連載
posted:2023.8.28 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島のなかでもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
https://homemakers.jp/
小豆島の真ん中に位置する、棚田が美しい集落「中山(なかやま)」。
今、この小さな農村で暮らす人たちが取り組んでいる大きなプロジェクトがあります。
この地で江戸時代から続く伝統芸能『中山農村歌舞伎』を奉納上演するための場
「中山の舞台」の大規模改修工事プロジェクトです。
今回はこの取り組みについてみなさんに知ってもらい、応援してもらいたい!
という気持ちを込めて書きます。
まず「中山」という農村について。
中山は人口約260人、約100世帯が暮らす山間にある集落で、
平地はほとんどなく、山の急な斜面に切り開かれた棚田では現在も米が栽培されています。
この風景がとても美しく、『日本の棚田百選』に選ばれているほど。
旅行者の多くも、この景色を見に中山を訪れます。
この美しい棚田の風景のなかに「中山の舞台」があり、
そこで毎年10月に中山農村歌舞伎が奉納上演されます。
農村歌舞伎というのは、豊作祈願の奉納と娯楽として
昔から各集落で行われてきた伝統行事です。
そこで暮らす人々が企画し、演じ、楽しむ行事。
昔は小豆島の各集落に舞台があり、農村歌舞伎が行われていたそうですが、
今残っているのは、この中山地区と肥土山地区の2か所だけ。
小さな島の小さな農村で、300年以上続く伝統芸能と
その舞台が守り続けられているんです。
実はこの中山の舞台が、今まさに倒壊の危機に瀕していて、
2022年秋より大規模な改修工事プロジェクトが始まっています。
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中山の舞台は、地域の氏神である春日神社の境内に、
江戸時代後期に建築されたといわれています。
建築後約200年が経過しており、専門家の調査によって、建物の傾きや損傷が激しく、
すでに半壊状態であり、いつ倒れてもおかしくないような状態であることがわかりました。
きっと、すでになくなってしまったほかの地区の農村歌舞伎舞台も
こうやって古くなって、維持することが難しくなり、
舞台とともに農村歌舞伎という伝統行事もなくなっていってしまったんだと思います。
守る人がいない、守るためのお金がない。
中山地区のみなさんは、この舞台と農村歌舞伎という伝統を
これから先にもつなげていこうと、大きな労力とお金をかけて舞台を直すことに決めました。
本当に大変なことだと思いますが、舞台と伝統を守るということは、
この地区で暮らす自分たちの誇りを守り、結束を高め、
結果としてここでの暮らしを守ることにつながるという思いを込めて。
改修工事には約8600万円という費用がかかるそうです。
文化庁や香川県、小豆島町からの支援がありますが、
事業に関する地区の経費は約1000万円に及びます。
単純に計算して、1世帯約10万円の負担。
これはなかなか簡単に出せる金額ではないです。
工事の進行中にも想定以上に傷みが激しい箇所が見つかったり、
シロアリの被害などが発覚したりすれば、改修費用が増える可能性も。
上回った金額はそのまま地区の負担につながるそうで、
費用の工面が難しい状況が続いているそうです。
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この状況のなかで、中山地区の自治会、農村歌舞伎保存会の人たちを中心に立ち上げた
資金を集めるための活動が、クラウドファンディング
『倒壊の危機迫る「中山の舞台」小豆島の宝、中山農村歌舞伎を次の百年へ』です。
改修工事と並行して、クラウドファンディングの準備を進めてきて、
2023年7月3日より支援募集が始まっています。
8月21日現在、第1目標金額である700万円は達成し、
次の目標に向けて8月31日まで支援を募っています。
もし10年前だったら、改修工事を諦めていたかもしれませんが、
今はクラウドファンディングという手段で多くの人に応援してもらえる仕組みがあり、
そもそもこれだけ人口減少と高齢化が進み、もう自分たちの手だけでは
どうしようもできないという現状の認識があることで、
今までにない手段に挑戦してみようと踏みきれるのかもしれません。
みなさんからの少しずつの応援で、小豆島の小さな農村の伝統と暮らし、
そしてその風景を守っていくことができます。
どうぞ『倒壊の危機迫る「中山の舞台」小豆島の宝、中山農村歌舞伎を次の百年へ』へのご支援をよろしくお願いいたします。
そしていつか、この美しい農村、中山の農村歌舞伎や虫送りを見に、小豆島に遊びに来てくださいね。
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