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初めての夏休み

森のまち智頭町子育て日記
vol.003

posted:2015.9.3   from:鳥取県八頭郡智頭町  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  鳥取県南東部に位置する八頭郡智頭町。
森林に囲まれたこの小さなまちに、家族4人で移り住んだ一家がいます。
このまちで、どんな風に子どもたちが育っていくのか。普通の母親の目線から、その日常を綴ります。

writer profile

Aya Tanaka

田中亜矢

たなか・あや●横浜市生まれ。2013年東京から広島・尾道へ、2015年鳥取・智頭町へ家族で移住。ふたりの子ども(3歳違いの姉弟)を育てながら、マイペースに音楽活動も続けている。シンガーソングライターとしてこれまで2枚のソロアルバムをリリース、またバンド〈図書館〉でも、2015年7月に2枚目のアルバムをリリース。
http://ayatanaka.exblog.jp/

身近にある自然のなかで、のびのび遊ぶ

今年の夏は全国的に猛暑だった。
智頭町でも最高気温が38度くらいまで上がる日が何日かあり、
真昼は日差しが痛いほどだった。
ただ朝晩はわりと涼しく、寝苦しくて寝られない、という日は
ほとんどなかったように思う。

7月下旬、娘が通う森のようちえんは夏休みに入った。
初めての夏休み。何して過ごそうか?
しかし私はこちらに引っ越して来てから探していた仕事がようやく見つかり、
8月から平日は働くことになった。
そんなわけで、毎日どっぷり遊びにつき合うことはできなかったが、
身近な場所に豊かな自然があるのはありがたいことだった。

いまの仮住まいから、車でちょっと行ったところに芦津渓谷がある。
川沿いに山道をくねくね登っていくと、
素晴らしい原生林と、美しく澄んだ源流があり、
〈芦津セラピーロード〉と呼ばれるトレッキングコースもある。
猛烈に暑い日でも、芦津まで行くと気温がぐっと下がり、
川の水は泳ぐにはちょっと冷たいほど。
暑い暑い真夏日には、「芦津に行こう」となって、
ちょっとした食べ物と飲み物を持って、木陰にシートを敷いて、
涼みながら遊ぶのが恒例となった。

芦津の森と清流。

娘は、森のようちえんで毎日川遊びをしていたからか、
水にはそれほど入りたがらず、河原の小石集めに夢中になったり、
木陰でお絵描きや工作を楽しんだりすることが多かった。
木漏れ日の下でのお絵描きは、とても気持ちがよさそうだった。
1歳の息子は、やはり小石で遊んだり、川の水面をひたすらパシャパシャ叩いて、
水が跳ねかえってくるのを楽しんでいた。

木陰で工作に夢中。

水の中の小石を拾ったり、水面を叩いたり。

澄んだ川の水に足をひたすと、それだけで、体のなかに詰まっていた何かが
すーっと流れていくような感じがする。
何をするわけでもないけれど、そうして川辺で時間を過ごすだけで、
すっきりとよい心地になることができた。

透き通った水に足をひたす。長いことつけていられないほど冷たい。

Page 2

生まれ育ったのは神奈川の海沿いで、ここに来る前も尾道にいたから
山間部で暮らすのは初めてで、いつも身近にあった海が遠くなるのは
ちょっと寂しいなと思っていたのだけれど、
智頭から鳥取の海岸沿いへのアクセスは意外によくて、
車で40分ほどで海にも遊びに行くことができた。

なかでも、格別に美しいのが鳥取最北端の岩美町の海。
すばらしい透明度とリアス式海岸の風景に、初めて訪れたときは息をのんだ。

熊井浜は、海にいたるまでの原生林も生命のパワーに満ちあふれていて、
体のエネルギーが充填されていく感じがした。
娘は、さまざまな色をしたトンボや、花や実など、
智頭とはまた違う虫や植物たちに目がキラキラ。
森を抜けると、施設も何もない小さな美しい浜があり、
何組かの家族がのんびりと過ごしていた。

浜辺までの道はちょっとしたジャングル。

森を抜けるとたどりつく美しい熊井浜。

のんびりと海水浴を楽しむ人々。

たくさんの海水浴客が訪れる東浜も美しい。
洞窟のある岩場は浅瀬になっていて、子どもたちの格好の遊び場。
足元に泳ぐ小さな魚たち、洞窟の中から見える大海原の景色に、娘は大興奮。
ざぶんざぶんと打ち寄せる波に、息子も大喜びで、人生初の海水浴を楽しんでいた。

東浜の美しい岩場。

岩場の洞窟は天然の遊び場。

初めて波と戯れ大興奮の息子。

こんな風にして山や海で遊んだり、
お友だちの家に遊びに行ったり、
近くのキャンプ場でバーベキューをしたりと、
なんだかんだでのびのびと、楽しい夏休みを過ごしたように思う。

お盆前には、智頭にある〈森の劇場 牛臥〉で開催された
「こども楽書きワークショップ」にも参加した。
普段は描けない壁や床をキャンバスにした1日。
たくさんの子どもや大人が自由に描く様子、
そしてそれが重なるとひとつのすてきな絵になっていくのがおもしろかった。

ワークショップが開催された〈森の劇場 牛臥〉。古い倉庫を利用している。

いろんな画材を使って自由に絵を描く子どもたち。

ワークショップの合間に盛り上がったスイカ割り。

お盆をすぎると厳しい暑さは去り、朝晩は少し肌寒いほどになった。
夏休みが終わるころ、気づけば稲穂が頭を垂れ
草取りをしていると、頭の上をトンボがたくさん飛んでいた。

智頭に来てから4か月。
春が過ぎ、夏が過ぎ、秋はもうすぐそこだ。
季節の移り変わりの早さに少しの焦りを感じつつ、
これからまた自然がどんな表情を見せてくれるのかと楽しみにもなった。

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