連載
posted:2017.7.20 from:北海道岩見沢市 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
北海道にエコビレッジをつくりたい。そこにずっと住んでもいいし、ときどき遊びに来てもいい。
野菜を育ててみんなで食べ、あんまりお金を使わずに暮らす。そんな「新しい家族のカタチ」を探ります。
writer profile
Michiko Kurushima
來嶋路子
くるしま・みちこ●東京都出身。1994年に美術出版社で働き始め、2001年『みづゑ』の新装刊立ち上げに携わり、編集長となる。2008年『美術手帖』副編集長。2011年に暮らしの拠点を北海道に移す。以後、書籍の編集長として美術出版社に籍をおきつつ在宅勤務というかたちで仕事を続ける。2015年にフリーランスとなり、アートやデザインの本づくりを行う〈ミチクル編集工房〉をつくる。現在、東京と北海道を行き来しながら編集の仕事をしつつ、エコビレッジをつくるという目標に向かって奔走中。ときどき畑仕事も。
http://michikuru.com/
北海道にも暑い夏がやってきた。
さくらんぼがたわわに実るこの季節になると、必ず訪ねてくれる友人がいる。
この連載でも何度か紹介している、アクセサリーデザイナーの岩切エミさんだ。
毎年夏に、札幌市資料館でクリエイター仲間とイベントを行っており、
それに合わせて岩見沢にも立ち寄ってくれるのだ。
せっかくエミさんがくるのなら、子どもたちとワークショップをやってもらいたいと、
先月からスタートした〈みる・とーぶSchool〉の第2回目を企画。
テーマとなったのは、「子ども電車づくり」。
ダンボールに布やカラーテープを貼って車両をつくって遊ぶというものだ。
開催したのは7月3日、わたしたち一家がこれから移住をしようと考えている
岩見沢の中山間地・美流渡(みると)にある公園だ。
しかし、なんとわたし自身は体調不良で欠席に……。
こともあろうに主催者がいないという事態になったが、
いつも一緒に〈みる・とーぶ〉の活動を行っている
地域おこし推進員(協力隊)の友人たちや同級生のお母さん、
そして夫のサポートで、なんとか無事にワークショップを開くことができた。
みんな快く仕事を引き受けてくれて、本当にありがたかった。
しかも、ワークショップに参加した12名の子どもたちは、
躊躇することなく電車づくりを楽しんでくれたそうで、
和気あいあいとした雰囲気だったという。
最後に車両を連結して公園を走り回り、
帰るときまで、それをずっと身につけてくれていた子も多く、
エミさんも「とっても幸せな時間だったよ」と笑顔で話してくれた。
さて、この日、実はもうひとつ重要な計画があった。
今年の4月、エミさんとともに、札幌市資料館で、
岩見沢の美流渡を含む中山間地(東部丘陵地域)をピーアールする
〈みる・とーぶ展〉を開催しており、その反省会を行うことになっていたのだ。
この会もわたしは欠席となってしまったが(涙)、
会議を記録してもらい、内容を共有することができた。
話し合いの内容を聞いて、いま〈みる・とーぶ〉が抱える問題点が、
浮き彫りになっていることがわかった。
昨夏に、エミさんに誘われ、札幌市資料館で東部丘陵地域の
ピーアールイベントをすることになり、それから9か月、
活動名を決め、ロゴをつくり、参加作家を募り、展示販売する作品をつくってきた。
準備にはメンバーそれぞれかなりの時間を要したこともあり、
4月のイベント開催後は、あまり頻繁に活動をしておらず、
次の目標も明確ではなかった。
〈みる・とーぶ〉のアドバイザー的な役割を担ってくれていたエミさんは、
こうした状況を知り、いくつかの提案をしてくれた。
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〈みる・とーぶ〉は、地域おこし推進員をはじめ、
主に東部丘陵地域に住む有志が集まっているが、
特にメンバーが固定されているわけではない。
これまでは、できる人が、できることをやるというようなかたちだったが、
今後継続的な組織にするには、代表を据えて、
メンバーの役割分担を明確する必要があるのではないか。
〈みる・とーぶ〉とは何をする団体なのか、
自分たちの立ち位置をはっきりさせる必要があるのではないか。
自分たちの活動に確信をもてないと、
人を巻き込んでいく力は発揮できないのではないか。
4月のイベントで〈みる・とーぶ〉が販売した商品の中で、
1000円以下のものもあったが、安いから売れるという時代は終わっているように思う。
そうしたものよりも、作家として生活し、ものづくりで生きていこうとする人の
クオリティの高い商品を扱う必要があるのではないか。
エミさんは、全国各地のギャラリーなどで、
自身でつくったアクセサリーを販売する活動をしているが、
そうした経験から特に強調したのは、
「ものをただ飾るのでは売れない。つくった人の暮らしぶりが想像できるような
ストーリーが感じられないと」ということだった。
例えば、〈みる・とーぶ〉展で、一番売れたのは、
地元の果樹園で採れた蜜蝋でつくったキャンドル。
「キャンドルは、ここでの暮らしととてもぴったりくるもの。
自然の中で夜はできるだけ電気を使わずに、キャンドルを灯す姿って、
すてきだし想像できる」と、エミさんは売れた理由を分析する。
そして、〈みる・とーぶ〉は、地元の作家を集めて、
こうしたストーリーを紡ぎ出し発信する
ディレクションを行うチームになってはどうかと提案してくれた。
エミさんの話は、今後〈みる・とーぶ〉の活動を続けていくために
欠かせないヒントがたくさんあった。
そして、いまこうしたヒントを生かしつつ、
次なるステップへ踏み出す検討を始めている段階だ。
今後の予定としては、9、10月に地元で収穫祭などのイベントがあるので、
そこに出展し、地元の人に〈みる・とーぶ〉を周知する活動を
行っていこうと考えている。
そして、ちょうど1年後にエミさんたちが開催を計画している
札幌市資料館のイベントにも参加し、〈みる・とーぶ〉を大きく展開していく計画だ。
参加するイベントは、いくつか見えてきたが、
エミさんから投げかけられた課題については、まだまだ模索中。
エミさんは〈みる・とーぶ〉を、
地域の作家をディレクションするようなチームにしてはと提案してくれたが、
メンバーの中には、ディレクションの経験者はそれほどいないので、
具体的な道筋が見えていないのも事実。
ただ、わたしは、これからおもしろくなっていきそうな
可能性の兆しがあるように思えている。
4月の展示以来、チーム全体での活動は小休止していたが、
〈みる・とーぶ〉という名前で地元のソフトボール大会に出場したり、
わたしが中心となって〈みる・とーぶSchool〉という
ワークショップの活動も始めている。
また、東部丘陵地域をめぐる〈みる・とーぶツアー〉を
企画したいと考えているメンバーもいるし、
今後商品のラインナップを増やしていきたいと、
ものづくりに取り組もうとするメンバーもいる。
いまはまだ、はっきりとした輪郭が見えない〈みる・とーぶ〉だが、
個人個人がこの名前を使って、自分のやりたいこととリンクさせて、
ステップアップのきっかけになったら、
そこから新たな展開が見えてきはしないだろうか?
手探りではあるが、〈みる・とーぶ〉がメンバーの成長の場として、
うまく機能していき、その成果が来年の7月のイベントへと結びつけられたら……。
乗り越えなければならない課題は多いが、メンバーとともに、
これからもさまざまな挑戦をしていきたい。
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