連載
〈 この連載・企画は… 〉
田舎へ移住を考えている人、すでに移住した人。
そんな方の、暮らしの参考やアイデアになるはずです。農業、狩猟、人とのつながり、四季のこと。
福岡県糸島で自給自足生活を営む〈いとしまシェアハウス〉の暮らしをお届けします。
writer profile
CHIHARU HATAKEYAMA
畠山千春
はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。
ブログ:ちはるの森
こんにちは。
「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる
〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。
以前紹介した、お米の栽培から参加できる
お酒づくりのプロジェクト〈棚田のクラフトサケ計画〉。
その集大成となるオリジナルのクラフトサケがついに完成しました!
酒蔵、日本酒バー、そして〈いとしまシェアハウス〉が主体となり
それぞれの声掛けで集まった一般参加者さんと、
1年間みんなで育てた棚田のお米が、お酒に!
今回はプロジェクトのスタートから、クラフトサケの完成まで、
楽しかった1年の道のりを
振り返りながら綴っていこうと思います。
プロジェクトがスタートしたのは2023年6月。
参加者みんなで田植えを行い、そして決起会へ。
初めましての方が多いなか、「お酒が好き」という共通点もあり、
田植えを通じて一気に距離が縮まりました。
夏は草とり。
棚田の石垣の雑草をきれいに刈ったら、
水路に流れる冷たい山水で足を冷やし、そのまま海へ!
参加者さんからアイスの差し入れもあったりと、
大人も子どもも大はしゃぎの夏でした。
秋は稲刈り。
お米は昔ながらの天日干しで乾燥させていきます。
田植えのときは細くて頼りなかった苗が大きく育ち、
黄金色の稲穂がたっぷりと実りました。
参加者さんも、稲の見事な成長ぶりに
「大きくなったなあ!」と満足げ。
刈りとられた稲がきっちりと束ねられ、天日干しされていくと
「やっとここまで来た……」という気持ちで
胸がいっぱいになりました。
クラフトサケの材料が揃うまで、あと少し!
年が明けると、
お酒のフレーバーとなる“副原料”の収穫が待ち構えています。
収穫作業に訪れたみんなとお酒を酌み交わしながら
「ハーブがいいかな」「いや柑橘がいいかな?」
と盛り上がった結果、酸味が強く、旨みもある
“橙(だいだい)”を使うことになりました。
棚田のすぐそばにある柑橘畑で橙を収穫。
新鮮なうちに加工すべく、
その日のうちに福岡県福岡市にある〈LIBROM〉の醸造所へ運びました。
橙が積まれた車を見送りながら
「いよいよお酒が仕込まれるんだ……!」
という実感が高まってドキドキしたのを覚えています。
これで、すべての材料が揃いました。
約100キロの棚田米と、約60キロの橙を使ったクラフトサケ、
どんな味になるのでしょうか。
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クラフトサケの醸造を担うのは、
プロジェクトのメインメンバーであり、
福岡市内でさまざまなクラフトサケを醸造する〈LIBROM〉。
橙を収穫してからしばらくして、お酒を搾るという連絡があり、
ウキウキしながら〈LIBROM〉へ向かいました!
醸造所には、お酒のもととなる“もろみ”が入った
220リットルの巨大タンクがずらりと並んでいます。
プロジェクト用に仕込まれたもろみのタンクを上から覗きこむと、
橙とお米による爽やかで濃厚な香りに頭がクラクラ。
もろみの表面は、発酵によってぽこぽこと泡立っていました。
タンク内の様子を確認したあとは、
もろみを搾っていきます。
味見の際、お酒を搾るときに一番最初に滴り落ちる
「あらばしり」と呼ばれるお酒を振る舞っていただきました。
搾りの工程のなかでも特においしいといわれる、
貴重な部分です。
そっと口に含むと、
橙のフレッシュな香りと、お米の豊かな甘み、
シュワシュワとした口当たりで
目が覚めるようなおいしさでした!
「橙のクラフトサケ、すごくおいしく仕上がりました!
やっぱり自然栽培米はいいですね。
お米がよく溶けて、甘みが出やすい。
橙の酸味とお米の旨み・甘みのバランスがよいお酒になったと思います」
そう笑顔で語ってくれたのは、
〈LIBROM〉の蔵人・穴見峻平さん。
今までさまざまなお米でお酒を仕込んできたけれど、
自然栽培米でつくったお酒は、特においしく仕上がる、といいます。
「同じお米の品種でも、育て方によってお酒の味が変わるんです。
できるなら全量、自然栽培米にしたいくらいですね」
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田植えに始まり、草刈り、稲刈り、副原料の収穫と、
11か月の月日を経て、
2024年4月、ついに棚田のクラフトサケが完成しました!
完成披露会は、バーを併設する〈LIBROM〉で行うことになり、
プロジェクト参加者全員が集まって
クラフトサケを味わいました。
カウンターには、搾りたてのクラフトサケと一緒に
棚田で育てたお米で握ったお寿司も並び、
華やかなお祝いムードに!
大きな声で乾杯をすると、
できあがったお酒の完成度の高さに
参加者さんの目がキラキラと輝きます。
「予想以上においしくて驚きました!」
「自分で育てたと思うと、おいしさも格別ですね」
「家族や友だちにも、“私がつくったお酒だよ!”ってすすめたいです」
「来年も絶対参加します!」
このプロジェクトで育て、
クラフトサケの主原料となった棚田米は、
農薬や肥料を使わず“自然栽培”で育てたもの。
除草剤も使わないので、手作業で何度も除草作業を行いました。
手間ひまをかけてお米を育て、
みんなで話し合って酒造りをし、
自分たちだけの特別なクラフトサケができあがりました。
今回のプロジェクトには、都市部から多くの方が参加してくれました。
こうして棚田に通ってくれる人がいることで
高齢化が進む地域課題へのアクションとなり、
棚田の風景の保存活動にもつながっていきます。
また、プロジェクトの売り上げの一部を
棚田保全費に充てる仕組みも整えました。
みんなでつくったお酒が、みんなを笑顔にしている。
そして、みんなが手を動かしてくれたことで、
棚田の文化が守られていく。
この幸せな光景を見ただけで、
この1年の大変だったことが全部吹き飛びました。
このプロジェクト、やってよかった‼
2023年から始まった〈棚田のクラフトサケ計画〉。
2024年6月には、プロジェクト第2弾がスタートします!
今年はどんなメンバーが集まり、どんなお酒に仕上がるでしょうか。
お酒が大好きな方、
自分の育てたお米でお酒をつくってみたい方、
一緒にお米づくりしてみませんか?
糸島の棚田でお待ちしています!
Information
〈棚田のクラフトサケ計画〉第2弾! 参加者募集中
糸島の棚田でお米を育てて「自分たちのオリジナル酒」をつくってみませんか?
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