日南市〈PAAK HOTEL 犀〉後編
設計事務所が営む古民家宿で、
地域ならではの体験を
PAAK DESIGN vol.9
宮崎県日南市で建築デザイン、宿泊や物販など、幅広い手法で地域に関わる、
〈PAAK DESIGN株式会社〉鬼束準三さんの連載です。
築100年の日本中どこにでもあるような、しかし徐々になくなりつつある古民家を
リノベーションし、宿として自社で運営を行うまでのお話です。
前編のハード部分の設計・改修に続き、後編では、
オペレーションの構築から、地域の宿としての満足度向上を狙った
ソフトコンテンツのデザインについてご紹介します。
まちに開いた場所にしたい
2017年4月、パークデザインを立ち上げ、飫肥城下町に事務所を構えて
間もない頃にこの物件と出合いました。
当時はまだ古民家の活用方法や改修方法など何も習得できていなかったのですが、
せっかく歴史ある飫肥城下町に事務所を構えたのだから、
自分でも何かまちの風景を残すプロジェクトにしてみたいなと思い、
勢いあまって6月には購入してしまいました。
敷地面積が181.81平米(55坪)、床面積が109.74平米(33坪)と
飫肥エリアにある古民家のなかでも現代の住宅規模に近い小ぶりな建物で、
自分でもなにかできそうだと感じたのも取得した理由のひとつです。
最初は住宅とするアイデアが浮かんだのですが、
あくまで住宅はプライベートなものなので、いろいろな人に使ってもらえる
「まちに開いた」拠点の方がいいのではないかと考えました。

既存の床の間の様子。表面上の痛みは少なかったが、床については大規模に補強し直した。
どんな事業をやるか妄想する
私は建築デザインという職業柄、空間もさることながら、
そのなかで起きることに想像をめぐらせるのが得意であり、
いろんなパターンをシュミレーションしました。
例えば、住宅として改装して賃貸にする場合。
外装の自己負担分(一部は文化庁の補助金を活用)と内装費を合わせると
概算で1500万円かかることを踏まえ、賃料を算出すると7~8万円になりそうでした。
33坪から27坪に減築する予定もあり、住宅として貸す場合は
地域の相場からすると少し小さい割に高くなります。
オフィスとするなら賃料は適正ですが、古民家ということもあって
使えるスペースが少なく使い勝手もあまり良くなさそう。
カフェやバーなどの飲食店も考えましたが、駐車場を多く確保できない敷地で、
エリア的にも閑静な住宅街だったためあまりイメージができませんでした。
そこで浮かんだのが、1棟貸しの宿です。
駐車場がたくさん確保できなくても、繁華街から離れてポツンとあっても、
賃料同等以上の収益が確保できる可能性があり、僕らの強みである
「空間デザイン」で勝負できる。こうして「宿泊事業」にたどり着きました。
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