、入浴後のお湯から熱を回収するもので、
回収された熱は、入浴用の温泉の温度を上げることと、
炊事などに使用するため水道水の温度を上げることに使われています。
加熱能力は229.8kW、給湯能力は268.2kWとなっています。
導入後、一切灯油は使っていません。
ヒートポンプの指定管理者である観光協会の岡村さんのお話では、
ほぼ1年間運用して、
削減された灯油購入費とヒートポンプを回すために増加した電気代を総合すると、
およそ3分の1の経費削減となったということです。
光熱水料ベースでは、22%の削減になっています。
これにより、年間で約200トン(東京都80世帯分)の
二酸化炭素排出削減につながるということです。
今後、灯油価格が上昇することを考えると、
その財政的な効果はさらに大きくなると考えられます。
岡村さんによると、新しい試みなので、
これまでさまざまな試行錯誤を繰り返して運用を継続しているということでした。
たとえば、バルブの目詰まりが起こって交換することになったり、
冬になるとどうしても能力が不足するので、設定を調整したりしています。
また、灯油の場合は短時間で湯温を上げることができますが、
ヒートポンプの場合は徐々に湯温を高めざるを得ないので、
その対応も必要だったということでした。
「最初からヒートポンプで設計しておけばよいのだけれど」
と、「御神火温泉」の支配人はおっしゃっていました。
源泉温度が34℃と低くても温泉熱ヒートポンプを用いることができます。
全国にはもっと高い源泉温度の温泉がたくさんあります。
これまで無駄に捨てていた熱を、
化石燃料を燃やす代わりに有効に活用することを考える時代になっています。

御神火温泉

温泉熱ヒートポンプ装置

試行錯誤を重ねつつ運用を続けている様子

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