連載
posted:2024.12.23 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の真ん中あたりにある「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同でオーガニック農園「HOMEMAKERS」を立ちあげ、野菜や果樹の栽培および販売、カフェをオープン。2024年より地元の廃校をリノベーションし、宿泊施設NOTELを運営。
https://homemakers.jp/
12月、師走です。
わたしは師ではありませんが、とにかく走りまくっています。
12月に限らず、ここ最近はずっと体も頭も走り続けている……。
今回はそんな私自身のことを書こうと思います。
2012年に小豆島に家族で移住し、今年の10月で丸12年経ちました。
2013年から農業を始め、カフェを開き、今年6月にはそのカフェを移転し、
8月に地元の仲間たちとともに〈ゲストハウスNOTEL〉を開業。
とにかく時間が足りない。
そりゃそうですよね。
農業、カフェ、ゲストハウスと、やることを増やし続けてきてしまったから。
2013年4月から書いてきたこの小豆島日記も、
原稿の〆切に数日遅れることはあったものの、
1か月以上遅れてしまったことは今回が初めて(大変申し訳ありません)。
のんびり田舎暮らし、ていねいな暮らし、どこにいってしまったのか。
なんとなく、このままではよくないと感じています。
いや、間違いなく良くない!(汗)
余裕がなくて、人とのコミュニケーションも雑になりがちだし、
きっとまわりの人たちからも「ひかりさんは忙しそうだから……」と
いろいろと遠慮されてしまっていると思う。
さて、どうしましょうか。
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地方に移住して、複数のことに取り組む生き方をする。
私が小豆島への移住を考えていた当時、
「半農半X」という生き方に興味をもっていました。
塩見直紀さんの『半農半Xの種を播く──やりたい仕事も、農ある暮らしも』
という本に出合ったのがきっかけで、野菜を育てながら、
写真を撮ったり文章を書いたりする仕事ができたらいいなぁと。
もう1冊、藤村靖之さんの『月3万円ビジネス』という本からも
影響を受けていて、誰かが喜んでくれる、必要としていることで、
自分ができることを月3万円くらいの収入の小さな仕事として取り組み、
それを10個組合せれば生きていけるでしょうという内容だったと思います。
今まさに、農業とカフェとゲストハウスと複数のことに取り組んでいます。
ゲストハウスに宿泊される方が、野菜を購入して、
滞在中にその野菜を料理して食べてくれる。
おいしいと喜んでくれて、それを直接伝えてくれる。
お昼はゲストハウス1階にあるカフェでランチを食べたり、
コーヒーを飲んだり。
島の友人や知人が、カフェに野菜を買いに来てくれる。
そこで野菜の料理の話をしたりする。
農業とカフェとゲストハウスそれぞれがつながっていて、
とても理想的ではあるのですが、なんせそれを同時にまわしていくのは大変。
牛乳の在庫チェックから野菜の収穫、発送管理、
インスタでの情報発信まで、頭のなかには多岐にわたる、
やらないといけないことがごっちゃになってつまっている状態。
カフェが広くなり、宿泊できる施設ができ、たくさんの人たちに出会い、
笑い合いながら話す機会が増えました。
一方で、ともに働く仲間には、段取りが悪かったり、
判断が遅かったりして迷惑をかけることが増えた気がします。
みんな離れていかないでねと思うことが最近しばしばあります。
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さて、どうしましょうか。
具体的な答えはまだ出ていないけれど、今すべきなのは、
自分が持ちすぎている何かを捨てて、余白をつくる必要があるということ。
自分が持っていたいと思う魅力的なことでも、欲張らずに捨てないといけない。
自分が持っているより、ほかの人が持っているほうがきっとうまくいく。
都会で暮らしていても、田舎で暮らしていても、
結局は自分の性分や、これまでに染みついた生き方、
暮らしている日本という国の環境によって、休みなく働いてしまう。
次々やりたいことをやり続けてしまう。
先日、ゲストハウスに泊まっていたカナダから来ていた女性に言われたこと。
「ホリデイが絶対必要だよ。そうじゃなきゃクレイジーになっちゃうよ」
いやー、ほんとそう。
どれだけ好きなことでも楽しいことでもやりたいことでも、
休みなく続けるというのは悪ですね。
冬の小豆島は穏やかで静か。
1月下旬〜2月上旬は、カフェもゲストハウスも冬季休業
(もし小豆島に来る予定がある方は、インスタグラムなどで
営業日をご確認くださいね)。
その時期は、農業もペースを落とす予定です。
焚き火に当たりながらあたたかいコーヒーを飲む時間、外で薪割りする時間。
そんな冬の時間を楽しみながら、これまでのことを振り返ったり、
先のことを考えたりしたいと思います。
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