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大切な日常、小豆島の「虫送り」

小豆島日記
vol.204

posted:2018.7.23   from:香川県小豆郡土庄町  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。

writer profile

Hikari Mimura

三村ひかり

みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
http://homemakers.jp/

虫よけと豊作を祈願する伝統行事

いやー、本当に暑い日が続きますね。
小豆島も灼熱の日々が続いています。
昼間の畑仕事は体への負担が大きすぎるため、最近は朝夕に外作業、
日中は屋内でできる作業をするようにしています。
というかほんとにこんなに暑い中で働くのはナンセンスなような気さえしてきます。
大人も夏休みをとるべきだなと!

7月中旬から急に暑くなったのですが、その前には小豆島でも雨がたくさん降りました。
幸いこちらでは大きな被害はありませんでしたが、
瀬戸内海周辺の地域ではたくさんの被害がでていて、
本当に本当にこの暑さの中での復旧作業、避難生活は
想像を絶するしんどさだと思います。

これ以上被害がでないように、どうかみなさん無理をなさらず。
そして少しでも早くいつもの生活が戻ってくることを願います。

この大雨と続く暑さのせいもあって、7月は振り返る間もなく
あっというまに日が過ぎてしまい、気づけば子どもたちは夏休みです。
日常がすごい勢いで流れてしまっている……。大切な日常をきちんと記しておかねば。
というわけで、今日書くのは7月上旬のできごとです。

この日は風が強く、稲が風になびく姿が美しかった。

この日は風が強く、稲が風になびく姿が美しかった。

こんなにもきれいな緑のじゅうたんが広がるのは、生産者さんの日頃の手入れのたまもの。

こんなにもきれいな緑のじゅうたんが広がるのは、生産者さんの日頃の手入れのたまもの。

7月は田んぼの力強い緑色がとても美しい季節です。
5月に植えられた稲はたくましく育ち、あっという間に地面が見えなくなり、
緑のじゅうたんが広がります。
毎年この季節に行われるのが、小豆島の伝統行事のひとつ「虫送り」です。

虫送り当日、子どもたちは肥土山離宮八幡神社に集合します。

虫送り当日、子どもたちは肥土山離宮八幡神社に集合します。

集合時間までみんなで遊ぶ風景もまたいい。

集合時間までみんなで遊ぶ風景もまたいい。

私たちが暮らしている小豆島・肥土山(ひとやま)地区では、
夏至から数えて11日目にあたる半夏生(はんげしょう)の日、7月2日頃に行われます。
ちなみに昔は夏至からこの半夏生の頃までに田植えをしていたそうで、
田植えが無事に終わったこの時期に、虫よけと豊作を祈願して
虫送りが行われるようになったそうです。

虫送りについての説明を聞く子どもたち。

虫送りについての説明を聞く子どもたち。

火手(ほて)と呼ばれるたいまつ。火を灯して歩きます。

火手(ほて)と呼ばれるたいまつ。火を灯して歩きます。

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中山地区の虫送りは中止に……

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小豆島に引っ越してきてから毎年かかさず参加してきた虫送り。
幼児園の年長さんの頃から参加しているいろは(娘)は、小学5年生になりました。
肥土山の虫送りは、地元の幼稚園生から小学6年生までの子たちが
火手(ほて)と呼ばれるたいまつを持って歩きます
(大人の方も火手を持って一緒に歩けるので、ぜひ参加してみてください)。

歩き始める前に、地元のお寺のおじゅっさんがお経を唱えます。

歩き始める前に、地元のお寺のおじゅっさんがお経を唱えます。

自分たちの順番を待つ子どもたち。

自分たちの順番を待つ子どもたち。

小学生の高学年になると、ひとりで火手を持って歩きます。
毎日の水泳で真っ黒に日焼けしたいろはが歩いているのを見ると、
ほんとにたくましくなったなと思います。
こんな景色の中で子ども時代を過ごせるのはすばらしいことだなと、
ここで暮らしていてよかったなと思います。

火手に火を灯し、列になって歩きます。

火手に火を灯し、列になって歩きます。

小さい子どもたちから順番に歩いていきます。

小さい子どもたちから順番に歩いていきます。

いよいよ虫送りに参加するのも来年が最後です。
中学生になると部活動などがあったりして参加するのが難しくなるというのもあり、
小学6年生が最後になります。
あ、私はカメラ持って来年も再来年も撮りに行っていると思いますが。

きゃっきゃっ言いながら、楽しそうに歩いていくいろは。

きゃっきゃっ言いながら、楽しそうに歩いていくいろは。

田んぼの間を歩いていくこの風景が本当に美しい。

田んぼの間を歩いていくこの風景が本当に美しい。

今年は大雨の影響もあり、7月の第1土曜日に開催予定だった
中山地区の虫送りは中止になってしまいました。
当たり前だと思っている風景は、実は当たり前にあるものではないんですよね。
このまま子どもの数が減ってしまったり、農業をする人が減ってしまえば、
田園の風景を維持することもできないし、
火手を持って歩く子どもたちがいなくなってしまいます。

連なる火手。

連なる火手。

最後は伝法川の河原に火手を投げ入れます。

最後は伝法川の河原に火手を投げ入れます。

来年の夏は、肥土山、中山地区両方の虫送りの風景が見られますように。
そして大雨の被害を受けてしまった地区に、
少しでもそれまでの日常が戻っていますように。
日常の暮らし、風景をあらためて大切に思い、過ごしたいなと思います。

information

map

HOMEMAKERS 

住所:香川県小豆郡土庄町肥土山甲466-1

営業時間:金曜、土曜のみ 11:00~17:00(L.O. 16:00)

http://homemakers.jp/

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