連載
posted:2015.5.11 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
http://homemakers.jp/
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撮影:竹中あゆみ(PHaT PHOTO)、小豆島カメラ
半年前から準備を進めてきた肥土山農村歌舞伎。
今年も5月3日に開催されました。
1週間前くらいからずっと気になっていた天気予報。
毎年ゴールデンウィークは暑いくらいのいい天気なので、
まぁ大丈夫かと思っていましたが、週間天気予報はずっと曇だったり雨だったり。
なんとか雨降らないでと祈っていましたが、
15時の開演直前にパラパラと降り出し、結局最後までやまず。
そんな天気の中で今年の歌舞伎は行われました。
時間はさかのぼり、開演12時間前、夜中の3時半。
まだ真っ暗な時間に、エプロンをつけて集会所へ。
肥土山自治会の中には6つの組があって、年ごとに順番に歌舞伎の担当をします。
毎年、歌舞伎に関わるスタッフや来賓の方々のお弁当は、
その年の担当の組の女性たちがつくります。
私はこのお弁当づくりに参加するのは初めて。
集会場へ着くと、おばちゃんたちの元気な声が響きわたっていて、
朝3時台とは思えないテンション(笑)。
さっそく私もその中に入り、まずは割子(わりご)弁当に入れる
突き飯(つきめし)づくり。
突き飯というのは、木でできた四角い型にご飯を入れ、
木の棒で突き固めてつくる四角い押し寿司みたいなもの。
ひとつのお弁当にふたつ突き飯を入れるので、300人分×2個で600個。
みんなでワイワイと話しながら、ひたすらトントンとつくります。
同時に天ぷらや玉子焼き煮しめなどのおかずもつくっていきます。
6時、みんなで朝ごはん。
おにぎりとたけのこの天ぷらをいただきます。
これから始まる1日を楽しみに、まだまだお弁当づくりは続きます。
おかずをお弁当につめ、夜の打ち上げ用のおにぎりと
串(おかずを串にさしたもの)もつくり、10時過ぎには完成。
軽トラに積んで、歌舞伎舞台へ移動です。
歌舞伎舞台では朝から会場の設営が始められており、
開演4時間前くらいからは役者の化粧や着付けが始まります。
本番の緊張感が漂い始めます。
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そして14時50分。
天気を考慮して、少し早めのスタート。
いよいよ始まりました。
開演と同時に、第三幕に出演するたくちゃん(夫)といろは(娘)も
化粧や着付けを開始。
いまでもこの時のことを思い出すと緊張してきます。
短いような長いような時間が過ぎ、17時。
出番です!
私は出演しないのに、舞台裏で緊張マックス。
たくちゃんが舞台に出て行って最初のセリフを言う前に
「今日は雨の中、たくさんの方にお越しいただいて……」
というアドリブを入れて、それに対してお客さんがわぁと拍手をしてくださって。
それだけですでにひとりで感極まってました(笑)。
その後、いろはも舞台へ。
ずっとハラハラしながら見ていましたが、
親が思うよりも子どもはずっとしっかりしていて、
大きな声でセリフを言い、一生懸命演技していました。
最後まで降り続いた雨。
それでも多くのお客さんが傘をさしながら最後まで見てくださり、とてもうれしかった。
この日のために半年近くかけて準備をしてきました。
そしてまた半年後には来年の準備が始まります。
こうして何百回も繰り返されてきた肥土山農村歌舞伎。
本当に素晴らしい伝統が残り続けている地域なんだなとあらためて感じた一日でした。
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