連載
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
https://homemakers.jp/
外食できない、旅行に行けない、イベント中止、そんな日々が続いています。
暮らしのメリハリが減ってしまった。
季節を感じる機会が減ってしまった。
そんないま、私がいいなと思っていることは、
食卓いっぱいに旬の野菜の料理を並べて食べること!
普段から私たちは家が働く場でもあるので、家で過ごす時間が長いです。
家が好きなので、家で過ごすこと自体にはそんなにストレスを感じない。
それとオフィスに通勤していた人たちに比べたら、
コロナ禍でそこまで生活が大きく変わってしまったというわけでもない。
それでもやっぱり1年もこんな期間が続いていて、小さな我慢をし続けていて、
気づかないうちに心に小さなストレスがたまり続けているような気がします。
気分転換に島を出て都会に買いものにいくのをためらったり、
いつもお世話になっている人たちに会いに行くのも諦めたり。
そして昨年に引き続き、今年も私たちが暮らす地区の伝統行事
「肥土山農村歌舞伎」は中止になってしまいました。
夏の虫送りや秋の太鼓祭りなどもどうなるかなぁ。
地域の行事や祭りに参加するのは、準備や練習、
朝早くからの弁当づくりなどとても大変なのですが、中止になってしまうと、
こうも暮らしにメリハリがなくなってしまうんだなぁと寂しく感じます。
知らない間に季節が流れていき、1年が終わってしまうような……。
季節の行事や気分転換の旅行、久しぶりの人に会いにいく、
そういう時間があることで、私たちは毎日の生活を楽しみ、季節を感じることができ、
記憶に残る日々を過ごしていたんだなぁとあらためて感じています。
でも、こういう状況のなかでどう楽しむか、
どうメリハリをつくりだし、日々が流れていってしまわないようにするか。
いまみんなが考えていると思います。
お菓子づくりをしたり、映画を見たり、いい入浴剤を入れてゆっくりお風呂に入ったり。
ちょっとしたワクワクや驚き、幸せを、毎日の生活のなかに取り込みたい!
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流れていってしまいそうな毎日のなかで、
私に季節の移り変わりをちゃんと教えてくれるのは「野菜」です。
畑で作業をしているとき、収穫して出荷作業をしているとき、
そして食卓に旬の野菜の料理が並んだとき。
日々収穫できる野菜は変わっていくので、
食卓に並ぶ野菜もそれに合わせて変わっていきます。
旬の野菜を食べながら「あー、ナバナおいしい! 春が近いなぁ」と感じたり。
私たちは旬の野菜を箱に詰めて「旬野菜セット」として一年中出荷しています。
旬野菜セットには、そのとき採れる野菜を組み合わせて入れています。
冬にはトマトはありません。夏には大根はありません。
季節によって野菜の種類が大きく変わります。
それがいいんだと思っています。
あ! 今月はこんな野菜が入ってる! という季節を感じるワクワク感。
ちなみに野菜宅配サービスには、
ひとつの農家(同じ地域の農家などグループの場合もあり)から直送されるものと、
全国のいろいろな農家から野菜を集めて、それを組み合わせて
配送されるもの(大手だとオイシックスさんなど)があります。
前者の農家直送型は、なんといっても鮮度抜群!
収穫して直接送られてくるわけなので。
そして同じ季節に同じ場所で同じ人が育てた野菜なので、
味の感じとか見た目が似ています。
野菜の種類も同じ条件下で育つものなので似ています。
後者の八百屋型は、全国の農家の野菜なので、野菜の種類が幅広い!
そして雰囲気もやさしそうだったり、ワイルドだったりさまざま。
野菜の種類を指定できたり、少しスーパーに近い感覚。
いったん農家から集められた野菜を組み合わせて配送するので、
鮮度は少し落ちるかもしれません。
という感じで、野菜宅配サービスといってもちょっとずつ内容が違うので、
いろいろ試してみるといいかもしれません。
その季節の旬の野菜が届く楽しさ、普段自分が選ばない野菜が届く新鮮さ。
そんな野菜たちの料理が並んだ食卓が、季節を感じさせてくれて、
家で過ごす時間が長い日々に小さなワクワク感を生み出してくれるはず。
畑ではチンゲン菜や白菜など、アブラナ科の野菜たちが
次々に花を咲かせようと茎を伸ばし、
私たちはそれを「ナバナ」としておいしくいただいています。
春が近いです! 春の食卓はどんなかな。
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