連載
posted:2015.10.22 from:鳥取県八頭郡智頭町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
鳥取県南東部に位置する八頭郡智頭町。
森林に囲まれたこの小さなまちに、家族4人で移り住んだ一家がいます。
このまちで、どんな風に子どもたちが育っていくのか。普通の母親の目線から、その日常を綴ります。
writer profile
Aya Tanaka
田中亜矢
たなか・あや●横浜市生まれ。2013年東京から広島・尾道へ、2015年鳥取・智頭町へ家族で移住。ふたりの子ども(3歳違いの姉弟)を育てながら、マイペースに音楽活動も続けている。シンガーソングライターとしてこれまで2枚のソロアルバムをリリース、またバンド〈図書館〉でも、2015年7月に2枚目のアルバムをリリース。
http://ayatanaka.exblog.jp/
お彼岸のころから10月にかけては、それまでの雨続きの日々から
うって変わって爽やかな晴天に恵まれる日が多かった。
朝晩はぐっと冷え込むようになり、早くもヒーターを使わなければ
「寒い!」と感じる日が増えてきた。
実りの秋は忙しい季節。
地域のイベントもなにかと多い。
秋晴れに恵まれた週末、住んでいる地区の大運動会があった。
運動会の前日、台所の窓から外を見ると、会場である隣の旧小学校に
こんなゲートができていて、微笑ましい気持ちに。
尾道に住んでいた頃も地域の運動会があったけど、
勝敗を競うというより、競技ごとに参加賞(日用品など)をもらいつつ
ゆるやかに楽しむという雰囲気だったので、そういう感じをイメージしていたところ……
意外に本気度が高くて驚いたのであった。
集落対抗だったが、若手の多い集落はやっぱり強い。
私たちの集落は、四十路の私でも若いほう……。
運動にまったく自信のないわたしは、
婦人会の着ぐるみリレーでまさかのアンカーになり
5位だったところを抜かれて最下位でゴール。
綱引きでも、非力さからまったく貢献できず、
申し訳ない気持ちになったのであった……。
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10月中旬には、集落の秋まつり。
2日がかりの行事で、初日は昼間にお宮の清掃と準備、そして夜には男神輿。
男神輿は白装束をまとった男たちが、御神輿をかついで集落の家々をまわり、
何軒かの家で接待を受けて、最後はお宮に上がるというもの。
やはり若手が少ないために、夫にもぜひにとお誘いがあり
生まれて初めて(!)御神輿をかつぐことに。
ちなみに白装束は白い服ならなんでもよいそうで(自前で準備する)
夫は部屋着にも活用できるスウェットで参加(笑)。
しかし慣れない御神輿を長時間担ぐのはこたえたようで、
翌日はかなりグロッキーになっていた。
でも、準備から御神輿後の打ち上げまで参加していろんな方と交流できたことで、
肩の痛みとともに(笑)充実感も感じているようだった。
2日目は子ども神輿。
皆とおそろいの法被とはちまきを身につけた娘は大喜び。
それは楽しそうに、わっしょいわっしょいと御神輿を引いていた。
集落に住んでいる子どもは10人ほどだが、お祭りにあわせて帰省する家族も多く、
子ども神輿に参加した子どもたちは20人ほど。
いつもより賑やかで、かわいい声が響き渡っていた。
子ども神輿も、2時間かけて集落中の家をまわり、
何軒かで食べ物や飲み物の接待を受ける。
この日は無礼講のお菓子食べ放題に、子どもたちはうれしそう(笑)。
子ども神輿の後ろには「花」と呼ばれる、花籠を背負った男の人が歩くのだけれど、
立派なまわし姿でかなりの存在感。
毎年、集落の若い男の人が順番に「花」になるそうで、
夫にも順番がまわってくる可能性があるとか……!?
籠に入った花(竹ひごに色紙の飾りをつけたもの)は、
お祭りの最後に一本一本を輪にして各家庭に配られ
これを屋根の上に置いておくと、家が火事にならないのだそうだ。
御神輿は最後にお宮にあがり、神主さんの祈祷を受けて、
そのあと子ども相撲大会……となるはずが、土砂降りの雨。
残念ながら相撲大会は中止になり、解散となった。
けれど、しばらくお宮で雨宿りをしていたら、雨が少しあがってきて、
娘は無事、「花」を務めた方と相撲をとって、
勝たせてもらうことができたのだった(笑)。
こんな風にして、季節ごとに地域の行事がいろいろあり、
春に移住してきてから半年間、我が家は大体の行事に参加してきた。
地域の方々と交流するには絶好の機会だし、何の取り柄もないわたしたちだけれど、
お世話になっている地域に少しでも貢献したいと思ったからだ。
地域の人々と関わりながら暮らしていくこと、
それは田舎に住む醍醐味ではないかと思う。
実際、行事ごとにちょっとずつ顔見知りも増え、
少しずつ信頼感を持ってもらえるようになってきたような気がする。
秋まつりの翌日、同じ集落の、ちょっと離れたところに住む方が
我が家を訪れてくださった。素敵な秋のお裾分け。
いろいろあった半年間だけれど、
私たちのなかでもささやかな“実り”を感じる秋の日だった。
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