連載
posted:2012.2.14 from:岩手県岩手郡葛巻町 genre:活性化と創生
〈 この連載・企画は… 〉
全国に52カ所ある、自然エネルギー自給率100%の地域 = 100%Village。
TOPICでは、全国各地の100%Villageやそれを目指そうとするモデルケースをひもとき、
STUDYでは、自然エネルギーにまつわる用語を解説していきます。
writer's profile
Takeshi Magami
馬上丈司
まがみ・たけし●千葉大学法経学部非常勤講師。千葉大学人文社会科学研究科公共研究専攻博士後期課程修了 博士(公共学)。専門はエネルギー政策論・公共政策論・環境マネジメントシステム論。
岩手県葛巻町は、風力発電のみで町内の総電力需要の2倍以上に達する
再生可能エネルギー生産がありますが、酪農と林業が盛んであることを活かして、
バイオマス資源の利用にも積極的に取り組んでいるのです。
このことが、「再生可能エネルギーのまち」として注目される
一番の理由となっています。
酪農からは乳牛の糞尿などの畜産廃棄物が出され、
林業からは集成材工場・パルプ工場などから端材など木質系の廃棄物が出されます。
まちではこれらを利用したさまざまな再生可能エネルギー利用を取り入れています。
例えば、第三セクターである葛巻町畜産開発公社が運営するくずまき高原牧場内には、
畜産バイオガスシステムがあり、
牧場内で産出される畜産廃棄物と町内の生ごみから発生するバイオガスを利用して、
発電と熱供給を行うとともに、残余物も堆肥として活用しています。
また、林業から発生する木質系の廃棄物を使って木質ペレットを生産し、
町内4施設で稼働しているペレットボイラーの燃料の全量を町内でまかなっており、
さらに、一般家庭への薪ストーブやペレットストーブの普及も進んでいるのです。
その他、公共施設における太陽光発電設備や太陽光・風力ハイブリッド型の街灯など、
さまざまな再生可能エネルギー利用設備が各所に導入されています。
葛巻町の再生可能エネルギー利用のうち、特にバイオマス資源の利用は、
農林業や酪農業といった地場産業とリンクすることによって
エネルギーを確保しようという試みがあります。
これによって、既存の産業の活性化や、
雇用の増加といった経済的波及効果が期待され、
ひいてはまちの税収の増加にもつながる可能性があるのです。
地域産業と連携したかたちで再生可能エネルギーを普及させ、
地域産業の活性化につなげていくことができるのか。
葛巻町はその試金石として注目すべき場所なのです。
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