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株式会社建大工房 vol.5
福井に、廃材ホームセンター
〈CRAFTWORK CENTER〉
ができるまで

リノベのススメ
vol.142

posted:2017.3.25  from:福井県福井市  genre:活性化と創生 / アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  地方都市には数多く、使われなくなった家や店があって、
そうした建物をカスタマイズして、なにかを始める人々がいます。
日本各地から、物件を手がけたその人自身が綴る、リノベーションの可能性。

writer profile

Kendai Demizu

出水建大

株式会社建大工房代表取締役。福井市出身。2009年に仲間とともに〈FLAT〉プロジェクトを立ち上げ福井市内の廃ビルを再生。現在は160坪の廃工場をリノベーション中。廃材STORE&DIYスペースとして〈CRAFTWORK&Co.〉をオープン予定。

株式会社建大工房 vol.5

ホームセンターが大好きです。
僕にとってはちょっとしたアミューズメントパークだと思っています。
もしホームセンター内に宿泊施設が併設されている所があったら間違いなく通います。
そして、「ホームセンター」という言葉は、
軽い力で開けられるものづくりの扉だと思っています。

今回はそんな僕が長年かけてコツコツつくってきた
廃材オンリーの自分のホームセンターの話です。
とは言え、実は今でもまだつくっている途中ですが、
必要な部分だけ完成したら、〈CRAFTWORK CENTER〉として4月中旬にオープンさせて、
それからもつくりながらしばらくは週末だけ営業していきます!

なぜホームセンター?

結婚してから中古の家を探しているときもホームセンターが近くにあるかが決め手だったので
家から車で3分の距離内にホームセンターが2軒もあります。ほぼ毎日行きます。
なんなら1日に数回行きます。(単に買い忘れが多いだけですが)
休みの日は家族でもよく行きます。何時間でもいられます。
僕がもしスタッフだったら相当売り上げる自信もあります。

そんな大好きな場所ですが、福井のホームセンターには、
機能的に必要なものは大体ありますが、
デザイン的にはまだまだ需要を満たしていません。最近は、店舗はもちろん、
住宅建築でも金物や照明、衛生器具、棚板にいたるまでが輸入品や一点ものなど、
こだわってつくる人が増えてきたので、雑貨屋さんで買うか
結局はネットで買うことになります。

そういうものを選ぶときに専門的な知識が必要なときもあります。
DIYでもどんどんマニアックな道具や商品の使い方も増えてきて、
ホームセンターでも実際に現場の知識があるスタッフも
まだまだ少ないのでアドバイスにも限界はあります。

職人なら当然知っているようなことでも、
DIYとなると基本、独学なのでいろいろな失敗もします。
あと、もちろん古材や中古の商品なども普通のホームセンターには売っていません。

「もっと個性的な商品を揃えているホームセンターがあっていいんじゃないか?」

「もっと建築や現場に寄せたものづくりの場所があっても」

ということで、僕の思いはどんどん膨らんでいき、
いつしか「欲しいものが揃っている自分のホームセンターを持ちたい!」
に変わっていきました。2013年頃のことです。

そんな矢先、テレビでオレゴン州ポートランドの建築建材のリサイクルショップ
〈リビルディングセンター〉の存在を知りました。

廃材をうまく流通させている取り組みです。これなら資本もそこまでかけずにできる!
その後、シリコンバレーから始まり、現在では
全米8か所にある、本格的な工作機器を備えるDIY工房〈TechShop〉などの存在も知り、
専門的なものづくりが誰でも身近にできる場所があることが斬新で、
なによりも楽しそうでした。

それらすべてに全部行ける機会が突然訪れたのが、この連載の第2回でも書きましたが、
2014年に黒崎輝男氏に連れていってもらった全米ツアーでした。

ずっと行きたかった、ポートランドのリビルディングセンター。

日本ではあまり考えられないけど、中古の浴槽や便器までたくさん。

サンフランシスコのTechShop。今はもう日本にもこういった場所は増えたが、当時はまだまだ目新しかった。木工、鉄工、布、皮、すべての道具も揃っているし、最新の3Dプリンターが何台も。

このリノベのススメでも散々書き綴ってきましたが、
DIYが好きで廃材が好き、そしてホームセンターが好き。
それを全部ひっくるめた場所をつくりたい。
その一角にはもちろん人が集まれるカフェもあって。
今まで経験してきたこと、自分の好きなこと、アメリカや各地で行われていること、
これから日本でも始まろうとしていること。
そしてそれらを、粛々とものづくりの精神が根づくこの北陸の福井でやること。
アメリカの旅ですべてが一気につながり、帰ってきて確信にかわりました。
ただ唯一見つかってないのがそれらをお金に換える方法でしたが……。

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お金はないけど……

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貯まるのはお金ではなくゴミばかり

ホームセンターと言えば広い駐車場に巨大な建物ですが、
もちろんそんなお金もないので、場所はなんとなく以前から目をつけていた、
それもまた家から3分のところの160坪のボロボロの廃工場。
福井市の中心地からは車で15分程度ですが、
それでも田舎のはずれなので駐車場は必要で土地は350坪あって1500万円。
該当する補助金などもなく、有り金すべてはたいて、あとは借金で無理やり購入。
それがアメリカから帰ってきて1年後の2015年春でした。

購入時。もともとは繊維会社の倉庫で、欲を言えばもっと天井の高さがほしかった。

ご覧の通りハコがでかいだけに、そこからは資金不足で工事はなかなか進まず、
日々の仕事に追われて廃材まがいのゴミだけがどんどん貯まる一方で……。

倉庫部分は幅15メートル、奥行27メートル。最初は全面に天井が貼ってあり、400平米分を解体して処分するだけでもかなりの出費。

そんななかでも、できればアメリカとかの現地の廃材も欲しいのと、
まだまだいろいろと吸収したいと思っていたので、また仲間たちとポートランドへ。
そこで泊まっていたACEホテルで偶然にも新婚旅行中の
〈medicala〉の東野唯史さん・華南子さん夫妻(リノベのススメでも登場)
と〈オギーソニック〉の原田康平さんと遭遇。

2015年夏、ACE HOTELにて。FLATのメンバーと東野くんたち。

僕が資金不足でマイペースでやっているなか、
スーパースターである東野くんは
クラウドファンディングで資金を集め着々と次の年(2016年)に
〈REBUILDING CENTER JAPAN〉を長野にオープン。
正直、「うわ~やられた~!」とも思いましたが、
もちろん僕がやりたいこととも違いますし、もともと東野くんの廃材に対する思いや
それをレスキューと称して生かそうとする志の高さ、
きめ細やかなデザインには愛が詰まっていてほんとカッコいいです。
これからは東野くんのようなスタープレイヤーが活躍することで、
各地域でもどんどん廃材が流通する仕組みが、広まっていく可能性を感じました。

こうしている間にも味のある良質な古材や廃材はじゃんじゃん捨てられています。
僕も一刻も早く場所をつくってそれらを“レスキュー”しないと。

廃工場をリノベーション

解体して出てきた見事な天井の鉄骨のトラス梁。間仕切り面や床にはもらってきた桐の板を。

まずもとあった天井を解体して出てきたのは15メートルも飛ばした大きな鉄骨のトラス梁。
区切るのはもったいなかったのですが、廃材売り場、作業場、飲食スペースと、
大きく3つのセクションに分ける必要がありました。
加えて、僕の建築事務所は手前のRCの部分に。
そこにはシャワー室もつくるので作業してホコリまみれになっても大丈夫。

そしてちょうどいいタイミングで、近所の大きな建具メーカーの工場で、
廃盤になった商品の材料が廃棄されるという話を聞いて、
大量に「桐」の集成材などをもらえました。

見た目は新品ですが立派な廃材です。
エアコンも撤去してきた大型のものを安く譲ってもらいました。
基本的に材料の仕入れは自分の現場のゴミですが、
解体屋さんに譲ってもらったり、
あとは骨董品屋さんにはお店には並ばないけど、
捨てるには惜しいという在庫がたくさんあるみたいで、
そういうものを委託販売みたいに破格で置いたりします。

事務所になる場所は天井までRC造。

作業スペースになるところ。木工はもちろん、簡単な鉄の溶接などもできる設備も。

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廃材の魅力とは……

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「ゴミ」からひとつの「素材」へ

廃材を販売するホームセンターと言っても、
リサイクルショップや骨董屋さんと何が違うんだ? と聞かれます。
解体や運搬などでコストはかかっているのでタダというわけにはいきませんが、
基本的に僕はあまり廃材を商品としては大した金額で売ろうとは思っていません。

なぜなら、ひと目で価値のわかるものならわざわざ僕が集めなくても勝手に流通しますし、
もちろん僕なりのフィルターを通しての選別はありますが、
基本的に僕が扱うのはホントに「ゴミ」だからです。
リサイクルショップにも骨董屋さんにも引き取ってもらえない不良品や不用品、破損品。

あとはいわゆる、「社会的劣化」という、ものとしてはちゃんとしているけど、
もう時代遅れになってしまって
一般的には誰も使わなくなってしまったものや、デッドストックものなど。

それ単品では使えるように見えないけど、ひとつの「素材」に見立てて、
ほかの材料と組み合わせてアート作品にするなどの需要をつくる。
そのアイデアや手法を伝える場所としても生かしていきたい。

ニューヨークで訪れた、ギャラリー内の廃材アートカフェ。

海外に住んでいた時やポートランドに行くようになって
学んでいったのはそういったアイデアや魅せ方。

たしかに日本のものづくりは緻密で正確で美しい。
住宅に関して言えば今では、安い建売ですら1ミリ2ミリまでこだわって
ちゃんとつくってあります。
それに対してアメリカの場合はもともと引っ越す文化だからか、
中古の住宅を直しながら使っているので少々傾いていようが隙間があろうが気にせずに、
そのかわりにまち並みとのバランスや個性を大事にしているイメージ。
特にDIY精神の高いポートランドではそんなライフスタイルがゴロゴロしています。

北陸の緻密なものづくり精神に反しているじゃないか!
という意見もあるかもしれませんが、
僕がやりたいと思っているのはその立派なものづくりへのきっかけになる扉のような場所。
そもそもDIYで素人が大工かぶれみたいなことをしているのを
良く思っていない職人さんもいます。でもこれだけ職人不足が騒がれる今の時代、
ちゃんと教育された職人も減って、機械が簡単にものをつくってしまいます。

外観を家族でペンキ塗り。

目の前にある限られたもので常に遊びをクリエイトしている子どもたちを見ていたり、
毎回いろんなワークショップを開催したり参加していて思うのは、
つくる楽しさを味わえる場所を探している人はまだまだいるし、
きっかけや伝える場所や人も必要だってこと。

それが本来は学校や職場とかなのでしょうけど、もっと遊びの延長であってもいいし、
気軽でいい加減なものであってもいいと思います。
建築という得体の知れないものの敷居を下げるきっかけになればいいと。

そして腕のいい職人はそれを笑ったり、技術を盗まれると思うよりもまずは、
つくる楽しさを教えてあげるところから入っていけば、
もしかしたらそこから将来の職人の卵が生まれる可能性があるかもしれません。
逆にそこで熟練度の高いテクニックを見せることで職人の本当のすごさを伝えられたり、
自身の戒めや再確認にもなります。
もともとDIYでつくるものは他人が評価するものでもないし、
DIYをやればやるほど職人の価値も理解できて、
ちゃんと納得して対価を払えるようになったりする場合もあります。

もし素人のDIYに仕事をもっていかれるような程度の技術や仕事なら
そもそも将来なくなっていくでしょうし。そうやってまったく違う角度で見られる人たちが、
もしかしたら北陸の伝統工芸とか、ちゃんとしたものづくりの世界でも新しい風を起こし、
新しい仕事が生まれるかもしれません。
この場所単体ではまだまだお金は生まれないかもしれませんが
きっといろいろなモノやヒトが交流していって、
その先に新しい仕事やものづくりの種になる場所になると信じています。

さあ、いよいよ長年の夢だった場所も大詰めです。あと少し頑張ります!
次回は完成した〈CRAFTWORK CENTER〉の紹介をしたいと思います。

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