連載
posted:2017.10.26 from:岩手県一関市 genre:旅行 / 活性化と創生
PR 一関市
〈 この連載・企画は… 〉
岩手県南の岩手県一関市と平泉町は、豊かな田園のまち。
東北有数の穀倉地帯で、ユニークな「もち食」文化も根づいてきた。
そんなまちの新しいガイドブックとなるような、コンテンツづくりが始まった。
photographer profile
Kohei Shikama
志鎌康平
山形県生まれ。写真家小林紀晴氏のアシスタントを経て、山形へ帰郷。東京と山形に拠点を設けながら、日本全国の人、土地、食、文化を撮影することをライフワークとしています。山を駆け、湖でカヌーをし、4歳の娘と遊ぶのが楽しみ。山形ビエンナーレ公式フォトグラファー。
http://www.shikamakohei.com/
writer profile
Kei Sato
佐藤 啓(射的)
ライフスタイル誌『ecocolo』などの編集長を務めた後、心身ともに疲れ果てフリーランスの編集者/ライターに。田舎で昼寝すること、スキップすることで心癒される、初老の小さなおっさんです。現在は世界スキップ連盟会長として場所を選ばずスキップ中。
https://m.facebook.com/InternatinalSkipFederation/
岩手県南部のまち、一関市。
隣接する平泉町には世界遺産として知られる中尊寺があり、
関連史跡も多いが、実はこのまちに日本刀発祥の地としての伝説が残っている。
日本刀とは、世界でもめずらしい日本独自の高い技術でつくられた強靭な刀で、
現在は文化財として高く評価されており、
最近は日本刀ブーム到来なんて声も聞こえてくるのだ。
しかも、そこには絶景を望む〈大部岩〉(だいぶいわ)というスポットがあるらしい。
なんともロマン溢れるその伝説についてうかがうべく、
〈平泉文化遺産センター〉の館長・千葉信胤さんを訪ねた。
一ノ関駅から車で約15分ほどのところにある一関市舞川地区。
東磐井郡の舞草村と相川村の2村が合併して舞川村となり、
後に一関市に編入された北上川流域の中山間地域だ。
実はこのエリア、中世には24院を数える坊が点在した吉祥山東城寺という天台宗の
大寺院があったと伝えられている。
「現在、寺院の跡はほとんど残っていません。
観音山に鎮座する〈儛草神社〉(もうくさじんじゃ)は、
延喜式内社といって平安時代からの由来を持つ古い神社です。
観音山は日本刀の源流のひとつとされる
〈舞草刀〉(もうくさとう)が生産されたところとして、
地元だけでなく全国の刀剣マニアに知られています。
〈吉祥山東城寺〉は、
世界遺産としても知られる平泉の〈中尊寺〉と同じ天台宗の山岳寺院で、
観音山一帯にある巨石が修行の場になっていたと言われています。
儛草神社の境内からさらに西へ5〜10分ほど歩いたところにある〈大部岩〉は
その代表的な場所。古文書によると16丈、つまり約48メートルの巨石です」
市内の人でもあまり足を運ぶことはないという大部岩に登ってみると、
そこには北上川を挟んで一関市街から平泉市街まで一望できる絶景が待っていた。
確かに、こんなに気持ちのよい場所で瞑想したら、
それは悟りも得られるような気がしてくる。
Page 2
大部岩から登山道を歩いて儛草神社へ移動し、参拝。
この神社は、刀剣マニアの間では聖地として知られる場所らしい。
「儛草神社の周辺には、〈舞草刀〉をつくっていた
“舞草鍛冶”と呼ばれる人たちが住んでいたという伝説があります」
と、平泉文化遺産センターの千葉さん。
千葉さんは、さらに話を続ける。
「近くにある白山岳は別名〈鉄落山〉と言われ、
地元では水晶の産地として知られている。
過去に一関市が行った発掘調査で鍛冶場の跡なども発見されましたが、
刀鍛冶だという確かな痕跡は見つからなかったそうです。
舞草刀は、日本刀の源流のひとつと言われ、
平安時代の末ごろから中世にかけてつくられていたと考えられています。
平泉奥州藤原氏の繁栄や岩手の鉄文化にも関わる魅力的な刀剣伝説ですが、
その実像はまだ解明されていないんですよ」
奥州藤原氏の時代を最盛期として、
滅亡後に衰退して室町時代には消滅してしまったが、
舞草鍛冶と呼ばれる人たちは、鎌倉など日本各地に場所を移し、
活躍したという記述も見つかっているのだそうだ。
「舞草刀については、〈一関市博物館〉でその歴史を詳しく展示しているので、
ぜひお立ち寄りください」
「中尊寺を訪れる海外からのお客さんにも、
日本刀にまつわるこの儛草神社の伝説はとても興味深いものだと思います。
大部岩も、いわゆるパワースポット以上の魅力があるし」
一BAの阿部さんとそんな話をしながら儛草神社を後にし、
さらに舞川地区の魅力を知るため舞川市民センター(一関文化伝承館)を訪れる。
「舞川地区は、伝統芸能が盛んな地域なんです。
宮城県北部から岩手県南地域で広く伝承される南部神楽のひとつ
〈蓬田神楽〉は、庭元の蓬田氏一族を中心に代々継承されてきました。
現在は、地元の若い踊り手も加わり大切に継承されています。
それから、鹿子躍も盛んですね」
と舞川市民センターの吉田真梨子さんが教えてくれた。
Page 3
鹿子躍は、死者供養の踊りとして、お盆の時期に行われるのが基本ですが、
中山間地域の舞川地区では、村人の娯楽としても発展したのだそうだ。
もともと鹿子躍は旧相川村、蓬田神楽は旧舞草村に伝えられてきたが、
合併後は地域全体として継承する土壌が整えられてきた。
現在、地元の舞川小学校でも神楽と鹿子躍の伝承活動に取り組んでおり、
全体的に伝統芸能が盛んな一関市でも特に盛んな地域として
知られるようになっている。
「それから、舞川には、新聞などでも取り上げられる、
100年以上の伝統を受け継ぐ〈金山棚田〉あります」と続ける吉田さん。
金山棚田は、開墾から100年以上たった今も、42アールという比較的狭い土地に
約100枚の棚田がひっそりと佇み、
今も手間ひまかかる伝統的耕作によって稲作が続けられている。
「秋の金色に輝く姿はもちろん、
初夏に棚田を囲むように咲く紫陽花の花がとてもきれいなんですよ。
舞川地区にはほかにもきれいな棚田が多くて、
地元の若者が中心になって立ち上げた〈舞川イノベーション会議〉のメンバーが
棚田のひとつを利用して〈舞川ほたる火まつり〉を開催したりと、
この地域の主要産業である農業、その象徴としての棚田をアピールしながら
未来に伝えていくような活動が始まっているんです」
日本刀伝説に巨岩、伝統芸能や棚田……。
舞川地区は、八百万の神々が宿る日本の原風景が今も生活の一部であり続けている。
information
儛草神社
住所:岩手県一関市舞川大平5
information
舞川市民センター(一関文化伝承館)
住所:岩手県一関市舞川中里84-1
TEL:0191-28-2111
information
一関市博物館
住所:岩手県一関市厳美町字沖野々215-1
TEL:0191-29-3180
営業時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日)
information
平泉文化遺産センター
住所:岩手県西磐井郡平泉町花立44
TEL: 0191-46-4012
営業時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
定休日:年末年始
Web:http://www.town.hiraizumi.iwate.jp/index.cfm/26,1040,128,277,html
Feature 特集記事&おすすめ記事
Tags この記事のタグ