〈 この連載・企画は… 〉
東京には人々が暮らす11の島があり、独自の風土・文化で磨かれた個性を持っている。
今回は、神津島、八丈島、三宅島、大島の魅力を フィーチャー。
島歩きに役立つ、5つに厳選したオススメスポットをご紹介。
writer profile
Haruka Shirakata
白方はるか
しらかた・はるか●埼玉県出身、ライター。その土地ならでは仕事や生活にまつわる話を聞くのが大好き。日本酒を嗜むようになって以来、ますます国内旅行と日本文化への関心が高まりました。
photographer profile
Haruka Ariyoshi
有吉 晴花
ありよし・はるか●愛知県出身、東京都在住。渋谷の IT 企業に勤めながら、写真を撮ったりデザインをしています。インタビューされている人の話を聴きながら撮影するのが特に好き。
八丈富士と三原山、ふたつの山によって生み出された豊富な水源と
太古から守られてきた植物、そして豊かな風土に育まれた文化と食。
歴史を感じさせる散策路から郷土料理、島の特産品まで。
八丈島の“風土とFOOD”を存分に味わえるスポットをまとめてお届け。
八丈島空港から車で5分、島の市街地を抜けた先にある大里地区は
島の歴史を語るうえで欠かせない見どころがある。
江戸時代より島庁があったこの地区は、1900年まで島の政治の中心地だった。
この一帯は、玉石垣の名前の通り、道を囲うように玉石が積み上げられている。
ひとつの玉石のまわりに6つの石を配置した「六方積み」という手法で、
規則正しく積み上げられた玉石垣は、かつて八丈島に辿り着いた流人が、
握り飯1個と引き換えに海岸から玉石をひとつひとつ運び積み上げたという言い伝えもある。
南国情緒溢れる玉石垣の道を歩いた先には、
アロマやハーブティーを楽しめるセラピーカフェ〈癒香〉がある。
八丈島で採れたショウガ科の植物「月桃(げっとう)」の成分を
贅沢にとじこめたアロマウォーター〈月桃水〉も、お土産に人気。
南国気分を味わいながら散策したあとは、
香りの力で癒やしのひとときを味わいたい。
information
癒香 大里店
住所:東京都八丈島八丈町大賀郷1115
TEL:04996-2-0399
営業時間:10:00〜16:00
定休日:水・木曜(冬期3月からは水曜)
玉石垣から車で5分、島の南部に位置する樫立地区にあるのは、
八丈島の郷土料理店〈いそざきえん〉。
古民家を改築した店舗は、広々とした座敷でゆったりとくつろげる。
おすすめは、1500円(税別)の〈黒潮料理〉。
八丈島近海でとれた刺身、里芋の味噌煮、海苔の酢の物、ムロアジの煮物など、
島で採れた野菜や魚をふんだんに使った料理を、贅沢に楽しめる。
コースに付いてくる麦ぞうすいは、
米がとれない時代に麦を代わりに使ったとされる伝統的な家庭料理。
麦、里芋、明日葉、海苔など八丈ならではの食材を入れて味噌味で煮込んだぞうすいは
滋味深くほっくりとした味わいで心やすらぐ。
ランチは予約なしで利用可能。ディナーは要予約。
昼の落ち着いた雰囲気から一転、
夜は大きな食卓に、バナナの葉やゴムの葉を皿がわりに南国気分の食事を楽しめる。
information
いそざきえん
住所:東京都八丈島八丈町樫立347
TEL:04996-7-0041
営業時間:11:00〜15:00(14:00L.O.)
※夜は当日15時までに要予約
定休日:不定休
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八丈島の酪農は明治初期に始まり、
かつては森永乳業の工場も設立されるほどの一大産業だった。
しかし時代とともに酪農は衰退し、2007年には八丈島農協が乳製品製造から撤退。
その後、事業を引き継いだ〈楽農アイランド〉という会社が経営不振に陥ったときに、
島の乳業を再び盛り上げようと立ち上がったのが、
〈リードホテル&リゾート〉を経営する歌川真哉さんと、
楽農アイランドに勤めていた魚谷孝之さん、小宮山建さん。
2014年からは、3人の立ち上げた会社〈八丈乳業〉の手によって、
海に面した自社牧場〈ゆーゆー牧場〉で30頭余りのジャージー牛を育てることになった。
2016年にオープンした〈八丈島ジャージーカフェ〉は、
観光客はもちろん、地元の人にも愛される憩いの場だ。
八丈乳業のジャージーミルクをふんだんに使ったソフトクリームやチーズ、
明日葉白玉あずきパフェ(600円)など、八丈島ならではのスイーツも堪能できる。
店内ではオリジナルのマグカップやトートバッグをはじめグッズも購入可能。
カウンター席はコンセント完備で、テイクアウトもOK。
ドライブの途中に立ち寄りたいスポットだ。
information
八丈島ジャージーカフェ
住所:東京都八丈町大賀郷2370-1
TEL:04996-2-5922
営業時間:10:00~17:00
定休日:無休
夕食で八丈島の食材と郷土料理をまとめて味わうなら、
三根地区にある〈梁山泊(りょうざんぱく)〉に訪れたい。
定番のメダイの刺身やムロアジのくさや、
トビウオの干物やキンメダイの煮付けなど魚料理は特に人気。
そのほかにも、明日葉の天ぷらはサクッと軽い食感で、
初めて明日葉を食べる人にもおすすめしたい。
島の東部にある三原山の麓〈大竜ファーム〉で育てられたしいたけのフライは、
肉厚ジューシーで、島焼酎との相性も抜群だ。
予約必須の島寿司は、八丈島近海でとれたメダイ、マカジキ、キハダマグロ、海苔の4種類。
ほんのり甘い醤油漬けの魚は旨みがぎゅっと締まっていて、ぺろりと食べられてしまう。
店内には、観光客のほかに出張で訪れているスーツ姿の若者たちや
地元の常連客たちが、それぞれの島の夜を楽しんでいた。
梁山泊では、誰もが八丈島の食材と地元の空気を味わい、
お腹も心も満腹になる一夜を過ごせるだろう。
information
梁山泊
住所:東京都八丈島八丈町三根1672
TEL:04996-2-0631
営業時間:17:30〜23:00(22:00L.O.)
定休日:日曜(月曜祝日の場合変更あり)
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八丈島観光のお土産を買うなら、ぜひ訪れてもらいたい場所がある。
神湊漁港から車でわずか38秒。
くさやの加工場〈ヤマサ水産 長田商店(おさだしょうてん)〉だ。
家族3代でくさやを製造販売する長田隆弘さんご一家。
隆弘さんは、島のくさや産業を盛り上げる人のひとり。
一歩お店に入れば、くさやの加工から食べ方、
島の観光まで、なんでも明快に教えてくれる。
八丈島のくさやはムロアジを使ったものが主流だ。
しかし島のムロアジ漁船は、たったの2隻。
さらにムロアジは傷みやすいため、豊洲でもなかなか流通せず八丈島でしか出回らない。
まずは貴重なムロアジのくさやを、八丈島のお土産として手に入れたい。
長田商店の一番人気は〈焼きくさや〉。
焼いたムロアジのくさやをそのまま冷凍パックにしたもので、
魚焼きグリルのない家やくさやの初心者におすすめの商品。
ちなみに、通常のくさやも、アルミホイルに包んでトースターで焼けば
香りも広がらず、初心者でもふっくらとおいしく焼けるんだそう。
空港の土産店でも購入可能だが、せっかくのお土産だからこそ
店舗に立ち寄り、長田さんのお話とともに大切に持ち帰りたい。
information
ヤマサ水産 長田商店
ふたつの異なる火山によって、個性豊かな自然と文化が育まれた八丈島。
今回紹介した5つのスポットを巡ることで“風土とFOOD”はもちろん、
いにしえより伝わる伝統と新たな試み、双方の豊かさに触れられるだろう。
information
東京宝島
東京都では、東京の島々が持つすばらしい景観や特産品、文化などの地域資源を磨き上げ、高付加価値化を図ることで、東京の島しょ地域のブランド化を目指す東京宝島事業に取り組んでいます。東京宝島の詳細は、公式ホームページにて。
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