連載
posted:2016.7.18 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
http://homemakers.jp/
7月。私たちが暮らす小豆島・肥土山(ひとやま)では、
毎年この時期に行われる行事があります。
田んぼのあぜ道を火手(ほて)と呼ばれる松明をもって歩く「虫送り」です。
稲につく害虫を退治して、豊作を願う行事です。
江戸時代から続くと言われている小豆島の虫送りは、
いまは肥土山地区とお隣の中山地区で行われています。
中山地区の虫送りはしばらくの間途絶えていたそうですが、
2010年に映画『八日目の蝉』で虫送りが再現されたことをきっかけに、
2011年から再開されたそうです。
ちなみに昔は、中山、肥土山、黒岩と各集落を流れる
伝法川の下流に向かって村境から村境へと火がリレーされ、
最後は瀬戸内海に火手を流していたそう。
毎年、肥土山の虫送りは「半夏生(はんげしょう)」の日(7月2日頃)、
中山の虫送りは7月の第1土曜日に行われます。
今年は半夏生の日が7月1日、第1土曜日が7月2日で、2日連続して虫送りでした。
肥土山と中山の虫送りは、同じ虫送りでもだいぶ雰囲気が違います。
肥土山の虫送りは、比較的平坦な田んぼを歩きます。
火手を持つのは主に地元の子どもたちで、火手づくりも子ども会で行われたり、
各家庭でじいちゃんにつくってもらったりします。
一方、中山の虫送りは、急斜面にある棚田に沿った坂道を歩きます。
火手は役場や自治会の方々などが用意し、数があれば誰でも持って歩けます。
地元の人たちが続けてきた肥土山の虫送り、観光客の人でも参加しやすい中山の虫送り。
私はなんだかんだとほぼ毎年両方参加しています。
肥土山の虫送り。
火手を持って歩くのは今年で4回目です。
小学3年生までの子どもは保護者がついて一緒に歩くのですが、
いろは(娘)は今年3年生。
もう来年からはひとりで持つんだなあと思うとちょっとしみじみ。
この肥土山の虫送りでいつも感じるのは子どもたちの成長ぶり。
1年に一度、同じ道を並んで歩く。
小さい子から歳の順に並ぶのですが、自分の子だけでなく、
地元の子どもたちみんなの成長をひしひしと感じる日です。
毎年同じことを続けていくというのは、暮らしのなかにおいて
とても貴重なことだなと思います。
同じようであって、自分たちは歳を重ね、少しずつ環境が変化していく。
それを感じながら生きていける。
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そしてもうひとつ、中山の虫送り。
中山の田んぼはすごい急斜面にあります。
田んぼ沿いの坂道も急すぎて、歩いて登ると汗が吹き出ます。
こんな急斜面でひとつひとつの小さな田んぼを
よく維持できるなあとほんとにびっくりします。
だからこそ、ここでの虫送りの景色は壮大で美しい。
「とーもせ ともせー」と言いながら、
自分たちもその景色のひとつになり、坂道を降りていきます。
肥土山と中山の虫送り。
来年もこの暮らしの行事、風景が、続きますよう。
さて、この虫送りが終わると小豆島には本格的な夏がやってきます。
今年の夏は瀬戸内国際芸術祭も開催され、とても賑やかになりそうです。
そんな島の様子もお伝えできればと思います。
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