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空き家を借りてリノベします!

うちへおいでよ!
みんなでつくるエコビレッジ
vol.011

posted:2016.1.14   from:北海道岩見沢市  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  北海道にエコビレッジをつくりたい。そこにずっと住んでもいいし、ときどき遊びに来てもいい。
野菜を育ててみんなで食べ、あんまりお金を使わずに暮らす。そんな「新しい家族のカタチ」を探ります。

writer profile

Michiko Kurushima

來嶋路子

くるしま・みちこ●東京都出身。1994年に美術出版社で働き始め、2001年『みづゑ』の新装刊立ち上げに携わり、編集長となる。2008年『美術手帖』副編集長。2011年に暮らしの拠点を北海道に移す。以後、書籍の編集長として美術出版社に籍をおきつつ在宅勤務というかたちで仕事を続ける。2015年にフリーランスとなり、アートやデザインの本づくりを行う〈ミチクル編集工房〉をつくる。現在、東京と北海道を行き来しながら編集の仕事をしつつ、エコビレッジをつくるという目標に向かって奔走中。ときどき畑仕事も。
http://michikuru.com/

めざすはデザイナーズ・イン・レジデンス

今年は雪が遅かったけれど、とうとうたっぷり積もりました~。
エコビレッジづくりのために、まずその拠点を固めようと
昨年から場所を探してきた結果、いよいよ、空き家を借りる決意をしました!
その場所とは、前回の連載で紹介した、岩見沢の東部丘陵地域、
美流渡(みると)で見つかった赤い屋根の家。

構想としては、この場所をさまざまな人が集う拠点にすること。
この拠点で、まずは自分のできることを始め、
それをエコビレッジへと拡大していこうという考えだ。
第一歩として、東京で暮らす友人たちが遊びに来られる
ゲストハウス的な場所にしたいと思っている。

わたしの本業は、美術やデザイン関連の本の編集だ。
仕事仲間や取材で知り合った人たちなどは、みんな多忙を極めているが、
仕事をしながらであれば、例えば2週間くらいのスパンで
滞在することができるんじゃないだろうか。
デザイナーやライターであれば、場所を選ばずに仕事ができるはず。
デザイナーズ(ライターズ)・イン・レジデンスみたいな動きをすることで、
それがいずれ長期ステイや移住へとつながっていくようにも思っている。
また、クリエイティブな才能を持つ人々に滞在してもらいながら、
ワークショップやトークなどをやってもらえたら、さらに楽しいことが起こりそうだ。

この日、空き家を訪れた仲間たち。中央が、空き家を管理するNPO〈M38〉の代表、菅原新さん。左隣が、空き家の使い道を一緒に考えている農家の友人、林さん夫妻。

もうひとつプランがある。
空き家探しと同時に進めている山の土地の購入計画。
この計画を一緒に進めている友人、林睦子さんがやりたいと思っている
森のようちえんの場所としても使うことだ。
この赤い屋根の家の裏には、山が広がっている。
ここで思いっきり遊びつつ、家の中でときどき休憩するのもいいように思う。

さらに、1階にカフェスペースを設けられたらなあと夢は広がる。
やっぱり人が集う拠点とするには、この場所がいつでも開かれていて、
誰もが立ち寄れるようにしておきたい。
それにある程度は、この場での収入の道も探っておきたいという気持ちもあるし。
ただし、カフェの運営となると、編集の本業との両立は難しいので、
いま友人にやってもらえないだろうかと声をかけているところだ。

前回の連載で紹介したときは下草が見えていた裏山は雪で真っ白。斜面になっているので、子どもたちがソリ滑りを楽しんだりもできそうだ。

日中も氷点下。窓には氷の結晶が! 北海道弁では「しばれる(凍る)」。

この地域には、特にこれといった観光名所はないけれど、そこがいいよね。里山の自然がすぐ近くに感じられる。

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空き家リノベ計画スタート!

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森のようちえんにもカフェにもしたい

空き家の使い方のプランが固まってきたので、年明け早々に、
この家を管理するNPO〈M38〉の代表、菅原新さんに正式にお願いにうかがった。
この空き家をゲストハウスにして、森のようちえんにして……と、
わたしのとりとめのない話を聞いてくれた菅原さん。
「わかりました。この地域の活性化につながることだと思います。
ぜひ、使ってください」と言ってくれた。
ニコニコ笑顔を絶やさないが、少し沈黙があって……。
「……でも、本当はここに移住してほしいんですけれどね」と、ポツリ一言。

実は菅原さんは、この日わたしたちが空き家を訪れるということで、昨晩から除雪をして準備をしてくれていた。豪雪地帯の美流渡、積雪はすでに1メートルを超えている。いったい何時間かかったのか、本当にありがたかった。

菅原さんにカフェも開いてみたいと話したら、「ここはカフェ向き」ということで、平屋で開放感のある、ほかの空き家も紹介してくれた。美流渡は、本当にさまざまな可能性が考えられる場所。

菅原さんの気持ちも痛いほどよくわかる。現在人口1000人を切り、
小中学校が統廃合されるかもしれない危機に直面している美流渡。
この地域をいかに活性化させていくのかを日々考えている菅原さんは、
いま移住を促進しようと活動を続けているのだ。
それに、自分たちが移住してこそ拠点も生きるはずだ。
息子の幼稚園のこともあるし、すぐに移住というわけにはいかないけれど、
ゆくゆくは住みたいと、わたしも強く思っている!

ただし問題は、夫の気持ちだ。
美流渡に移住してもいいのか、岩見沢の市街地にある現在の住まいに残りたいのか、
その真意は定かではない。その答えを早急に求めてしまうと
リノベ計画自体が拒絶されそうな予感もしているので、
この結論はまだ出さないほうがいいように思うのだった。

いま、夫婦間の共通認識としては、
空き家を借りてそこをリノベーションするというところまでだ。
空き家を一緒に見に来た夫の様子は、電気の配線を確認したり、
壁を叩いたりなど、リノベーションのプランをすごく具体的に練っているようだった。
最初は、「この建物は、増築したり配線をいじっているから改装しづらい、
別のところにしてくれ!」とブツブツ言っていたが、
ついに覚悟を決めてくれたようだ(うれしい!)。
そんな夫を遠目に見ながら菅原さんに、
「ゆくゆくは移住できると思うので、その結論は
もう少し長い目で見てくださいね」と耳打ちした。
ちなみに、まだ家賃についてはNPOで価格設定をしていないそうで、
団体の中で協議してから連絡をもらうことになった。

家に戻ると夫は、「プレナーとレーザーはいるなぁ」と、
まだ持っていない工具について、あれこれネットで価格を検索していた。
おっ、これはなかなか前向きなんじゃない? と思っていたら、こちらを向いて、
「改装するなら、ゲストハウスで、森のようちえんで、カフェで、
あとは俺たちが住めるようにもすればいいんだろ?」と語った。

はい、そうです! そうなんです!!
いつになく協力的、やったね。
しかも、私たちが住むっていうところも了解してくれていてよかった~。
ついついニヤリと口がほころんだが、同時に……。
「そのお金があれば、いま住んでいる家が改装できるのになぁ~。
あと、この家の柱をまず直さないとな!」

ん? えっと、そうですね……。
1本折れそうなのは確かだから、本当に直す必要はあるけれど、
このタイミングでその話をするということは……、
う~ん、結局、美流渡に移住していいのか、ここにとどまりたいのか、わからないなぁ。
ずっと東京に住んでいたわたしからすれば、いまある自宅と美流渡は
車で30分弱で、そんなに変わらないように思えてしまうんだけど。
まあ、リノベーション計画はスタートできそうだから、この話はまた考えればいいよね。
雪で、いまは身動きがとれないので、3月くらいからリノベを始めようと思っています!

岩見沢の市街地にあるわが家のあたりも雪で覆われた。屋根の雪をおろさないと柱が折れたりする可能性も。もともとここは両親が数十年前に建てたアパートで4世帯が住んでいたところを改装して使っている。夫にとって愛着がある場所だし、駅から徒歩15分とアクセスもいいので、夫が迷う気持ちもわからないわけではない。

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