連載
posted:2012.5.9 from:北海道苫前町 genre:活性化と創生
〈 この連載・企画は… 〉
全国に52カ所ある、自然エネルギー自給率100%の地域 = 100%Village。
TOPICでは、全国各地の100%Villageやそれを目指そうとするモデルケースをひもとき、
STUDYでは、自然エネルギーにまつわる用語を解説していきます。
writer's profile
Hidefumi Kurasaka
倉阪秀史
くらさか・ひでふみ●千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。 専門は環境政策論・環境経済論。著書に、『環境を守るほど経済は発展する』(朝日選書)、『エコロジカルな経済学』(ちくま新書)、『環境-持続可能な経済』
credit
参考資料:
北海道苫前町『風来望 夕陽ヶ丘ウィンドファーム』
ユーラスエナジー苫前『苫前グリーンヒルウィンドパーク』
苫前町『苫前フィールドガイド』
苫前町ホームページ
撮影:著者
北海道の北部日本海側に位置する苫前町は、風力発電の先進地として知られています。
苫前町は、人口約3600人、世帯数約1500戸で、
千葉大学と環境エネルギー政策研究所による「永続地帯」研究では、
地域的エネルギー自給率が439%で全国第10位となっています。
つまり、苫前町では、町内で消費する民生用と農林水産業用エネルギー量の
約4.4倍のエネルギーを再生可能エネルギーで生産していることになります。
苫前町のエネルギー生産のほとんどがウィンドファームによるものです。
苫前町では、1973年から凧揚げ大会を開催するなど、
厄介者の風を利用して地域活性化しようとする動きがありました。
1995年に山形県立川町の取り組みに刺激を受けた町長が
風力発電事業の立ち上げを発案して、95年から風況調査が行われ、
98年から2000年にかけて3基の風車が夕陽ヶ丘地区に建設されました。
これが町営の夕陽ヶ丘ウィンドファーム(出力2200kW)です。
総事業費(実施設計から風車建設まで)は約7億円でした。
また、苫前町共同利用模範牧場の敷地内に、
99年に1000kWの風車20基からなる苫前グリーンヒルウィンドパーク
(事業主体ユーラスエナジー苫前、総事業費約45億円、総出力20000kW)が、
2000年に1650kWの風車14基と1500kWの風車5基からなる苫前ウィンドビラ発電所
(事業主体ドリームアップ苫前、総事業費約65億円、総出力30600kW)が、
それぞれ運転を開始しました。
町営の夕陽ヶ丘ウィンドファームの稼働率は
2009年21.95%、2010年21.07%、2011年20.72%となっています。
電力は北海道電力に販売しており、
売電収入は2009年5292万円、2010年5096万円、2011年4839万円となっています。
年間を通じての稼働率は、風の強い冬期に30%を超える一方、
6月から8月には10%を大きく下回る月もあるという推移を示しています。
大規模なウィンドファームの先駆けとして苫前町の取り組みは全国各地の参考とされています。
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