連載
posted:2017.4.23 from:三重県いなべ市 genre:旅行 / 活性化と創生
sponsored by いなべ市
〈 この連載・企画は… 〉
ここには何もないから……、と言ってしまうのは簡単です。
だけどいなべ市には、四季を感じさせてくれる自然が贅沢にあって、
自然の恵みをたっぷり受けた人々の暮らしが息づいています。
そんな、いなべの暮らしを旅してみませんか?
writer profile
Ikuko Hyodo
兵藤育子
ひょうどう・いくこ●山形県酒田市出身、ライター。海外の旅から戻ってくるたびに、日本のよさを実感する今日このごろ。ならばそのよさをもっと突き詰めてみたいと思ったのが、国内に興味を持つようになったきっかけ。年に数回帰郷し、温泉と日本酒にとっぷり浸かって英気を養っています。
photographer profile
Yayoi Arimoto
在本彌生
フォトグラファー。東京生まれ。知らない土地で、その土地特有の文化に触れるのがとても好きです。衣食住、工芸には特に興味津々で、撮影の度に刺激を受けています。近著は写真集『わたしの獣たち』(2015年、青幻舎)。
http://yayoiarimoto.jp/photo/fashion/
その土地のおいしいものや食文化が知りたかったら、
農産物直売所に行ってみるのが手っ取り早いが、
いなべ市員弁町にある〈ふれあいの駅 うりぼう〉は、
置かれている商品の多彩さにまず驚かされる。
それもそのはず、いなべには全国的に知られているような特産品があるわけではないけれども、
少量多品目生産をしている農家が多いのだ。
地元の農産物などを扱う産直施設はいまや日本各地にあるが、
うりぼうはその先駆けといえる存在で、1989年に員弁町で始まった朝市を前身としている。
「朝市からふれあいの駅うりぼうになった2004年当時、
この辺りは三岐鉄道北勢線の大泉駅がぽつんとあるだけの寂しい場所でした」
と話すのは、農事組合法人うりぼうの代表理事を務める日紫喜淳さん。
農事組合法人とは、小さな農協のような組織。
もともと農協で営農指導をしていた日紫喜さんは、
地域の農業が活性化する方法をかねてから考えていて、
先述した朝市を立ち上げた人物でもあるのだ。
「四日市などの市場に出荷するためには、
ある程度の安定した生産量を確保しなければいけないけれども、
簡単なことではない。それならば地域の農産物が地元の人に回る、
つまり地産地消をするのが一番いい。地域おこしなんていうと大げさだけど、
旧員弁町は何もないところだったので、自分たちでどうにかしたいと思い、
生産者と協力してうりぼうを始めたのです」
店内に並んでいるのは、野菜や肉などの生鮮食品だけでなく、お菓子や調味料、
お惣菜なども充実。6次産業という言葉が一般的になる前から、
ここでは地元の農産物を使った加工品も積極的につくってきた。
「今でこそ冬場でもいろんな農産物が揃っていますが、
昔はどうしても品薄になってしまったため、加工品にも力を入れてきた結果なんです。
たとえば黒米なんかはお酒をはじめとして、
これまで30種類くらいの加工品を商品化しましたよ。
今残っているもののほうが少ないですけどね(笑)」
涙ぐましい努力と言えるが、うりぼうの店舗の前に2014年にオープンした
〈ジェラートの駅うりぼ~の〉のジェラートは、
近年のヒット作のひとつ。いちごやトマト、さつまいもなど、
いなべでとれた旬の野菜やくだものを使うのはもちろん、
良質なお茶の産地である大安町石榑の緑茶やほうじ茶のフレーバー、
黒米をリゾットにして練り込んだジェラートもあって、ついつい目移りしてしまう。
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消費者にとって産直の大きな魅力は、やはりつくっている人の顔が見える安心感。
「ふれあいの駅」という冠も実は的を射ていて、たとえばうりぼうに店の人気メニューである、
「人参サラダなどのデリ商品を置いている
〈洋食家さくら〉のオーナーシェフ・平野孝幸さんは、こんなふうに話している。
「僕は名古屋出身で、2000年にいなべでお店をオープンしたのですが、
うりぼうでデリをやるようになって、地元の人とのつながりがかなり増えました。
毎朝納品をしているうちに、野菜を卸しているおじいさん、
おばあさんとすっかり仲良くなって、
『さくらちゃん、昨日あんたんとこにうちの孫が行ったんやで』なんて
声をかけられるんです(笑)。あまった野菜をもらうこともあって、ありがたいですね」
商品を販売するだけでなく、ほおずき市や新米祭り、
鍋料理の対決など、年間通して季節感のあるイベントを開催しているのも、
ふれあいの駅という名前にふさわしい。
「消費者と生産者が直接ふれあえるような場があったら、
お互いにとってよいのではという発想からイベントをやるようになりました。
地域のためという意味では、婚活パーティもいずれ主催したいですね(笑)」
と日紫喜さんは、やる気満々。
ほかにも、いなべの特産品であるソバを使った蕎麦打ち体験教室や、
惣菜部のスタッフがレクチャーする料理教室を実施したり、
チャレンジ農園と称して、農業に興味のある市民をサポートするなど、
いなべの農業の未来についても見据えている。
うりぼうに商品を卸している多湖農園は、お米といちごの農家。
温度管理されたビニールハウスの中では、旬を迎えたいちごが赤々と色づいている。
「あー、甘いなあ!」
自ら摘んだ大きないちごを頬張った瞬間、満足そうにつぶやいた多湖文貴さん。
いちご狩りの観光農園も行っている多湖農園では、
実が柔らかくてやさしい甘さの〈章姫〉と、
ジューシーでほのかな酸味のある〈紅ほっぺ〉というふたつのブランドを生産している。
病気や害虫に弱いいちごは、手をかけて強い苗を育てることがとにかく大事。
天候などに合わせて日々の水分調整も欠かせない。
「生き物なので毎年状態が違うし、これでいいやと思うと、
すべての作業がおろそかになってしまいそうなので、改良は止まりません」
そうやって慈しむように育てられたいちごは、まさに箱入り娘。
「地元のケーキ屋さんに納めているのですが、『大事な子ですよね』としみじみ言われます。
こんなにみんなが好きと言ってくれるくだものも、なかなかないですしね。
うりぼうに商品を置いていることもあって、
1日1回はお客さんに感想を直接いただけるので、やりがいが全然違います。
うちのいちごを食べたら、スーパーのいちごを買えなくなったって
逆にグチられるくらいなので(笑)」
多湖さんは就農して今年で丸10年経つのだが、かつては料理人を目指していたそう。
しかし、勤め先の飲食店が使っている両親の栽培したお米やいちごを、
お客さんがおいしそうに食べているのを見て、家業を継ぐことを決意。
おいしいものをつくっている自信があるのに、
市場で差別化されないもどかしさを感じていたことから、
栽培しているコシヒカリやミルキークイーンなどのお米を
〈はじめの一穂(いっぽ)〉というネーミングで売り出すことに。
稲穂の一本まで大事に育てるという意味を込め、父・一(はじめ)さんの名前を拝借した。
「水が豊富で土質もよいこの地域では、レベルの高い農作物を生産できます。
農家としていいものをつくることで、いなべの価値をどんどん上げていきたいですね」
まちの価値を上げてくれる多湖さんのような生産者がたくさんいるのは、
いなべのかけがえのない財産といえるだろう。
information
ふれあいの駅 うりぼう
information
多湖農園
住所:三重県いなべ市員弁町大泉新田326
TEL:0594-74-2581
営業時間:9:00〜17:30
定休日:火曜日
※いちご狩りは要予約
実施期間は1月〜6月初旬までの10:00〜11:15、13:00〜15:00
イチゴ狩り予約用電話番号:090-1239-0415(“イチニッ サンキュー! おいしいイチゴ”と覚えてくださいね)
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