森のようちえんの日々
自分の目で見つけて、採って、食べる
5月から、娘が森のようちえんに通う日々が始まった。
毎日の持ち物は、お弁当、水筒、着替え、バンダナ、熊鈴とホイッスル。
服装は、1年を通して長袖、長ズボン、帽子、長靴。
蛇や蜂などの虫から身を守るためだ。

入園グッズの熊鈴、ホイッスル、バンダナ。バンダナは帽子、包帯、タオル代わりにもなる。
集合場所は、宿場町のまち並みを残す〈智頭宿〉の通り沿い、
以前は醤油屋さんがあった空き地。
ここから園バスに乗り、その日に活動するフィールドに向かう。
9時前後にゆるゆると皆が集まり始め、バスが出発する
9時半頃までの間もまた、子どもたちのおたのしみ時間。
初夏、クサイチゴの季節は、皆、登園するなり、
赤くなったばかりのイチゴを競うように採って食べ、用水路では、
サワガニや蛙、カワニナ(蛍の幼虫の餌になる巻貝)などを見つけるのに夢中。
草むらでは、バッタやてんとう虫、ダンゴムシを捕まえたり、
野花をつんで花束をつくったり。
梅雨に入るとカタツムリ、またオニヤンマのヤゴなども見つけられて、
まちなかの空き地という限られた空間の中にも、自然の生き物たちがいっぱいだ。

クサイチゴの赤い実を必死で探す子どもたち。

カニやカエル、カワニナなどを探すため、用水路に入りびたり。

用水路でみつけた小さなサワガニ。

石垣に登ってカタツムリを捕まえたところ。
入園して間もない5月、娘がお山から藤の花を持ち帰ってきた。
その頃は、山のあちこちを藤が美しく彩っていて、
「花を天ぷらにするとおいしい」という話を聞き、
食べてみたいなぁと思っていたところだった。
さっそくその日の晩ごはんに、天ぷらにしていただいた。
食感はサクサク、ひらひら、食べたときにほんのり藤の香りがひろがった。

娘が山から持ち帰った藤の花。
森のようちえんに行くようになって、娘が熱心に採るようになったのがカタバミだ。
かじると酸っぱくてさわやかな味がする。
緑の野菜が苦手で、家ではほとんど食べない娘が、
カタバミを夢中でつんでむしゃむしゃ食べているのを見て、へ〜、と思った。
きっと自分で採って食べる、という行為が楽しいのだろうな。

森に生えているカタバミはみずみずしくておいしい。
グミがたくさんなる頃には、グミの木を見つけるたびに夢中で実を採っていた。
休みの日、一緒に遊んでいた小学生のお姉ちゃんが、
真っ赤に熟したグミがたわわに実る木を教えてくれて、皆で袋いっぱい収穫した。
近くの川の水で冷やして食べた完熟グミのおいしかったこと。
その場でたくさん食べて、残った実は持ち帰ってジャムにしていただいた。

真っ赤に熟したグミ。

グミの実を冷やすために、川で水をくむ。

川の水で冷やした完熟グミ。
以前から、花をつんだり、実を採ったりするのは大好きな娘だったが、
自分で採ったものを食べるという機会は、これまであまりなかった。
自分の目で見つけて、採って、食べるということは、とてもワクワクすることで、
自然とのつながりを実感できる貴重な体験だとも思う。
大人たちの“山感日”
初夏から盛夏にかけて、森のようちえんでは、
親が保育スタッフのひとりとして活動に参加する“保育体験”、
園児たちが1年間使う薪をつくる“森林整備”、
保護者が子どもたちと一緒に山で1日を過ごす“山感日”など、
わたし自身もようちえんの活動に参加できる機会がいろいろあった。
自然のなかで子どもたちと過ごす時間は、とても気持ちがいい。
薪割りしたばかりのヒノキやスギの香り、森のおいしい空気、透きとおった川の水。
また、先生や子どもたちからさまざまな植物について教えてもらったり、
毒蛇と出会ったり、学ぶこともたくさんだ。
参観日ならぬ“山感日”で印象的だったのが相撲大会。
特に予定されていたわけでもないけれど、
一角で始まった相撲の盛り上がりに少しずつ皆が吸い寄せられ、
そのうち先生や保護者も取り組み始め、いつのまにか大盛り上がりになっていた。
笑いながら見ていたら、まさかの指名を受け、何十年ぶりかの相撲をとることに。
しかし不思議なもので、始まってみると
「負けるものか!」という闘志(?)が沸き上がり、本気で闘ってしまった。
長い取り組みの末、負けたけれど……
土の上に勢いよく倒れ込んだときは、なんだかとても爽快な気分だった。
大人になってから、こんなに無心で全力を振り絞ったことがあっただろうか。
結局、その場にいたほとんど全員が相撲をとり、皆、いい顔をしていた。

相撲をとる大人たち。いざ取り組みが始まると、皆本気。
大人とか、子どもとか、はたまた自分はこんな性格だとか、
そんなのは、いつのまにか自分で用意してしまっている“肩書き”なんだな。
勝負があれば「勝ちたい」と思う、わたしもただの生き物だ。
自然の中で、身も心も解き放たれた、まさに“山感日”だった。