〈 この連載・企画は… 〉
毎月コロカル編集部からテーマを出し、
日本各地で活動している地域おこし協力隊の方から集まった写真とメッセージを紹介していきます。
その土地ならではのものだったり、自分の暮らしと変わらないものだったり……。
どんな暮らしをしてどんな景色を見ているのか、ちょっと覗いてみませんか?
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Kanta Suzuki, Chihiro Ogawa
鈴木寛太/小川ちひろ
まちの文化や伝統を守る活動は全国で行われていますが、
今回は伝統の担い手である次の世代に注目。
「踊り」をキーワードに小学生や高校生の活動を
岩手に住むみなさんに紹介してもらいました。
まちのお祭りはもちろん、
海外遠征まで行う彼らの活動の様子をぜひご覧あれ。
岩手県花巻市大迫町(おおはさままち)には、
約500年以上前から伝承されてきた
〈早池峰神楽(はやちねかぐら)〉という神楽があります。
昭和51年には、国の重要無形民俗文化財に指定され、
平成21年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。
その人気は世界中にファンがいるほどで、
毎年7月31日※に早池峰神社で行われる「早池峰神社例大祭宵宮」では
全国から数百名が神楽を観に集まり、熱狂に包まれるアツい夜となります。
※コロナの影響で2年間開催中止。
その神楽の伝承や学びの意味も込め、
県立大迫高等学校には平成28年1月より神楽の班(部活)が設立され、
今年5月の時点で1年生から3年生までの10名が所属。
月曜日から金曜日まで、週5日で練習に励んでいます。
周囲のまちの中学生のなかには、神楽班に入りたいからと
大迫高等学校を選んで入学するほどの人気ぶりだそうです。
伝統芸能の可能性を感じるとともに、
魅了される若者たちの熱い気持ちが伝わってきます。
近年では、令和3年度の〈岩手県高等学校総合文化祭郷土芸能発表会〉で
「優良賞」を受賞するなど、精力的に活動しています。
地域のなかで声がかかれば、イベントごとに出て舞うことも。
今後の活動も楽しみな高校生たちです。
information
一般社団法人花巻観光協会
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鈴木寛太 すずき・かんた
1991年東京都出身。2011年に発生した東日本大震災以降、大学のボランティアプログラムで、繰り返し岩手県を訪れるようになる。一度は就職するも、2015年8月、地域おこし協力隊として花巻市に移住。大迫(おおはさま)地区で、減少が続くぶどう農家の支援やイベントの企画・調整を行っており、2018年5月にぶどう農家となる。2021年4月から独立して、本格的にぶどうを生業として活動している。
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「シシオドリ」と聞くと、
赤いお面に緑の唐草模様の風呂敷をまとった
「獅子」を思い浮かべる人も多いはず。
岩手ではその地の生活を脅かす悪霊を
鎮める神の使いのことを「シシ」といい、
鹿の頭を被って勇壮に舞う代表的な踊りを 「シシオドリ」と呼んでいて
県の郷土芸能のひとつに数えられています。
県内ほぼ全域に伝わりさまざまな流派がある「シシオドリ」。
〈金津流梁川獅子躍〉は太鼓系鹿踊に分類され、
自らが囃子、歌、踊りの3つを行う特徴があり、
岩手県指定無形民俗文化財にも指定されています。
奥州市江刺梁川は当時伊達領で南部藩との藩境に位置します。
金津流獅子躍は宮城から伝わり、
本流を継承した〈金津流梁川獅子躍〉となって
約200年受け継がれています。
これまで大阪万国博覧会や東京オリンピックに出演、
海外遠征公演など、輝かしいステージを踏んできました。
昨今では踊り手が減少傾向にありますが
第十代目で中立の及川俊一さんが
〈金津流梁川こども獅子躍〉という団体で
地元のこどもたちに熱心に指導を続けています。
郷土芸能というと敷居が高く感じますが、
幼いみんなは及川さんのことを「師匠」と慕って仲間と楽しく、
一生懸命練習に励んでいる姿がとても印象的です。
これからも世界に誇れる郷土芸能を
みんなで未来へつなげていってほしいと思います。
information
金津流梁川こども獅子躍
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小川ちひろ おがわ・ちひろ
遊軍スタイルフリーコーディネーター。東京出身。オーストラリアや台湾での海外生活も経験する放浪人間。異なる文化や感覚を持つ「人」に興味を抱く。 転職を機に〈地域おこし協力隊〉の制度を活用して岩手へ移住。現在は遊軍スタイルのフリーコーディネーターとして、旅するように東北の暮らしを堪能中。フットワークの軽さとコミュニティの広さをいかして、人をつなげてケミカルな反応が起こる「場」や「間」を創り出すことを楽しんでいる。
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