連載
posted:2020.7.14 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
https://homemakers.jp
小豆島に移住して8回目の夏を迎えようとしています。
風景のなかの緑は濃さを増し、汗だくで作業する日が増え、
あー、今年もまた夏がやって来るなと感じます。
私たち〈HOMEMAKERS〉は小豆島で暮らし始めてすぐに畑仕事を始めました。
最初は、おじいちゃんが残してくれた家のすぐ隣にある広さ3畝(せ) ほどの畑から。
ちなみに、畑の広さについてちょっと書いておくと、
私たちは田んぼや畑の広さを話すときに、
「畝(せ)」、「反(たん)」、「町(ちょう)」という単位を使うのですが、
1畝=1a(1アール)10メートル×10メートル=100平米
1反=10a(10アール)1000平米
1町=1ha(1ヘクタール)100メートル×100メートル=10000平米
です。
8年前、3畝(3アール)からスタートした畑は少しずつ広がっていき、
いまは野菜、果樹の栽培あわせて7反(70アール)ほどになりました。
私たちが暮らしている小豆島・肥土山(ひとやま)は山に囲まれた盆地で、
平野部分が少なく、ひとつひとつの畑はとても小さいです。
斜面になっている畑や段々畑もあり、農業を本格的にするには
けっこう厳しい条件だったりします。
斜面だとトラクターを運転するのも危険が伴うし、
段々畑だと段になってる石垣の手入れも必要です。
平地の広い畑のほうが、手入れも圧倒的に楽で、農作業の効率がいいんですよね。
でも、昔から地域の人たちが小さな畑や田んぼで
自分たちが食べる米や野菜を育ててきた里山の風景はとても美しくて
私は好きだし、守っていきたいなと思っています。
それまでの畑の主の高齢化などによって使われなくなった畑を少しずつ借りていき、
家から軽トラで3分くらいの範囲にある14か所の畑で
1年を通していろいろな野菜を育てています。
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それまで農業の学校に通っていたわけでもなく、
農園で働いていたわけでもない私たちが突然始めた農業は、それはそれは効率が悪く、
まともに野菜を育てられるようになるのにとても時間がかかりました。
8年経ったいまでも、わからないこと、新たに知ることはたくさんあるし、
いままでなんて効率の悪いことをしていたんだろうと発見することもあります。
まぁでもそうやって遠回りしてきたからこそ学べたことも多いんですけどね。
そうそう、今年はようやく大きくてきれいなトウモロコシをたくさん収穫できました!
私たちは農薬を使っていないのですが、トウモロコシ栽培でやっかいなのは
アワノメイガという虫です。
アワノメイガの成虫(蛾)が6月頃にやってきて卵を産み付け、
この幼虫が収穫前のトウモロコシの中に入って実を食べてしまいます。
それからカラスたちも上空から収穫直前のトウモロコシを狙っています。
そりゃおいしいのはわかる。でも食べないでくれ〜。
種をまくタイミングを早めにして
アワノメイガの幼虫が大量発生する前に収穫できるようにしたり、
虫の発生をとにかく減らすために周りに草むらができないようにしたり、
防鳥用のてぐす(糸)をカラスが嫌がる高さに張るようにしたり、いろんな工夫を重ね、
ようやく販売できるきれいなトウモロコシ、それから自分たちや仲間が
食べられる分のトウモロコシまで収穫できました。うれしいなぁ。
そうやってひとつずつできることを増やし、小さな喜びを重ねながら、ようやく8年。
まだ思ったようにいかないことがたくさんあるし、常に何かしらの問題があるけど、
ずっとこんな感じでやり続けていくんだろうなと思う。
人生において、そうやって時間をかけて取り組んでいることがあるのは
幸せだよなとも思う。
何より野菜おいしいし!
あー、今年も暑い暑い夏がやってくる。
アイスノン首に巻いて、顔全体を覆ってくれるおばちゃん帽子かぶって、
サングラスして、がんばろっと。
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