連載
posted:2019.1.14 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
http://homemakers.jp/
少し時間が経ってしまいましたが、あけましておめでとうございます。
今年も「小豆島日記」をどうぞよろしくお願いいたします。
この冬休みに15日間、アメリカの西海岸に行ってきました。
オレゴン州のポートランドから始まり、カリフォルニア州のサンノゼ、
バークレー、オークランド、サンフランシスコ、そしてロサンゼルスへ。
各地の農園やファーマーズマーケット、お店などをめぐりました。
この15日間、たくさんのものを見て、いろんな人に会い、
まだ頭の中はごちゃごちゃです。
少しずつ整理して、良かったなと感じたものは、
私たちの日々の暮らし、働き方にとり入れていきたいなと思っています。
今回は、私たちの旅の目的のひとつでもあった
ファーマーズマーケットのことについて書きます。
日本でも各地でファーマーズマーケット、マルシェ、市(いち)などと
呼ばれるイベントが開かれていて、生産者が消費者へ直接販売できます。
毎週開催されているもの、年に1、2回だけお祭り的に開催されるものなどさまざま。
私たちもときどき参加して、野菜やシロップなどの加工品を販売しています。
いつも感じていたのは、イベントで野菜を販売しても
ほとんど利益が出ないということ。
島外でのイベントとなると、船に車を乗せて移動する場合、
それだけでかなり高額な交通費がかかってしまいます。
それから人件費。出店するための準備から販売まで含めるとかなりの時間を使います。
そして野菜はたくさん売っても単価が低いため大きな売り上げにならない
(これは私たちの価格設定が問題なのかもしれませんが)。
だから、いつもそういう場での出店は、宣伝、新たなつながりをつくること、
その時間を楽しむことが目的だと考えていて、
あまり儲けようとは思っていませんでした。
アメリカでのファーマーズマーケットはどんなだろう?
日本と同じような感じなんだろうか。
今回は、ポートランドとロサンゼルスのファーマーズマーケットに行ってきました。
もうとにかくそのすてきな雰囲気に魅了されてしまって、
わーっとなりながら歩いてました。
自分たちが育てている野菜と同じ野菜もたくさん並んでいたし、
逆に知らない野菜も。それからおいしそうなお菓子も、きれいな花も。
たくさんのお店が並んでいて、たくさんの人がマーケットを楽しんでいました。
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何が良かったのかなとあらためて考えてみようと思います。
1.たくさんの野菜が並んでいたこと
とにかく並んでいる野菜の量も種類も多かった。
崩れ落ちそうになるくらい野菜が並べられていて、
これは見てるだけで楽しくなる感じでした。
そしてそんなお店が1軒だけじゃなくて、何軒も並んでいるので、
そりゃ賑やかな雰囲気が生まれますね。
2.いろんな世代の人たちがいたこと
若い人も年をとった人も、それから小さな子どもも、
ほんとにいろんな世代の人たちが来ていました。
小さな子どもをキャリーに乗せて家族で来ている人たちも多く、
ただ買いものに来ているというより、
その時間を楽しみに来ている感じがとても良かった。
3.みんなが自分の買いものバッグを持っていたこと
これはスーパーでも同じだったのですが、来ている人たちは当たり前のように
買ったものを入れるかばん(日本で言うエコバッグ)を持っていました。
かわいいかごバッグを持っている人もいれば、
アウトドアで使えるキャリーカートを引いている人も。
かばんの中にあふれんばかりに野菜が入っていて、その様子がすてきでした。
4.毎週開催されているということ
こんなマーケットが毎週開催されている。
お祭りのような特別なものじゃなくて、毎日の暮らしの中に
このマーケットがあるというのが本当にいいなぁと思いました。
これは、ファーマーズマーケットというものを
国や州が推奨しているという背景もあるからだと思います。
暮らしに根づく毎週開催されるマーケットを続けていくことは
いまの日本ではとても難しいことかもしれませんが、ただの買いものの場ではなくて、
地域のコミュニティやカルチャーを生み出していく場として、
とてもいい場だなとあらためて思いました。
ほんとにいいなと思った点はたくさんありました。
でも実際には野菜が売れ残ることもあるし、
わざわざ時間をかけてマーケットで出店する手間を考えるなら、
自分たちの農園で直接売るほうがいいと、
マーケットに出店しない農家もあるそうです。
私たちが抱えてる悩みと同じですね。
もちろん、ファーマーズマーケットで
大きな売り上げをあげている農家がいるのも確かです。
アメリカの特にカリフォルニアでは、オーガニックな食材、
ローカルの食材を大切にする人たちが多いです。
それはこれまでの歴史の中で培われてきたカルチャーで、
そういう場所だからこそファーマーズ・マーケットが
日々の暮らしに根づいているんだと思います。
私たちが暮らしている小豆島には、
毎週開催されるようなファーマーズマーケットはありません。
文化や考え方の違う場所で、いきなりアメリカと同じような
ファーマーズマーケットを開催し継続していくのは難しそうです。
ただ、育てた野菜を食べてくれる人へ届ける手段としてはとてもいいなと思ったし、
そんな場ができたらもっとここでの暮らしは楽しくなるのかなと思います。
いつかこんなファーマーズマーケットを自分たちが暮らす土地で実現しようと企みつつ、
まずは自分たちが育てた野菜をどうやって地元の身近な人たちに届けられるか、
ひとつずつ試しながらやっていこうと思います。
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