函館市〈街角NEWCULTURE〉
地域の人がチャレンジできる、
複合ポップアップ施設ができるまで
富樫雅行建築設計事務所 vol.10
函館市で設計事務所を営みながら、建築施工や不動産賃貸、
ポップアップスペースやシェアキッチンの運営など、
幅広い手法で地域に関わる〈富樫雅行建築設計事務所〉の富樫雅行さんによる連載です。
最終回は、複合ポップアップ施設〈街角NEWCULTURE〉の後編です。
舞台は築90年を超える旧商店の店舗(旧昆布館)と
焼き肉店(キングオブキングス、以下オブキン)がくっついた建物。
前編では、基礎的な工事からポップアップストアについてお伝えしました。
後編では、チャレンジショップやオフィス、喫茶やバーなどが集まる
複合施設の完成に向けて、少しずつ歩んでいくプロセスをお届けします。
〈カルチャーセンター臥牛館〉を手放す決断
インターン生の企画から生まれた、4日間にわたるポップアップストアは
大成功に終わりました。その4日間を踏襲(とうしゅう)するかたちで、
建物の一部にはいろんな人がチャレンジできるポップアップストア用のスペースを常設し、
建物名も〈街角NEWCULTURE〉と命名しました。

旧昆布館は街角NEWCULTUREと名前をあらため、11月までの間、無料のポップアップを始めた。9月に開催したマルシェでのコンサートの様子。

テナント入居後、2階エントランスに扉を新設。正面と左側の2か所に設置した。
そんな2021年9月末のある日、臥牛館1階で〈学童クラブ ひのてん〉を営む
〈ヒトココチ〉代表の曽我直人さんから相談を受けました。
家賃がかさむので、いっそ1軒家を買って移転しようか検討しているというお話でした。
大家にとっては悲劇の瞬間です。
通常であれば、家賃を安くするか、新たな入居者を募集するでしょう。
ところが赤字の段階でさらなる値引きは死活問題であり、
なにより地域にとって子どもたちの元気な声はかけがえのない財産であり、失いたくない。

カルチャーセンター臥牛館。左側が〈ひのてん〉の入り口。
振り返ると、僕が地元の老舗エネルギー会社〈池見石油店〉の社長さんから
「臥牛館を買わないか」と言われたとき、
「ひのてんさんがビルを買えば、家賃がかからなくなるうえ、
家賃収入で上手く回していけるので、まずは相談してみてください」と
頼んだことを思い出しました。
まだ臥牛館の投資分を回収しきる前で、かなり厳しい判断ではありましたが、
このまちには子どもの存在が必要だと思い、あらためて聞いてみました。
「ほかで探すのであれば、このビルを買いませんか?」と。
曽我さんもこのビルに愛着があり、前向きに検討してくれることになりました。
池見さんも利益をかえりみず僕にこのビルを譲渡したように、
僕も譲歩しお互いを信頼しながら、不動産屋さんを挟まずに売買することで、
11月にビルの譲渡が決まりました。
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