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屈斜路湖畔の無人直売所
〈ミナソコマーケット〉
ウッドデッキに人が集まる。

弟子屈の森から
vol.012

posted:2023.7.25   from:北海道弟子屈町  genre:暮らしと移住 / 買い物・お取り寄せ

〈 この連載・企画は… 〉  北海道の道東・弟子屈(てしかが)町の「自然に住む心地よさ」に惹かれて移住した井出千種さん。
身近になった木や森を通して、「自然に惹かれる理由」を探ります。

writer profile

Chigusa Ide

井出千種

いで・ちぐさ●弟子屈町地域おこし協力隊。神奈川県出身。女性ファッション誌の編集歴、約30年。2018年に念願の北海道移住を実現。帯広市の印刷会社で雑誌編集を経験したのち、2021年に弟子屈町へ。現在は、アカエゾマツの森に囲まれた〈川湯ビジターセンター〉に勤務しながら、森の恵みを追究中。

小屋のウッドデッキに惹かれるワケは?

屈斜路湖畔の〈SOMOKUYA〉。
道民ならきっと誰もが知っている、すてきなカヌーガイド&雑貨屋。

営んでいるのは、土田祐也・春恵夫妻である。

2年前、私が弟子屈町に移住してから初めて
〈SOMOKUYA〉を訪ねたとき(移住前に何度も来ていた)、
店先にある、建設中の小屋のウッドデッキでおしゃべりをして、
この小屋は、祐也さんがコツコツ手づくりしていると聞いて、
「さすが北海道!」とうれしくなったことを、よーく覚えている。

北海道の人はDIY精神に溢れている。
「なかったら(買うのではなく)つくればいい」という考え方が大好きだ。

廃材を集めてつくられた、なんとも愛着がわく小屋。
「ここで、東京のあんな店やあんな人のPOP-UPストアをしたら楽しいだろうなぁ」と、
次々とイメージが湧いたことも覚えている(まだ実現できていないけど……いつか必ず!)。

そしてこの小屋が昨年から、なんだかいい働きをしている。

入り口に掲げられているのは、
〈ミナソコマーケット〉と書かれた看板。
並んでいるのは、ピチピチの野菜、コーヒー、焼き菓子、刺し子の小物、etc.

それぞれの商品の横にはBOXが置かれていて、代金を入れるようになっている。
そう、ここは無人直売所なのだ。

小屋に取り付けられた看板も、もちろん手づくり。

小屋に取り付けられた看板も、もちろん手づくり。

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「めろんこ」がタダ?

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とびきりおいしい北海道の夏野菜、しかも採れたて!

ピチピチの野菜を運んでくるのは、ご近所〈大森農園〉の大森圭美さん、3児の母。

この日の収穫物は、数種のミニトマト、ピーマン、甘長とうがらし、ケール。
〈大森農園〉は弟子屈町の名産品を育てるメロン農家でもあるので、
「めろんこ(摘果されたメロン)」が、「あげます」と書かれた札と一緒に並んでいる。

春恵さんは、
「運ばれる間に色づくのではなく、真っ赤になってから収穫されたトマトは、別物。
大森さんのトマトを一度食べたら、もうほかでは買えない。
本当においしくて、毎日食べてます!」と絶賛する。

〈SOMOKUYA〉と〈大森農園〉は車でほんの7〜8分の距離。
正真正銘の採れたて野菜だ。

大森さんは、
「子どもと同じで、毎日きちんと様子を見て、できるだけ手をかけて、大切に育てています。
これからは、とうもろこしやさつまいもなど、ラインナップも少しずつ増えて、
冬のほうれん草まで続きます」と、
ピチピチ野菜をていねいに並べながら教えてくれた。

〈SOMOKUYA〉は、カヌーガイドの受け付けをする店舗内に、
オリジナルのTシャツやエコバッグ、お気に入りの作家による商品など、
春恵さん曰く「基本的に全部、私が好きなもの。あとは自分でつくったもの」が並んでいる。

「本当は、直接お会いしてお買い物してもらいたいんですけど、
カヌーの送迎もあったりして、ほんの10分だけど留守にしてしまうことも多い。
そんなときに限ってお客さんがいらっしゃることもあったりして……」

であれば、店主不在のときでも買い物できる場所をつくろう。
そうすれば遠くから訪ねてきてくれた人も、少しは楽しめるかもしれない。

そんな思いから、昨年の夏に始めた〈ミナソコマーケット〉だが、
「無人のほうが気軽で買い物しやすいね」なんて声もあったり、
早朝に店の前を通り過ぎるハイカーたちの御用達になったり、
思いのほか、人気なのである。

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「ミナソコ」の意味は「水底」!?

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人手不足解消のために思いついた策が、素敵な展開に

とはいえ、24時間屋外営業。

「昨年は、11月下旬で一旦終了。冬になっても販売する野菜はあったんですけど、
外に出していると凍るようになってしまって……」と春恵さんは苦笑い。

「今年はGWから、まずはコーヒーや焼き菓子だけでスタートしたんですけど、
パウンドケーキを出した瞬間にカラスに食べられてしまって、
その翌日から毎朝カラスが狙っている……。
仕方がないので、ガラスケースを置いて、そこに入れることにしました」
と、苦労もいろいろある。

気になる会計はというと、こちらはほとんど問題はなく、
逆に多いこともあるそうで……。

「この間は1円玉が余計に何枚か入っていて、
『これはお賽銭?』なんて笑ったこともありました。
料金箱からも、いろんな物語が生まれますよ」

道路沿いに看板を出したら、近所の人たちも覗くようになった。

道路沿いに看板を出したら、近所の人たちも覗くようになった。

7月からは野菜を置くようになった。

「最初にいらしてくださったのが、〈大森農園〉のSNSを見ている方で、
『朝早くから子育てもしつつ頑張っている姿を見て、応援したくて』って言ってくれて、
とてもうれしかったです」と、春恵さん。

地元の人にも「近くでおいしい野菜が買えるね」と喜んでもらったり、
SNSには縁がない世代も看板を見て「なんかあるのかい?」と声をかけてくれたり、
少〜しずつではあるけれど、お客さんが広がっていることを実感している。

〈ミナソコマーケット〉の名前には、ふたつの意味がある。

〈ミナソコマーケット〉の名前には、ふたつの意味がある。

「マーケットと名づけたからには、もっといろんな商品を並べたい。
量り売りもやりたいですね」と、夢を膨らませる春恵さん。

そもそも〈ミナソコマーケット〉の名前は、
「ここ屈斜路湖は夏の間、朝は雲海の下にあることが多くて
『私たちが水底に漂う早朝から買い物ができる場所をつくりたい』。
そんな想いが込められているんです」

そしてその延長に、
「みんながそこに集まれて、みんなの笑顔がそこにある。
そんな場所になりますように」
という願いもあるのだ。

北海道の夏は短いけれど、そのほんの数十日間は、日が長くて、とても爽やかで、野菜が本当においしい。

北海道の夏は短いけれど、そのほんの数十日間は、日が長くて、とても爽やかで、野菜が本当においしい。

〈SOMOKUYA〉の店先にある、手づくりの小屋。
ここには縁側ならぬウッドデッキがあって、
どこからともなくいろんな人が集まってきて、
湖畔の風を感じながら、各々が、なんだか心地いいなぁ、と感じている。

そんな場所が生まれようとしている弟子屈町って、とてもすてきだなぁ、と思った。

information

map

ミナソコマーケット(SOMOKUYA内)

住所:北海道川上郡弟子屈町屈斜路198-4

TEL:015-484-3765

営業時間:24時間(11月末頃まで)

Web:SOMOKUYA

Instagram:@somokuya

※ミナソコマーケットの営業内容は、Instagram(@somokuya)にて発信。

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