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神戸と淡路島を自由に行き来し、
働き、遊ぶ。
〈島&都市デュアル〉な暮らし方 

ローカルの暮らしと移住
vol.021

posted:2018.3.29   from:兵庫県神戸市・洲本市  genre:暮らしと移住

PR 神戸市・芦屋市・淡路市・洲本市

〈 この連載・企画は… 〉  ローカルで暮らすことや移住することを選択し、独自のライフスタイルを切り開いている人がいます。
地域で暮らすことで見えてくる、日本のローカルのおもしろさと上質な生活について。

writer profile

Azusa Shimokawa

下川あづ紗

しもかわ・あづさ●兵庫県生まれ。ライター/編集者。雑誌や書籍、ウェブを中心に、ファッション、インテリア、ライフスタイルなどに関する記事を執筆中。2014年に地元である神戸に帰郷し、夫と息子、犬1匹と古民家暮らしを満喫中。出没エリアは神戸&阪神間、京都など。

credit

撮影:松井ヒロシ

“まちで働き、島で遊ぶ”というライフスタイル

昨年10月に発足した、兵庫県神戸市・芦屋市・淡路市・洲本市の
4市合同による移住促進プロジェクト〈島&都市デュアル〉。

都市の文化が味わえる「都市エリア(神戸市・芦屋市)」と、
自然の豊かさを体験できる「島エリア(淡路市・洲本市)」を
ひとつの生活圏として捉え、明石海峡大橋を渡ることで
それらを短時間で自由に行き来できるという
“都市と田舎のいいとこどり=デュアルな暮らし”を提案しています。

また、プロジェクト発足と同時にWEBサイト
『島&都市デュアル 暮らしツアーズ』もオープン。
プロジェクトに参加する市民の方々が「暮らしナビゲーター」となり、
地域の魅力やデュアルライフを実践している人の紹介する記事を制作したり、
“いいとこどり”な暮らしを体感できるユニークな旅のプランを企画しています。

大手通販会社〈フェリシモ〉で働く徳重正恵さんは、
平日はオフィスのある神戸市中央区を中心に生活、週末になると淡路島へ出向き、
イベントに参加したり仲間たちと手芸活動を行ったりとアクティブに活躍。
島&都市デュアルが提唱する“まちで働き、島で遊ぶ”暮らしを
リアルに実践しているひとりです。

女性向けカジュアルブランド〈haco!〉事業部で商品の生産管理を担当する傍ら、
昨年設立された財団〈PEACE BY PEACE COTTON〉の理事も兼任する徳重さん。

PEACE BY PEACE COTTONは、2008年にフェリシモから生まれた
循環型プロジェクト。
インド産オーガニックコットン製品に基金をつけて販売し、
その基金を活用してインドの綿農家の有機農法への転換支援や
子どもたちの就学・奨学支援を行うという取り組みです。

〈haco!〉で展開する新作サンダルのサンプルチェック。バックルの位置やヒールの高さ、中敷きのクッション性、履いたときのフィット感などを細かく確認します。

2015年からはサブプロジェクト〈STITCH BY STITCH PROJECT〉もスタート。
閑散期の農家の生活向上や女性の自立支援のために、
刺繍アーティスト二宮佐和子さん協力のもと、
インドの農村の女性たちに刺繍の技術を教える活動を行なっているそう。

「指導書や手紙を通じてステッチのコツを細かく指導しています。
刺繍などの付加価値の高い製品加工を村で行えるようにすることで、
彼女たちのお仕事が増えて、少しずつでも収入や生活、そして技術の向上につながり、
彼女たち自身で新たな未来をつくっていけるように支援することを目指しています。
彼女たちが手刺繍を施した商品は、インドでの刺繍のようすを伝えながら、
定期的にhaco!で販売をしています」

〈PEACE BY PEACE COTTON〉のサブプロジェクト〈STITCH BY STITCH PROJECT〉から生まれたアイテム。刺繍アーティスト二宮佐和子さんのデザインをもとに、インドの村に暮らす女の子たちが色鮮やかな刺繍を施したもの。3月末からhaco!で販売開始

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淡路島で活動する「女子部」とは?

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縫い物を通じて結ばれた島の人たちとの絆

徳重さんが淡路島のまちや人と深く関わるきっかけとなったのが、
あるひとつのイベントでした。

「2009年に淡路島のNPO法人〈淡路島アートセンター〉や
〈島&都市デュアル編集部暮らしナビゲーター〉のリーダーを務めている
富田祐介さんらが中心となり、元紡績工場の赤レンガ倉庫で
キャンドルを使ったイベントを行いました。

私はボランティアスタッフとして参加したのですが、準備中からイベント、
打ち上げまで、参加している人たちが楽しむことにとにかく本気で(笑)。
大人が全力で遊ぶと、こんなにおもしろいことができるんだ! 
と衝撃を受けたのを覚えています」

その後、富田さんからの誘いを受け、以前コロカルでも紹介した
〈淡路はたらくカタチ研究島〉に参加。

「もともと観光に興味があったので、より個人のニーズを満たせるような、
地元の人だからこそ案内できる場所を発信したいなと思って
『ツアー販売をする研究会』や
『淡路島の魅力を育てるエディター研究会』に参加しました。

活動するなかで淡路島の魅力あふれる人や食べもの、豊かな自然、
そして不思議な居心地の良さにハマってしまい、気づけばどっぷり。
この心地よさを多くの人に体感してほしい、たくさんの友だちを
島へ連れて行きたい! と思うきっかけにもなりました」と振り返ります。

そんななか、現在の活動につながる運命の出会いが訪れます。

「キャンドルイベントや淡路はたらくカタチ研究島を通じて親しくなった
淡路島アートセンター主宰のやまぐちくにこさんから、
ピクニックイベント用に布を使って3畳分ほどの
大きなレジャーシートをつくってくれないかと頼まれて。
ばぁばん(やまぐちさんのお母さんである西岡栄子さん)たちと一緒に
つくることになったんです」

職業柄、たくさんのかわいい布やパーツをストックしているけれど、
自ら制作することはほとんどなかった徳重さん、
お裁縫が大好きで常に新しいものをつくりたくてウズウズしている
島のお母さんたちによる強力タッグで、レジャーシートは無事に完成。
その後も徳重さんが布やパーツ、パターンを提供し、
ばぁばんたちがつくるという関係が続きます。

そのうち噂を耳にした島内の手芸好きが集まり始め、
閉店する島の手芸店から大量の余り布を提供してもらえるなど、規模が徐々に拡大。
手芸グループ〈淡路島女子部〉を結成するまでに。

現在は島のイベントやお祭りの装飾を担当したり、
淡路島のマーケットやショップで商品を販売したり、
時には日本全国の作家さんから生産の依頼を受けたりと、活動も多岐にわたります。

毎月第4日曜日に開催される〈AWAJISHIMA Sodatete Market〉。〈淡路島女子部〉も毎月出店し、布小物の販売や子ども向けの手芸ワークショップを開催しています。

淡路島女子部が手がけた布小物。スタイに施された愛らしい鳥の刺繍は徳重さんの友人にデザインを依頼したもの。

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淡路島での活動で何が変わった?

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島での経験を、まちでの仕事に生かす

徳重さんに、淡路島女子部に参加してからの自身の変化をうかがうと、
「仕事に対して、いい意味で諦めが悪くなったかも」との答えが。

「島でイチからものづくりをする人たちにたくさん出会って、
諦めず追求し続けることの大切さを学びました。
一度失敗しても『じゃあこういう方法はどうだろう?」と
いろんな角度から試せるようになりました。

ほかにも、企画している服や小物に手作業でしかできない
細かなステッチや刺繍をつけたいなと考えたとき、
これまでは『工場生産では難しいか……』と諦めていたけれど、
いまなら『これ、女子部でならできるかも!』と思えるようになって。
私もアイデアの幅がぐっと広がったし、制作を通じて島のみんなに
おもしろい素材やデザインを楽しんでもらう時間を還元できたらうれしいなぁって」

淡路島女子部メンバーの森田恵さんは、手ぬぐいにたぬきの刺繍を。4月29日の洲本八幡神社の春まつりで、みんなで首や頭に巻いて使用するそう。

この日は商店街にあるインポートセレクトショップの新店に並べる商品の打ち合わせ。ばぁばんがベトナムで購入した民族柄の布を手に「ポーチは?」「ヘアバンドは?」「派手めの日傘もかわいいかも!」と、新しいアイデアがポンポン飛び出します。

仕事で何かひらめいたときは、真っ先に女子部のメンバーに相談をするという徳重さん。
淡路島で培った技術や人脈を持ち帰り、神戸の仕事に生かす。
神戸で得た仕事を淡路島で実践する。
徳重さんを軸に、神戸と淡路島の間にささやかな、
けれども確実に新しい動きが生まれているように感じます。

2016年に立ち上がった淡路島に暮らすデザイナー・あまづづみまなみさん、染織家・山下絵里さん、洋裁好き女子たちが手がける〈島のふくプロジェクト〉。徳重さんたち淡路島女子部も、スタッフとして制作に携わっています。

女子部の活動日は不定期。「しげちゃんが来るらしいよという情報が回ってきて、じゃあ集まって何かつくろうかって。ゆるい活動なんです」とメンバーは笑います。主要メンバーは徳重さん、ばぁばんを含めて5名ほど。その時々で男子が混ざっていたり、10名以上の大所帯になることも。過去には1週間で1500枚ものバッグをみんなで縫ったこともあるそう!

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女子部行きつけのお店へ

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人やまちのあたたかさに触れて、
週1ペースで通うほどの淡路っ子に

「週末おしげ」の異名を持つほど、休みのほとんどを淡路島で過ごしている徳重さん。
「イベントに参加したり、淡路島女子部で活動したり、島外の人を案内していたり。
予定もなく、ふらっと飲みに来るだけの日も」

洲本市のメインストリート〈コモード56商店街〉にある〈スタンダー堂〉は、徳重さんたち淡路島女子部行きつけの一軒。

旬を迎えたばかりの新子の釜揚げや朝獲れ鮮魚のカルパッチョ、由良産のたことキノコのアヒージョなど、淡路島の美味が並びます。

時には、平日の就業後に淡路島へ向かうこともあるというから驚きです。

「島に行くと誰かしら声をかけてくれたり、相手をしてくれる人がいて。
ばぁばんは、温かいごはんと布団を用意して待っていてくれていて、
淡路島は第二のふるさとのような場所です。
島のみんなとゆっくりごはんを食べて、飲んで語らって、
そうしているうちに自然と輪が広がって……。そんな関係性が心地いいんです」

女子部メンバーで乾杯。その後も「しげちゃんが来ているらしい」と聞きつけた島の友人たちが続々とお店に現れました。

また「神戸と淡路島の距離感」について、こんな印象的な話も。

「神戸と淡路島は高速バスで1時間半ほど。
本を読んだり、海をぼーっと眺めたり、自分だけの自由な時間を満喫しています。
時には移動時間ならではの“ゆったりと考える時間”にもなったりします。
もともと切り替え下手だったのですが、この時間を持つようになってから
大切なことに立ち返り、リセットしてみることができるようになった気がしていて。
睡眠時間を削ってでも淡路島に行きたい! と思うのは、
この“リセット時間”を求めて、というところもあるのかもしれません」

都市で働き、島で遊ぶ。ふたつのまちを自由に行き来しながら互いの魅力を享受し、
得た刺激を持ち帰って次の力に変えて……。

“デュアルな暮らし”を体現している徳重さんのメリハリの利いた暮らしぶりには、
移住や2拠点生活について、学びたいヒントがたくさんありました。

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