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実りの秋と森のようちえん

森のまち智頭町子育て日記
vol.007

posted:2015.11.5  from:鳥取県八頭郡智頭町  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  鳥取県南東部に位置する八頭郡智頭町。
森林に囲まれたこの小さなまちに、家族4人で移り住んだ一家がいます。
このまちで、どんな風に子どもたちが育っていくのか。普通の母親の目線から、その日常を綴ります。

writer profile

Aya Tanaka

田中亜矢

たなか・あや●横浜市生まれ。2013年東京から広島・尾道へ、2015年鳥取・智頭町へ家族で移住。ふたりの子ども(3歳違いの姉弟)を育てながら、マイペースに音楽活動も続けている。シンガーソングライターとしてこれまで2枚のソロアルバムをリリース、またバンド〈図書館〉でも、2015年7月に2枚目のアルバムをリリース。
http://ayatanaka.exblog.jp/

イベント盛りだくさんの秋

「おかあさん、おのみちで◯◯したよねぇ。たのしかったよねぇ」
4歳の娘は、智頭に来る前に住んでいた尾道のことを、
ふと思い出して話し始めることがよくある。
私が「そっかー、尾道が好きだったんだねぇ」と言うと、
「うん。でもちづもすきだよ!」と屈託のない表情で答える。
森のようちえんの友だちがいるから。というのが主な理由らしい。

そう、智頭に来てから半年、家族の誰よりも環境に順応し、
毎日をはつらつと過ごしているのは、間違いなく娘だと思う。
最初の頃は、ようちえんでみんなと一緒にいても、
ひとりで行動することが大半だったようだし、
周りがあまり見えていないようなところもあったけど、
最近では、友だちと関わりながら遊ぶことが増えてきて、
困っている子がいると助けに行くようなところもでてきた。

わたしが夏から仕事を始め、お迎えの時間が遅くなったことで
寂しがるかな? と最初は心配したのだけど、
毎日一番最後にお迎えに行っても、落ち着いた様子で待っている。
きっと、彼女にとって、ようちえんが心地よい居場所になったのだな。
「満たされている」という言葉がぴったりな表情を見ながら、
しみじみと思うのであった。

森のようちえんの拠点となっている古民家〈まるたんぼうハウス〉。夕方まで預かり保育の子は、ここでお迎えを待つ。

柿の木に登って得意気。

まるたんぼうハウスから見た夕暮れの空。

ある日のおみやげは、まるたんぼうハウスの近くで採ったイチジク。

秋はようちえん関連のイベントも盛りだくさんで
日々わくわくしながら過ごしている娘を見るのが楽しみでもあった。

秋の入口の快晴の日は、年少組の家族が集うデイキャンプ。
智頭町のお隣、用瀬町の河原にて、バーベキューをしながらのんびり。
お友だちのお父さんがカヌーを持ってきてくださり、子どもたちを順番に乗せてくれた。
水面を滑るように進むカヌーの気持ちよさそうだったこと!
最初は怖がっていた娘も、一度乗ってみたら相当楽しかったようで
満面の笑みで降りてきた。
そのうち友だちと一緒に服を脱いで水に入り始め、
(日差しは強かったけれど、水は冷たい!)
唇がすっかり紫色になるまで出てこなかった。

心地よい河原でのデイキャンプ。

お友だちのお父さんが持ってきてくれたカヌーが大人気。

服を脱いで冷たい水に入り始めた子どもたち。

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遠足は、鳥取といえば…

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10月のはじめ、ようちえんの畑でのさつまいも掘りは、
掘った芋をどうやって食べるか、みんなで意見を出し合って決めたらしい。
話し合いの結果、芋団子と天ぷら作り、
さらに芋の早食い競争もする“ハロウィンまつり”が
親も招待して開催された(私は仕事で行けなかったけれど)。
まつりの前日には、子どもたち自身が招待状をつくったり、準備に精を出していて
娘も張り切って描いた何枚もの(笑)招待状を私にくれた。
お芋を収穫した日に、「土がついたまましばらくおいておくと甘くなるんだって~」
とうれしそうに言っていたのが印象的だった。

10月半ばには砂丘遠足。
みんなで歩いて大砂丘を超えて、海まで行って来たそうだ。
鳥取といえば……の砂丘だけれど、智頭に来て初めて砂丘を訪れたときは、
予想を超えるそのスケールの大きさに驚いた。
大砂丘を登るのは大人でもちょっと息が上がるくらいだし、娘も前に行ったときは
「抱っこ~!」となっていたけど、今回はちゃんと歩いたんだね。
とはいえ、超マイペースな彼女は、友だちとじゃれあいながら、
帰りのバスに乗り遅れそうなほどゆっくり歩いていたそうだけど。

春に訪れたときの砂丘。大砂丘はかなりの急斜面。

登山で起きたちょっとした出来事

10月の終わりには、年間の一大イベントでもある那岐山登山。
那岐山は、智頭町(鳥取)と奈義町(岡山)の境にある、標高1255メートルの山だ。
年少・年中・年長と少しずつ目標地点を上げていき、年長になると山頂まで登る。
娘のいる年少組は、普通に歩くと1時間ほどの地点にある広場が目的地。
歩くペースは子どもたち自身にまかされているため、
行きはなんと4時間かけて(!)登り、帰りは1時間で下りてきたそうだ。
朝10時に登りはじめ、下山したのは夕方4時。
疲れた年少さんたち、帰り道ではケンカも頻発していた様子だけれど、
こうやって少しずつ体力をつけて、
2年後には山頂まで登れるようになるんだなぁ、と思うと
これからの成長に私自身もわくわくしてくる。

こんな風にして、さまざまなイベントや日々の活動を経て
娘の表情に、最近ぐっと充実感が増している気がする。
森のようちえん・まるたんぼうでは、あらゆることが子どもたち自身にまかされていて、
それが充実感につながっているのかな、とも思う。

朝の集合場所、大きな水たまりではしゃぐ子どもたち。

那岐山でのこんなエピソードを、スタッフが教えてくれた。
みんなで歩いているときに、Sくんが木の枝でほかの子たちを
攻撃するようなことを、頻繁にやっていたらしい。
それで、それについてみんながどう思うか、話し合いをもうけた。
大半の子は、Sくんがいけない、という意見を出したそうだけど、
ただひとり、娘だけが「Sくんは悪くない」ときっぱり言ったそうだ。
「みんながSくんにパンチしたりするからだ」と。
ことの真偽はわからないけれど、それを聞いて私は、へえー、と感心した。
もちろん木の枝で人を攻撃するのはいいことではないけれど、
Sくんもなにか理由があるからしているんだよね。
物事にはいろんな側面があって、娘がそういう視点を持っていたということ、
そしてスタッフが大人の物差しで「いい・悪い」を示すのではなく、
子どもたちが自ら考える機会を与えてくれたということ、
そのふたつに、感心したのであった。

自分で考えて、決めて、実現できる。
友だちとの関わりも、今日の活動も、いろいろなことが。
そんな経験を通して、ますます日々の楽しさが広がっているのかな。
半年間で、ずいぶん成長したような気がする娘を見ながら
うれしい気持ちになる今日この頃である。

お友だちの家の畑で掘らせてもらったさつまいも、道端で拾った花梨、年長さんがくれた柿。秋の実りを全身で感じる日々。

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