colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧
記事のカテゴリー

連載

地域の似顔絵マップ、
制作を続けて7年。
新たなカフェやショップが誕生して

うちへおいでよ!
みんなでつくるエコビレッジ
vol.203

posted:2024.3.20   from:北海道岩見沢市  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  北海道にエコビレッジをつくりたい。そこにずっと住んでもいいし、ときどき遊びに来てもいい。
野菜を育ててみんなで食べ、あんまりお金を使わずに暮らす。そんな「新しい家族のカタチ」を探ります。

writer profile

Michiko Kurushima

來嶋路子

くるしま・みちこ●東京都出身。1994年に美術出版社で働き始め、『みづゑ』編集長、『美術手帖』副編集長など歴任。2011年に東日本大震災をきっかけに暮らしの拠点を北海道へ移しリモートワークを行う。2015年に独立。〈森の出版社ミチクル〉を立ち上げローカルな本づくりを模索中。岩見沢市の美流渡とその周辺地区の地域活動〈みる・とーぶプロジェクト〉の代表も務める。
https://www.instagram.com/michikokurushima/


https://www.facebook.com/michikuru

毎年、更新してきた岩見沢市の東部丘陵地域を紹介するマップ

美流渡(みると)はまだまだ雪に覆われているけれど、まわりにいる動植物も、
そして私たちも春の準備に忙しくなる時期。
美流渡をはじめとする岩見沢市の東部丘陵地域のPRを行う活動を続けて今年で8年目。
毎年欠かさず更新している〈みる・とーぶマップ〉がいよいよ完成となる。
みる・とーぶとは「東部丘陵地域」を「見る」からとったもの。
この名前で、私たちは展覧会開催などの地域活動も行っている。

片面が地域のみなさんの似顔絵。
もう片面がスポットや見どころを掲載している。
制作のきっかけは、山あいのこの地域を紹介するマップがそれまでなかったことから。
当時は飲食店やショップなどが数えるほどだったこともあり、
地域の魅力をそこに住む人々の似顔絵を通じて伝えようと考えた。

東部丘陵地域のエリアごとに似顔絵を掲載。少しずつ人数が増えて現在125名。</p/></p>
<p class=東部丘陵地域のエリアごとに似顔絵を掲載。少しずつ人数が増えて現在125名。公式サイトからダウンロード可能。

毎年、更新を続けるなかで、地域の状況はさまざまに変化していった。
そして、今年のマップでは、飲食店やショップの情報が
入り切らないのではないかと思うほど件数が増えた。

その理由を一概に言うことは難しいのだが、
近年移住者が増える傾向にあることもそのひとつだと思う。
昨年の新聞記事では、人口300人ほどの美流渡地区に過去5年間で
47人が移住しており、2022年は最も多い13人が移住したとあった。

そして、田園風景や山並みに囲まれた静かな環境で、自分が思い描くビジョンを
実現したいという意識を持つ人々が集まってきているようにも思う。

飲食店やショップ、アクティビティスポット、宿を紹介するコーナー。20件を紹介。

飲食店やショップ、アクティビティスポット、宿を紹介するコーナー。20件を紹介。

東部丘陵地域はさまざまなエリアがある。
道道38号線沿いの20キロほどの間が、上志文、朝日、美流渡、毛陽、万字などの
地区に分かれていて、田んぼや果樹園があったり、
炭鉱の名残を感じさせる旧跡があったりと、それぞれに異なる歴史や個性がある。

岩見沢駅より車で20〜30分のエリア。MAYA MAXXさんが車体に絵を描いたコミュニティバスが走る。

岩見沢駅より車で20〜30分のエリア。MAYA MAXXさんが車体に絵を描いたコミュニティバスが走る。

上志文にアトリエ兼ショップのオープンが相次いで

その玄関口となる上志文には、この1年で3つの拠点が新たに生まれた。
上志文にある隠れ家的アトリエで販売を行うのは、
エディブルフラワーとロースイーツのお店〈Shunka〉と、
オーダーを中心にした花屋でブーケやアロマのワークショップも行う〈日々の花 糸〉。

〈Shunka〉では、ロースイーツの魅力を知ってもらうために月替わりでさまざまな商品を販売している。月の最終週の土曜・日曜・月曜のみ営業。冬期休。10:30〜14:30オープン。詳細は@harukiflower

〈Shunka〉では、ロースイーツの魅力を知ってもらうために月替わりでさまざまな商品を販売している。月の最終週の土曜・日曜・月曜のみ営業。冬期休。10:30〜14:30オープン。詳細は@harukiflower

空知の花農家さんとのつながりから、規格外の花の販売やオーダーに合わせたギフトを制作。不定期オープン。詳細は@hibinohana.ito

空知の花農家さんとのつながりから、規格外の花の販売やオーダーに合わせたギフトを制作。不定期オープン。詳細は@hibinohana.ito

また札幌と帯広で職人の縫製技術と染めの技術を伝える服づくりを行ってきた
〈giorni(ジョルニ)〉が、アトリエ兼ショップとして〈HATAKE TO GIORNI〉を開いた。
ここでは服の取り扱いだけでなく、家の周辺で育てた自然栽培の野菜の販売も行っている。

いずれも月に2回程度のオープン。
それぞれが道内の複数の地域で活動していて、ライフスタイルに合わせた運営の仕方を選んでいる。

〈HATAKE TO GIORNI〉は、デザイナー自らがショップを開く。フード部もあり仲間と野菜を育て販売も。月2回、日曜営業。13:00〜16:00オープン。詳細は@hatake_to_giorni

〈HATAKE TO GIORNI〉は、デザイナー自らがショップを開く。フード部もあり仲間と野菜を育て販売も。月2回、日曜営業。13:00〜16:00オープン。詳細は@hatake_to_giorni

次のページ
こんなエリアにカフェが!

Page 2

いままでカフェがなかったエリアに2店舗がオープン

果樹園が広がる毛陽には、昨年ふたつのカフェがオープンした。
このエリアには、これまで飲食店は〈ログホテル メープルロッジ〉に併設されたレストランのみ。
そんなエリアにカフェができるなんて(!)と開店を知って心が躍った
(わが家からも車で5分もかからない場所)。

ひとつは〈髙柳珈琲店〉。
夫婦で楽しみながらカフェを営みたいと、実家の跡地にコンテナハウスを建てた。
妻の葉子さんは20年以上自宅でお菓子教室を開いていたそうで、
その腕前を生かして、季節のケーキを提供している。

〈髙柳珈琲店〉。コンテナを利用した小さなカフェで席数は8名。

〈髙柳珈琲店〉。コンテナを利用した小さなカフェで席数は8名。

庭で収穫したベリーをふんだんに使ったケーキなど、季節の味が楽しめる。土・日曜のみ11:00〜17:00オープン。冬期休。詳細は@takayanagi.c

庭で収穫したベリーをふんだんに使ったケーキなど、季節の味が楽しめる。土・日曜のみ11:00〜17:00オープン。冬期休。詳細は@takayanagi.c

もうひとつは〈Hugnet〉。一昨年から地域おこし推進員(協力隊)として
東部丘陵地域で活動中の魚住駿さんが、小野沙也佳さんとともに開いたカフェ。
田畑の隣にポツンと建つ一軒家を、ふたりが仲間に手を借りながら改修。
毛陽産のリンゴやナシを使ったタルトや芳醇な香りのコーヒーが味わえる。

どちらもオープンしたのは10月。
これは偶然の一致のようだけれど、この地域がますます
にぎわいのある場所になっていくのではないかという勢いのようなものが感じられた。

三角屋根が目印の〈Hugnet〉。

三角屋根が目印の〈Hugnet〉。

毛陽でとれた果物や野菜を使ったケーキを提供。

毛陽でとれた果物や野菜を使ったケーキを提供。

冬期休業中の現在は、近隣のログホテル メープルロッジでPOPUP CAFEをオープン。土・日曜・祝日9:30〜17:00オープン。4月29日まで。それ以降は店舗で営業。詳細は@hugnet89

冬期休業中の現在は、近隣のログホテル メープルロッジでPOPUP CAFEをオープン。土・日曜・祝日9:30〜17:00オープン。4月29日まで。それ以降は店舗で営業。詳細は@hugnet89

さらに今年新しくマップに加わったのは、幌向川ダム方面へと向かう山あいのエリアで
フランス鴨肉の生産をする〈北海道ウィングファーム〉。
飼育しているのは、全国でも珍しいバルバリー種のフランス鴨。
平飼いによる良好な環境で育てており、肉はくせがなく滑らかな口溶けが特徴。
その味が評判を呼んでおり、道内外のレストランや居酒屋、蕎麦店などにも卸しているという。

ファームで直売を実施。鴨鍋セットや焼肉セット、ささみの燻製などがある。Tel:0126-35-5952(要事前連絡)。https://wingfarm.stores.jp

ファームで直売を実施。鴨鍋セットや焼肉セット、ささみの燻製などがある。Tel:0126-35-5952(要事前連絡)。https://wingfarm.stores.jp

また、マップでは多彩な活動をする人々も紹介している。
そのなかで、今回新しく加わったのは〈鹿あんにゃ〉。
地域おこし推進員(協力隊)の藤嶋裕介さんが立ち上げたブランドで、
鹿肉などの加工品を製造している。
藤嶋さんは、20歳から岩見沢市のハンターに師事して狩猟の現場で経験を積み、
現在ハンターとして地域の安全を守りつつ、鹿や熊などを資源として活用する取り組みを行っている。

朝日地区にある〈高橋商店〉やログホテル メープルロッジで販売。メープルロッジのレストランでは、エゾシカバーガーやヒグマバーガーも提供されている。

朝日地区にある〈高橋商店〉やログホテル メープルロッジで販売。メープルロッジのレストランでは、エゾシカバーガーやヒグマバーガーも提供されている。

次のページ
マップを配ろうとしたら急展開!

Page 3

マップのお披露目を岩見沢にオープンする無印良品で

こうした新しい顔ぶれのみなさんの取材は、昨年11月くらいから進め、
同時に似顔絵も描いていった。
それをマップに落とし込み、美流渡在住の画家・MAYA MAXXさんが描いた
動物のキャラクター(今年はウサギ)をはめ込んでマップを印刷所に渡したのが
2月下旬のこと。
さてさて、刷り上がったらマップを各所に配ろうと思っていた矢先に急展開が起こった。

マップに掲載した〈日々の花 糸〉と〈Shunka〉の似顔絵とコメント。

マップに掲載した〈日々の花 糸〉と〈Shunka〉の似顔絵とコメント。

岩見沢市内にある〈コープさっぽろ〉の敷地に無印良品が
3月15日にオープンすることになり、そのオープニングイベントとして
東部丘陵地域の作家たちを紹介する展覧会を行うこととなったのだ。
展覧会決定からオープンまで、わずか2週間(汗)。
何ができるのか未知数だったけれど、マップを配布するのにまたとない機会!
ちょうどマップをつくるために地域で活動するみなさんと連絡を取り合っていたことだし
とにかくやってみようということになった。

コープさっぽろ岩見沢南店に無印良品が3月15日オープン。

コープさっぽろ岩見沢南店に無印良品が3月15日オープン。

展覧会では作家の小品やサンプル品など集めつつ、
初日と土日祝日は実際に商品を販売することにした。
このほかショップカードの設置も呼びかけ、最終的に関わってくれたのは24組!
東部丘陵地域で活動をする人たちとともに、この地域に興味を持ってくれ、
これまでも活動に関わってくれた北海道教育大学岩見沢校の教員や学生の出品もあった。

MAYA MAXXさんと仲間たちで昨年つくった10体の動物シリーズ「Zoo, Zoo, Miruto」が会場をにぎやかに彩った。

MAYA MAXXさんと仲間たちで昨年つくった10体の動物シリーズ「Zoo, Zoo, Miruto」が会場をにぎやかに彩った。

こんなに短期間で展示ができたのは、私が代表を務める
「みる・とーぶプロジェクト実行委員会」に、
現在コアメンバーとして関わってくれているみんなの力があってこそだ。
作業の分担ができたり、運営方法で改善すべき点を見つけて動いてくれたり。
いいものをつくりたいという気持ちと、無印良品で展示をしたら
どんなことが起こるだろうというワクワク感が共有できるのが何よりうれしい。

メンバーといつもサポートしてくれる仲間とで設営中!

メンバーといつもサポートしてくれる仲間とで設営中!

さらには今回、急なことであったために、いろんな困りごとが起こったのだけれど、
地元の方やいつも展覧会をともにしている仲間がスーパーマンのように
要所要所で現れてくれて乗り切れた。

普段活動をしている旧美流渡中学校から、MAYAさんの作品を運び出し。雪で閉ざされていたが、地元業者さんが除雪をしてくれた! 荷物の運び出しも多くの人が手伝ってくれた!!

普段活動をしている旧美流渡中学校から、MAYAさんの作品を運び出し。雪で閉ざされていたが、地元業者さんが除雪をしてくれた! 荷物の運び出しも多くの人が手伝ってくれた!!

そして何より、MAYAさんが、いつでもみんなのことを思って、
これまでにさまざまな作品をつくってくれていたおかげで、
会場全体に心が明るくなるようなムードをつくることができた。

印刷所さんにも急いでもらって、初日オープンになんとか新しいマップも間に合うことに!
みなさん、ぜひ、「みる・とーぶとMAYA MAXXがやってきた!」展をよろしくお願いします。
土日祝日はショップもオープンしていますので、のぞきに来てください。

無印良品の窓から、うっすらと見えるのはMAYAさんの作品たち。とにかくかわいいです。

無印良品の窓から、うっすらと見えるのはMAYAさんの作品たち。とにかくかわいいです。

かわいい動物たちがお出迎え! ぜひおいでください!!

かわいい動物たちがお出迎え! ぜひおいでください!!

information

map

無印良品オープン記念展
みる・とーぶとMAYA MAXXがやってきた!

開催場所:無印良品コープさっぽろ岩見沢南店

住所:北海道岩見沢市美園6条8-6-15

開催日:3月15日(金)〜31日(日)

営業時間:10:00〜20:00

information

みる・とーぶshop

開催日:3月15日(金)、16日(土)、17日(日)、20日(水祝)、23日(土)、24日(日)、30日(土)、31日(日)(予定)

営業時間:10:00〜16:00(予定)

Feature  特集記事&おすすめ記事