連載
posted:2024.10.21 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の真ん中あたりにある「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同でオーガニック農園「HOMEMAKERS」を立ちあげ、野菜や果樹の栽培および販売、カフェをオープン。2024年より地元の廃校をリノベーションし、宿泊施設NOTELを運営。
https://homemakers.jp/
小豆島でゲストハウス〈NOTEL〉をオープンして2か月たちました。
暑すぎた夏が終わり、ようやく過ごしやすい秋を迎えています。
秋の小豆島は、行楽にぴったりのシーズン。
NOTELの宿泊予約も少しずつ増えてきたので、
秋の小豆島を楽しんでもらうべく、きてくださるみなさんに、
その魅力や楽しみ方をお伝えしています。
夏の終わり頃から始まる稲刈りの風景。NOTELはこんな田園風景のなかにあります(写真中央からちょっと右に写っています)。
毎年10月中旬に行われる「小豆島 太鼓まつり」。NOTELの目の前から肥土山(ひとやま)地区の太鼓台が出発していきました。
宿を運営するようになって、小豆島を訪れる人たちにどうやって小豆島の楽しみ方、
おすすめの過ごし方を伝えるか、ここ最近ずっと考えています。
いざ小豆島のことを伝える立場になってみると、もっともっと伝えたいことが
たくさんあるのに、伝えたい情報がまとまっているものがない、英語表記がない、
詳細な地図がない、あの山道は今歩ける状態なのか情報がないと、
「ない」ものがたくさんあることに気がつきます。
事前に調べたり、用意すべきものがたくさんあるんだなと実感しています。
それをこれからひとつひとつつくりあげていくことは大変でもあるのですが、
ちょっとワクワクもしています。
きてくれる人たちに、どうやって小豆島のことを伝えて、良い滞在をしてもらうか。
その土地を楽しむために、地図は必須。A1サイズ折りたたみで英語表記もある『小豆島歩き遍路地図・日英併記版』がおすすめ。
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小豆島の魅力といえば?
まずはやっぱり「海」ですかね。
おだやかでキラキラし、多島美と夕景が美しい瀬戸内海。
もうこれは伝えなくても多くの人たちがイメージできるだろうし、
それを楽しみに小豆島を訪れるんじゃないかと思います。
続いて「オリーブ」。
オリーブ畑の風景、瀬戸内海を背景にしたオリーブの木。
間違いなく美しいです。
小豆島で暮らす私たち自身も、瀬戸内海やオリーブのある
美しい風景に日々癒やされています。
そういった観光地的な美しい風景に加えて、私たちがこれは
ほかにはない小豆島の魅力だと考えているのが、
小豆島八十八ヶ所の霊場のなかの「山岳霊場」と、
その霊場を巡る山や集落のなかにある「遍路道」です。
小豆島の遍路道。山のなかを通る遍路道が多くあります。
「お遍路」といえば四国が有名ですが、実は小豆島にも
八十八か所の霊場(お寺や庵など)があり、その霊場をまわる遍路道があります。
その昔、弘法大師(空海)さんが島に立ち寄られて、
修行や祈念を行ったといわれている88の本場霊場と奥の院、合わせて94か所の霊場。
その足跡をたどって霊場を巡礼するのがお遍路で、
小豆島でもお遍路さんをよく見かけます。
「第44番 湯舟山(ゆふねさん)」で休憩中。中山地区の山の上にあります。風が通り抜けるとても気持ちがいい場所。
四国八十八ヶ所を巡礼すると総距離が1400キロにもなるのに対して、
小豆島八十八ヶ所は約150キロ。
小さなエリアにぎゅっと霊場が集まっています。
そして、小豆島霊場には四国霊場にあまり見られない、
山谷や自然の地形を利用した「山岳霊場」がいくつかあり、
遠くから見ると、ほんとにすごい場所に建物が建っているんです。
よーく見てください。岩にへばりつくように建物があります。小豆島の山岳霊場のひとつ「第72番奥の院 笠ヶ滝(かさがたき)」。
この昔からある本物の山岳霊場と遍路道が、私たちが暮らしている場所の
すぐ近くにあることにとても価値があるんじゃないかと。
すぐ近くにあるから、小豆島滞在中に
「明日の朝、遍路道を少し歩いてみようか? 山岳霊場を訪れてみようか?」
というくらい気軽に歩いていくことができるんです。
10月のある日。暑さがだいぶ落ち着いたので、今シーズン初の遍路ハイキングに。まずは田んぼの道を歩きます。
遍路道。夏場は雑草が生い茂り、蜂やヘビなども活発なため、歩くのが難しいところもあります。
ゲストハウスNOTELからも歩いて30〜40分ほどで行ける
すばらしい山岳霊場が2つあります。
「第47番 栂尾山(とがのおさん)」と
「第72番奥の院 笠ヶ滝(かさがたき)」です。
「第47番 栂尾山(とがのおさん )」。洞窟のなかに仏殿があります。
「第72番奥の院 笠ヶ滝(かさがたき)」。これ登るの? という急な石段を登らないと本殿に行けない。
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お遍路というと、どこか宗教的で、白い服を着て、
菅笠をかぶって歩かないといけないものと考えてしまうかもしれませんが、
私はもっと気軽に、すぐそこにある遍路道をまずは歩いてみたらいいと思うんです。
歩くのは誰でも自由です。
ちなみに私たちは、ハイキングやトレッキングをするときと同じような気持ちで
歩いていますが、お寺に着いたら、般若心経を唱え、お参りをします。
遍路の全行程を歩くことが目的ではなく、何度も歩いているルートもあるし、
遍路道とそうではない道をおりまぜて歩くこともあります。
自分たちが歩きたい場所を、好きなスタイルで歩いています。
歩くときはいつもこの般若心経が書いてある紙を持っていきます。何度か読んでいますが暗唱はできない……。
お札。裏側に願いを書いて、納札入へ。
山道や集落のなかの細道を歩いて、霊場にお参りして、
途中で風景を楽しみながらコーヒーを飲んで休憩して、また歩く。
2〜4時間くらいの「お遍路ハイキング」。
歩くことで、観光地としての小豆島ではなくて、小豆島のもっと素の部分というか、
飾らない土地そのものを感じられると思います。
気候、日々の営み、自然そのままの風景、歴史……。
そういう小豆島の土地そのものが好きで私たちはここに暮らしているので、
その部分を知ってもらえると、うれしいんですよね。
「第44番 湯舟山(ゆふねさん)」でコーヒータイム。コーヒーとおやつはぜひ用意しておきたいですね。遍路ハイキングがぐっと楽しくなります。
湯舟山の湧き水。めっちゃ冷たかった。暑い日だったので、とても癒やされました。
先日NOTELに宿泊された海外からのお客さまは、
滞在中ほぼ毎日NOTEL周辺を歩いていました。
特に観光スポットを訪れることもなく、ただこのあたりを歩いて、
帰ってきてカフェで休憩して、お話して、夜ごはんを料理して食べて寝る。
こんなふうに小豆島での時間を楽しんでもらえるんだと驚いたし、うれしかった。
歩くこと自体が楽しいし、気持ちがいい。
そんな楽しみ方をもっと多くの人に知ってもらいたい。
私たちが実際に歩いてみて良かったルートをYAMAP(ヤマップ)という
登山地図アプリのNOTELページで公開しています。
NOTELを出発して2〜4時間くらい歩くルートです。
遍路道、山道、集落のなかの道などを歩き、
途中でお寺や畑などに立ち寄るルートになっています。
よかったらぜひ参考にして歩いてみてください。
山岳霊場と遍路道、歩いて楽しむ小豆島。
NOTELに滞在して、いつもとはちょっと違う小豆島での過ごし方を
楽しんでもらえたらうれしいです。
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