連載
posted:2020.3.9 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
http://homemakers.jp/
新型コロナウイルスの影響がこんなにも大きくなるとはまったく想像してなかった。
ここ小豆島でも子どもの学校は3月3日から本当に臨時休校になってしまったし、
予定していたイベントも次々中止。
離島の小さなまちの小学校まで休みになるなんて思いもしなかった……。
予定で埋まっていたカレンダーがどんどん空白になっていく。
私たち〈HOMEAKERS〉は、毎年12月下旬〜2月中旬までを
冬季休業期間としてカフェの営業をお休みしています。
2月上旬になると営業再開に向けて、少しずつ忙しくなっていきます。
屋根裏や梁の上など普段掃除できないところを掃除したり、
食器を入れ替えたり、床を塗り直したり。
カフェは2月21日から営業再開し、翌日2月22日にはめでたく6周年を迎えました。
ここからまた次の冬が来るまで毎週金、土曜とカフェを開きます。
そしてそのタイミングと同じくして、私たちが暮らす小豆島肥土山(ひとやま)で
江戸時代から続いている伝統行事「肥土山農村歌舞伎」の練習が始まります。
毎年5月3日に開催されるのですが、3か月前のこの頃に演目が決まり、
役者が決まり、台本が配られ、今年もまた歌舞伎が始まるなぁと感じます。
穏やかだった冬の期間が終わり、
「あー、今年もまた忙しくなるなぁ」となるのが2月下旬。
そして4月に入ると生姜の植えつけ作業もあり、
農村歌舞伎も本番間近となり、毎晩のように家で練習したり、
週末はリハーサルがあったり、うちが1年で一番忙しい時期になります。
なんとか歌舞伎が終わるまで乗り切ろうと日々せわしなく過ごします。
それが今年は一転。
なんと肥土山農村歌舞伎の上演が中止になってしまいました。
5月の行事だし、まさか中止になるとは思ってもみなかったのでとても驚きました。
これから先どうなるかまだ予想ができないし、学校が休校になってしまった以上、
子どもたちが集まって練習するのは難しい。
今年もいろは(娘)とたくちゃん(夫)は役者として参加することになっていて、
配役も決まり、すでに練習は始まっていました。
それが突然なくなってしまった。
やることが当たり前だと思っていたことが次々となくなっていく。
行かないといけないと思っていた学校が休みになり、
何百年も続いている伝統行事が開催中止になる。
予定がぎゅうぎゅうだったカレンダーが少しずつ空白になっていく。
さてどうしようか。
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そんなときふと思ったのは、そもそもうちのカレンダーは予定でぎゅうぎゅうすぎる。
分刻みとまではいかないけれど、次々予定がやってくる。
これが終わったら次これね。それは私たち大人だけでなく、子どもも同じ。
朝から学校に行って、帰ってきたら歌舞伎の練習があったり、習い事にいったり。
ぐーたらする時間が少なすぎるのかもしれない。
一生懸命活動しすぎなのかもしれない。
フリーな時間ができたとき、自分が何をしたいか。
ありあまる時間を手にしたとき、何をしようか。
この1か月はそれができるいい機会なのかもしれない。
ここ数年、毎年がんばって練習して参加させてもらってきた
肥土山農村歌舞伎が中止になるのはとても悲しい。
できれば上演したかったなぁ、子どもたちが日に日に役者になっていく姿を
見たかったなぁというのが私の思い。
ま、でもいろんな年がある。
今年の3月、4月をどんなふうに過ごそうか。
きっといまだから向き合えることがあるんだと思う。
子どもが大人になったとき、あの1か月が
いまの私の始まりだったなぁなんてなることもあるかもしれない。
ポジティブにいまを受け入れ、いつもと変わらず日々を楽しみたい。
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