連載
posted:2022.3.28 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
https://homemakers.jp/
小豆島で暮らし始めて10回目の冬、
ようやく我が家に薪ストーブが設置されました。
すでに季節は春に向かっていますが、
わが家では薪ストーブがうれしくて毎日火を入れています。
気づけばストーブの前は猫たちの特等席に。
幸せそうで何より。
どの薪ストーブにしようか、家の中のどこに置こうか、
そもそもどれくらいお金がかかるのか、
どうしようかなぁ、どうしようかなぁと考えているうちに、
あっという間に年月が流れ、冬が何度も過ぎていきました。
冬が来るたびに今年こそは! と思いつつ、実現せず……。
でも今年の冬は寒い日が多かったうえに、灯油も異常な値上がり。
石油や電気に頼らなくても暖をとれる薪ストーブが必要だなと
心を決めて、具体的な導入計画をスタート。
なんとかこの冬に間に合いました。
ちなみにわが家の薪ストーブ導入コストは、ざっとですが
薪ストーブ本体 8万円
煙突一式 30万円
屋根、土台工事 20万円
という感じです。
薪ストーブ本体の価格はブランドや機能によって
さまざまなので、ひとつの参考として。
さて、薪ストーブを設置するまでも大変でしたが、
実際に使いだしてから気づいた大変なこと、
「燃やすものがない!(笑)」
いや、わかってたんですが、そうなりますね。
薪ストーブの燃料となる薪(木材)が大量に必要なんです。
どうやって薪を手に入れようか。
まさか、これだけ木々に囲まれた場所で暮らしているのに、
通販で薪を買うなんて選択肢はうちにはありません
(そんなお金もないし……)。
身近な場所で集めるんです。
自分たちの暮らしに薪が必要という状態になって、視点ががらっと変わりました。
山などで伐採された木材や、解体された木造建物の廃材は、
いまの私たちにとって宝の山。
いままではなんとも思っていなかった、
むしろどうやって処分しようかと悩んでいたものが宝になるんです。
ゴミじゃなくて必要なものになる!
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昔は、かまどで料理するにしても、お風呂のお湯を温めるにしても
薪が必要で、暮らしのなかに当たり前のように薪があって、
薪を集めたり、薪割りしたりすることが生活の一部でした。
近くの山に行って小枝を集めたり、
木を切り倒して運んだり、廃材を保管しておいたり、
エネルギーが身近なところで循環していたんだなぁと。
ちなみにいまでも私たちが暮らしている地区では、
薪で温めるお風呂を使っている家が残っています。
田舎で暮らしていれば、
薪ストーブの燃料資源(木材)は身近なところに山ほどあるんです。
その薪を集めるために必要なのは、
1.薪を集める時間があること
とにかくまずは時間が必要。
お金で解決しないということは、自分の時間を割く必要があります。
1か所にまとまっているわけではないので、
空いている時間を見つけてはあちこちに次の冬に使う薪を集めにいきます。
2.木を切ったり割ったりする道具があること
チェンソーと薪割り機が必要です。
のこぎりと斧でもいいですが、たくさんの量が必要なので大変です。
こういう道具は仲間と共有できるといいですよね。
3.運ぶ車などがあること
木材を運ぶための車が必要です。
一番オススメなのはやっぱり軽トラ。
木くずなどの掃除も楽だし。
山道や細い道を気兼ねなく入っていける車がいいです。
4.保管しておく場所があること
たくさんの薪を保管しておくスペースが必要。
木材をよく乾燥させないといけないので、雨に濡れないように屋根があって、
湿度が低く風通しのいいところがいいのですが、
そんな場所は家の敷地内になかなかない!(笑)
これまた共有の薪保管スペースが欲しいくらいです。
5.伐採や廃材の情報を共有してもらえるつながりがあること
身近な薪ストーブ仲間は重要です。
私たちのまわりには薪ストーブを使っている友人が何人かいて、
「あそこの伐採した木を持って帰っていいらしいよ」
などの情報を共有してくれます。
あとは大工さんや工事をしている知り合いなど、
いろいろなつながりから「薪として使える木があるよ」と情報が入ってきます。
地元のつながりは本当に必要だなとあらためて思いました。
書き出してみると、薪を集めて使える状態にしておくのは
意外と難しいですね。
これを苦痛だと思わず、ゴミが減るし、
遠い国から石油を買わなくとも地元でエネルギーを循環できるし、
薪が積まれている様はかっこいいしと、
喜びを感じることができれば大丈夫です。
その先には暖かな時間があります(笑)。
まだまだ始まったばかりの薪ストーブ生活ですが、
この数週間の間に、薪をめぐる新たな地域循環、
コミュニティについて妄想していたらなんだか楽しくなってしまって。
自分たちが暮らすすぐそばにある里山で木を切る、
エネルギーとして使うという循環ができれば
それはとてもおもしろいよねとか、
かっこいい共有の薪保管場つくりたいよねとか。
薪ストーブ暮らし1年生、
新たな視点でいろいろ見て試してみようと思っています。
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