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小豆島の里山暮らし、
冬は薪を切ったり割ったり
「薪活」が楽しい

小豆島日記
vol.311

posted:2023.2.13   from:香川県小豆郡土庄町  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。

writer profile

Hikari Mimura

三村ひかり

みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島のなかでもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
https://homemakers.jp/

薪ストーブを導入して初めての越冬

昨年3月に薪ストーブを我が家に導入してから初めての本格的な冬を過ごしています。
クリスマス寒波、1月下旬の寒波と、今シーズンは小豆島も
雪がちらつくような極寒の日が何日かありましたが、
薪をがんがん燃やしているので、薪ストーブの暖かさに救われています。
(薪ストーブの導入については、小豆島日記vol.290もぜひ読んでみてください)

冬の朝。窓から暖かい日差しも入ってきます。

冬の朝。窓から暖かい日差しも入ってきます。

電気も灯油もガスも使わないで部屋を暖められるというのは、思っていた以上にうれしい。
燃料にお金を払わなくていいので得した気分になるし、
身の回りにあるものを燃料にできるエコロジカルさがとても気持ちいいんです。
ちなみに去年までうちでは灯油ストーブとエアコンをメインで使っていました。
今年は灯油ストーブを使うのをやめたので、灯油はなし。
エアコンは薪ストーブがない部屋や、朝起きた直後などで使っています。

朝起きてすぐに薪ストーブの火をつけるのは私の仕事。

朝起きてすぐに薪ストーブの火をつけるのは私の仕事。

電気も灯油もガスも使わないかわりに燃料として使うもの、それは「薪」。
ストーブの中で燃やす薪が大量に必要なんです。
「たくさん薪いるよー」と薪ストーブを使っている先輩たちから
いわれていましたが、ほんとにたくさんいる!
家の軒下に積んである薪は、みるみるうちになくなっていきます。

家の軒下に積んである薪。これくらいの量だと1週間ほどでなくなる。

家の軒下に積んである薪。これくらいの量だと1週間ほどでなくなる。

さて、薪ってどうやってつくるんでしょ。

まずは薪となる丸太を集めます。
私たちは小豆島のなかで間伐された木や、
理由があって切り倒された木をもらってきています。
「薪が必要なんです」とあらかじめ友人や知人に伝えておくと、
切り倒された木の情報がたくさん入ってきます。これは本当にありがたいこと。

人の力で持ちあがらないような大きな丸太を運ぶ場合は
ユニック車などの重機が必要ですが、だいたいの場合は、
軽トラとチェンソーがあれば人力で運べるくらいの丸太が多いです。
時間があれば、軽トラに乗って現地まで行き、切られた木を集めてきます。

この日は、廃材をもらいに軽トラで出かけました。

この日は、廃材をもらいに軽トラで出かけました。

木材を固定するためのロープワーク。南京結びをようやく覚えました。

木材を固定するためのロープワーク。南京結びをようやく覚えました。

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保管する場所は?

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薪づくりの味方となる道具たち

その次、集めてきた木をどうするか。
そもそも家の庭に置いておけるような量じゃないので、
去年の夏に近所の方に相談して、薪を保管できる場所を借りました。
集めてきた木を置いておく場所、薪を切ったり割ったりする作業場所、
薪を保管しておく場所、意外と広いスペースが必要なんですよね。
その場所を家の近くで借りることができたのはとてもよかったです。

作業したり、薪を保管しておいたりするための場所を新たに借りました。木々に囲まれた秘密基地みたいでいいんです。

作業したり、薪を保管しておいたりするための場所を新たに借りました。木々に囲まれた秘密基地みたいでいいんです。

いろんな太さ、いろんな長さの木が集まってきます。
これを薪ストーブの中に入る長さにカットして、
太い木はそのまま置いておいても内側まで乾燥しないので割ります。
この切る、割るという単純そうな作業が実は簡単ではない(汗)。
まず太い丸太をどう切るか、直径40センチくらいの丸太をノコギリで切っていたら、
いったい何時間かかるんでしょ。無理です……。

そこで登場するのがチェンソー。
私はまだチェンソーを使いこなせておらず。練習しなければ……。
道具ってただ使えるだけじゃだめで、刃を研いだりメンテナンスしたりも
自分でできるようにならないといけないんですよね。
教えてもらいながら、とにかく自分でやってみるしかない。

チェンソーで大きな丸太を切るのはなかなか難しい。

チェンソーで大きな丸太を切るのはなかなか難しい。

そしてもうひとつ、割る作業。
薪割りといえば、丸太を立てて斧を振り降ろして割るというのを想像すると思いますが、
これがとても重労働。
1本、2本を体験としてやるのはとても楽しいのですが、
何十回も割ると思うとしんどすぎる。
(もちろん斧で薪割りするのを楽しめる人もいると思います!)

私たちはエンジン式の薪割り機を使っています。
直径50センチくらいの丸太でも、バリバリバリと割ってくれる頼もしい機械です。
無理してすべて人力でやらなくても、素直に機械の力を借りるのもよきかと。

こうしてようやく同じくらいの長さ、太さの薪ができあがっていきます。
これを積みあげて、次のシーズンまで保管して乾燥させます。

薪を円柱形に積みあげて、最終的に小さな家みたいになる「スイス積み」に挑戦。保管用の棚をわざわざつくらなくてもよくて、たくさんの薪を積みあげられるのがいい。

薪を円柱形に積みあげて、最終的に小さな家みたいになる「スイス積み」に挑戦。保管用の棚をわざわざつくらなくてもよくて、たくさんの薪を積みあげられるのがいい。

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思わぬ来客が……?

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「薪活」がもたらす、すてきな時間

昨年11月くらいからこの「薪活」を週に1日くらいのペースで続けてきました。
少しずつですが薪のストックがたまってきて、
積みあがってきた薪を見てはうれしくなります。
そもそも、作業自体が楽しいんです。無心に木を切って割ってためていく。
作業の途中にお湯を沸かしてコーヒー淹れて、
共同で作業している友人たちと一緒に飲んで。
コーヒーを飲んでたら、積みあげた薪の上に、
お腹がオレンジ色の小さな野鳥がとまりにきたり。

小鳥なんて全然興味なかったのに、よく近くにやってきてくれるので、
なんだかすごくかわいくなってしまって。
ちなみにその鳥はジョウビタキという鳥種で、
きっとオスなのでジョーくんと名づけました。

積みあげた薪の上にやってきたジョウビタキのジョーくん。かわいい。

積みあげた薪の上にやってきたジョウビタキのジョーくん。かわいい。

作業の合間のコーヒータイムがいいんです。

作業の合間のコーヒータイムがいいんです。

いい時間なんです、薪活の時間。
薪ストーブを使うようになって、木が身近な存在になって、山が好きになりました。

薪ストーブのシーズンはまだ2か月くらいは続きそうです。
どんどん薪をためていかなきゃ。さぁ、薪活。

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