熊本地震を経て、
南阿蘇鉄道のいまと、駅舎本屋
〈ひなた文庫〉の考えること

熊本地震と南阿蘇鉄道のこと

いまから約2年前の2016年4月に熊本地震が起こり、
南阿蘇鉄道も甚大な被害を受けました。
私は〈ひなた文庫〉を、南阿蘇鉄道の無人駅のひとつを借りて営業しています。
今回は熊本地震と、被害を受けた南阿蘇鉄道のお話をしようと思います。

ひなた文庫のある駅は日本一名前の長い駅名でもあります。

ひなた文庫のある駅は日本一名前の長い駅名でもあります。

南阿蘇鉄道は世界ジオパークに認定された阿蘇山のカルデラ地域を走るローカル線で、
1985年に旧国鉄から第三セクターとして引き継がれました。
始発から10の駅を通り、立野駅でJR豊肥線に乗り換えることができます。
地元の方の交通手段だけでなく、観光列車として、車掌さんの解説つきで
南阿蘇の風景を楽しむことができるトロッコ列車も運行しています。

いまは崩れてしまったトンネル。

いまは崩れてしまったトンネル。

それぞれの駅舎もユニークで、ひなた文庫のほかにも、
シフォンケーキがおいしいカフェや、
料理教室を行う自然食のカフェが営まれている駅舎、
温泉が併設された駅舎など、バラエティに富んだ駅を持つローカル線でした。

温泉の併設されていた「阿蘇下田城ふれあい温泉駅」。地震後2年経ってもビニールシートがかけられたまま営業はしていません。

温泉の併設されていた「下田上温泉駅」。地震後2年経ってもビニールシートがかけられたまま営業はしていません。

駅舎でひなた文庫の営業を始めてもうすぐ1年という頃には、
この駅から通学する高校生が乗車前に本をパラパラと見て行ったり、
病院に行くために乗りに来たおばあさんが昔の思い出話をして、
ついでに欲しい本を頼まれたりするようになっていました。
始めた当初は地元の方に受け入れられるか不安な部分もあったので、
やさしく受け入れてもらえてほっとした頃でした。

子どもたちと一緒に図鑑を見たり。

子どもたちと一緒に図鑑を見たり。

そんなとき、熊本地震が起きます。
2016年4月14日、前震と呼ばれる震度7の揺れが発生し、
その後16日に再び震度7の本震が熊本地方で発生。

私たちは14日の揺れで駅舎が心配になり、
15日の夜に阿蘇大橋を通って被害がないか確認に向かいました。
幸い駅までの道も建物にも被害はなく、その日は阿蘇の実家に泊まり、
次の日もいつもどおり駅舎で本屋を開けるつもりでいました。

しかし眠って数時間後、ゴォーという地響きのような音と、
いきなり肩を掴んで思い切り揺さぶられているような激しい揺れで
恐怖のなか飛び起きます。急いで玄関に向かうも扉は歪んで開きません。
縁側の扉を開けて家族で外に飛び出すと、真っ暗な裏山からは
カラカラと小石が落ちてくる音がしていました。

貴重品などを持ち出す余裕もなく、
車に乗って近くのコンビニの駐車場で夜が明けるのを待ち、
ようやく周りの状況がわかったのは、次の日のお昼ぐらい。
どうやら大橋が落ちたらしいと周りの人が言っていました。

発電機のある場所でテレビを見てみると、
昨日まであった橋が山ごと地滑りを起こして消えている映像が。
その橋というのは、私たちが駅舎を確認しに行くときに通った阿蘇大橋。
全長200メートルもある立派な橋が跡形もなく谷底に消えている映像は、
もはや見馴れた場所のものではなく、ましていまいる場所から
2〜3キロしか離れていない場所だとは到底思えませんでした。

阿蘇大橋のあった場所。跡形もない。

阿蘇大橋のあった場所。跡形もない。

writer profile

中尾恵美 Emi Nakao
なかお・えみ●1989年、岡山県勝田郡生まれ。広島市立大学国際学部卒業。出版社の広告営業、書店員を経て2015年から〈ひなた文庫〉店主。

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