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地域存続の鍵になる?
若い地域プレイヤーを育む
“未来への投資”のお話。

糸島での自給自足の日々を綴った
―田舎暮らし参考書―
vol.032

posted:2019.7.30  from:福岡県糸島市  genre:暮らしと移住 / 活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  田舎へ移住を考えている人、すでに移住した人。
そんな方の、暮らしの参考やアイデアになるはずです。農業、狩猟、人とのつながり、四季のこと。
福岡県糸島で自給自足生活を営む〈いとしまシェアハウス〉の暮らしをお届けします。

writer profile

CHIHARU HATAKEYAMA

畠山千春

はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。
ブログ:ちはるの森

こんにちは!
「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる
〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。

食べることが大好きな学生シェアメイト“がんちゃん”が
この夏、旅に出ることになりました。
我が家で「料理人になりたい!」という夢を見つけた彼は、
料理の勉強をすべく修業先を探すことになったのです。

(集落で採れるビワをオンラインで販売し、旅の資金も自分で稼いでいました。
なんという成長! うれしい……)

がんちゃんがシェアハウスに住むことになったキッカケは、去年夏の学生合宿。
そこで我が家の暮らしに惚れ込み、内定を断り、
大学を休学してまで住人になってくれたのです。

納屋のDIYも学生さんたちと一緒に。

納屋のDIYも学生さんたちと一緒に。

住人になった彼が企画した学生合宿では、
これまでに20名以上の学生が参加してくれました。
教えることもたくさんありましたが、学生たちの瑞々しい感性や、
今の時代を反映した新しい価値観に、私たちが学ぶ場面も多く、
とにかく刺激的な時間でした。

そしてあらためて、「シェアハウスを長く続けていくためには、若手の存在が不可欠だ!」
ということに気がついたのです。

過去の学生合宿の参加者には、その後〈地域おこし協力隊〉になったメンバーも。

過去の学生合宿の参加者には、その後〈地域おこし協力隊〉になったメンバーも。

私の住む場所は、平均年齢65歳以上の集落。
周りはおじいちゃん、おばあちゃんばかりです。
こういう環境にいると30代の私もつい「自分たちは若者」と錯覚しがちですが、
今のまま何も行動しなかったら、私もシェアハウスもあっという間に年をとってしまいます。
それはマズい! 

里山は自然豊かで暮らしやすいけれど、最先端の情報や価値観を得にくい環境です。
だからこそ、世の中の人たちがどんなことを考え、
どんなものを求めているかを感じとって、変化していかないと、
人はまちに流れ出てしまうばかりです。

今回は、どうやったらこの場所に若い人たちを呼び、次世代のメンバーを育成していくか。
私たちシェアハウスが意識的に取り組んでいることについてお話ししたいと思います。

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いとしまシェアハウス流! 次世代メンバーとの関わり方

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少子化・人口減少で集落が消えてしまう前に、今できること

農作業だって、若手の力が必要です!

農作業だって、若手の力が必要です!

「地域に若い人がいない」という現状は、今や周知のことですが、
これから少子化が進めば、もともと数の少ない「地域で活動するプレイヤー」たちは、
各地域で奪い合うような状況になってしまうと思います。

今から積極的に次世代へアプローチしていかないと、
そう遠くない未来、人手不足であちこちの集落が消えていくことになるかもしれません。

そんな状況だからこそ、優秀な人材がやってくるのを“ただ待つ”よりも、
“育てる”環境をつくっていく必要があると感じています。

畑の開墾もワークショップの一部。

畑の開墾もワークショップの一部。

一方で、若者のほうにも「地方で活動したい」というニーズがあります。

先日、トヨタ社長の「終身雇用はもう難しい」という発言が話題になりましたが、
今は大企業に就職しても「一生安泰」ではいられない時代。
「こう生きれば幸せになれる」というロールモデルが崩壊していくなかで、
生き方の決断を迫られているのが、就職活動を控えた学生たちです。

自分なりの働き方を模索しなければならないこのタイミングで、
新しい生き方を求め、地域に目を向ける若い世代が増えてきているように思います。

夜はみんなでごはんを食べながら熱く語り合います。

夜はみんなでごはんを食べながら熱く語り合います。

国土交通白書(2017年度)によると、
三大都市圏に住む若者の4人にひとりが、地方移住に関心があると発表。
いわゆる「自然豊かな田舎でスローライフ」的な感覚ではなく、
地域でやり甲斐のある仕事をすることや、
今後の生き方の選択肢として選ばれる傾向にあるそうです。

そして、こうした若者たちがWEBやSNSを見て、
我が家にも訪ねてきてくれるようになりました。

こういった学生たちとの関わりをできるだけ増やすために、いとしまシェアハウスでは

(1)WEBやSNS発信を積極的に行う

(2)住人に学生を入れ、コネクションを生み出す

(3)学生向けコンテンツや合宿を企画する

ことを積極的に行っています。

鹿児島大学のみなさんと。

鹿児島大学のみなさんと。

この日は「田舎暮らしのなかからビジネスを生み出すには?」というテーマのディスカッション。

この日は「田舎暮らしのなかからビジネスを生み出すには?」というテーマのディスカッション。

また、普通の就職活動では出合えない、さまざまな生き方や働き方があることを伝えようと、
積極的に学生や大学と連携し、学生合宿を企画・受け入れしてきました。

古民家のDIYを体験するワークショップや、
食育を通じて暮らしを見つめ直す企画、
地域の課題をビジネスで解決するためのプログラム、
学生がコンテンツを考える学生合宿、などなど。

さらに、WEBデザイナー、料理人、プログラマー、バレエダンサー、大工、整体師など、
“自分で仕事をつくる”多様な生き方にトライするシェアメイトたちとの交流を通じて、
未来の可能性を感じる学生たちもいるようです。

がんちゃんの人生を変えた(?)夏合宿。後ろの左から2番目ががんちゃん。

がんちゃんの人生を変えた(?)夏合宿。後ろの左から2番目ががんちゃん。

がんちゃん主催、冬の学生合宿。味噌づくりをしています。

がんちゃん主催、冬の学生合宿。味噌づくりをしています。

合宿の期間中、学生たちはスポンジのように新しいことを吸収し、
その成長っぷりには驚かされるばかりでした。

社会経験は未熟でも、彼らは今の時代に必要なことを敏感に感じとる貴重な存在です。
新しい世代の視点が、今の私たちに足りないものを教えてくれたり、
私たちが思いつかないような企画を思いついたりと、
シェアハウスが進化するキッカケをたくさん与えてくれました。

シェアハウスでYouTubeアカウントを開設したり、
ドローンを導入したのは、すべて学生たちから刺激を受けてのことでした。

私たちとしても、学生たちと触れ合うことには、大きなメリットがあるのです。

ドローンで撮影した糸島の風景

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この活動を継続するにあたっての、問題と課題とは?

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地域全体で考えていきたい、若いプレイヤーを育む “未来への投資”

ただ、ひとつだけ問題なのが「コスト面」です。
学生はお金がないので、今まで売り上げは度外視してプロジェクトを回してきました。
学生へのアクションは未来への投資として続けたいと思っていますが、
できるなら、この活動を継続させる資金が欲しい。

一度、地域で活動したい若者のために
「地域で予算を組めないか」と相談したことがありましたが、
結婚も就職もしていない学生は移動することが多く、
投資してもこの場所に“確実に移住”するとは限らないため、
データとして結果が出ないものに予算をとるのは難しいかもしれない、
と言われてしまいました。

確かに、一理あります。
けれど、だからといって「家を買った人に補助金を出す」などの
目先のことばかりに取り組むのは、
長期的に見てとてももったいないことだと思うのです。
(せっかく若い世代からのニーズがあるのに、このチャンスを逃してしまうなんて……!)

鳥の解体をする福岡女子大学のゼミ生たち。

鳥の解体をする福岡女子大学のゼミ生たち。

さばいた鳥でつくったオーブン料理

というのも、地方移住は「向き、不向き」があり、誰でも楽しめることではないからです。
まちでの仕事とは違うし、ご近所づきあいも濃厚。
古い家はお手入れが必須ですし、畑や田んぼをやるなら人手も時間も必要です。

こういった環境から、地方移住の理想と現実に悩み、
まちへ帰っていく人たちも少なくありません。
移住へのモチベーションが高く、自立している人でないと、
長く住むのは難しいと思っています。

そして、受け身な人、消費するだけの人、
生きる道を自ら開拓するのが難しい人が移住者となった場合、
受け入れる側も正直大変だったりします。

そういうなかで、自ら「地域で活動したい!」と行動する学生を受け入れることは、
未来の地方プレイヤーたちを育む場となり、
そのプレイヤーたちと長く、いい関係を構築できる、またとない機会だと思っています。

(大人になっても、自分の将来を決める経験をした場所って特別ですよね!)

ソーセージづくりの風景

イノシシ肉のソーセージづくりも実践。

イノシシ肉のソーセージづくりも実践。

もし、学生たちが別の魅力的な場所に移住したとしても、
そこで彼らがつくったノウハウが巡り巡って、私たちの地域で役立つかもしれません。

地方で活躍するプレイヤーを生み出すことで
地域がよくなり、日本全体がよくなったら、
きっと地元にも何かしら還元されるのではないでしょうか。

今挙げたことだけでも、予算を組む価値やメリットが十分あると思うのですが、
私の力不足もあり、これを理解してもらうのがどうしても難しい。

道路を広くしたり、施設を新しくする前に、
次世代への投資を検討することはできないでしょうか。
長期的な視点で、地域を守ることを、共に考えていきたいのです。

この景色を守るには、次の世代の育成が欠かせません。

この景色を守るには、次の世代の育成が欠かせません。

今できることとして、コストのかからない方法を実践しつつ、
いつか決定権のある人たちに納得してもらえるようなデータを揃えていきたいなと思っています。

もし、「こういった若者支援を応援したい!」と思ってくださった方、
いい助成金やプロジェクトを教えてくださる方、
いらっしゃればご一報いただけるとうれしいです。

お問い合わせはこちら

きっと地方で同じ課題を抱えている人もいるはず。
へこたれず、一緒にがんばっていきましょうね!

糸島の真っ青な海

そして、ひとつお知らせです。

がんちゃんが大学に復学する前の最後の集大成として、
8月19日(月)~21日(水)に学生合宿を企画しています。

合宿のあとは、いとしまシェアハウス6周年企画の、
野菜が入場料となる、食とアートのイベント〈ギブミーベジタブル〉にも参加OK! 

いとしまシェアハウスの暮らしに興味がある学生さん、
仲間が欲しいそこのあなた、この夏はぜひ我が家に遊びに来てくださいね!

* * * * *

【募集中!】夏の間、いとしまシェアハウスに住んでみませんか?

Welcome to itoshima share house!

まとまった休みに、シェアハウスの暮らしを体験してみたい! という方へ、
我が家の滞在方法をまるっとまとめてみました。

数時間~数か月の短期・長期ステイや、技術の物々交換など、
いろんなかたちで暮らしを体験できるプログラムがあります。
海も山も川も一段ときれいなこの季節、一緒に糸島で暮らしてみませんか?

\夏だ! 田舎だ! いとしまシェアハウスで暮らそう!/

詳細はこちら

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今日のごはん

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今日のシェアハウスごはん

テントをはってパーティー!

ご近所さんを招待して、ピザ窯パーティーをしました! 
テントがあれば、雨の日でも問題なく開催できるのがうれしい。

ハーゲンダッツを乗せた、デザートピザ。

最近はデザートピザがかなり進化し、
この前はトッピングにハーゲンダッツを乗せるという豪華な一品が誕生しました!(笑)

ちなみにこのピザ窯は、学生たちと一緒につくったものです!

ちなみにこのピザ窯は、学生たちと一緒につくったものです!

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