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日本初のテーラーはいまも現役。
伊藤博文も愛した
〈柴田音吉洋服店〉

CLASS KOBE - CLASSな神戸の物語 -
vol.021

posted:2016.3.21   from:兵庫県神戸市  genre:暮らしと移住 / 旅行

sponsored by 神戸市

〈 この連載・企画は… 〉  旅するように暮らす、暮らすように旅する。それができるのが神戸の魅力。
ブックレット『CLASS KOBE』で紹介した場所、そして、オリジナル記事も加えた、
神戸の暮らしを訪ねたくなるコロカルの神戸案内です。

credit

文:橋本勲(glass)
撮影:猪股純一
Supported by 神戸市

その人に似合う、最高の一着をつくる

神戸が明治の開港で賑わいを見せている頃、
ひとりの男性が「洋服づくりの天才」と話題になっていました。
それが柴田音吉さん。〈柴田音吉洋服店〉の創業者です。
10歳には京都で裁縫の勉強を始め、その後、明治2年になると
今度は、近代洋服のテーラーをメリケン波止場で開いていたイギリス人、
カペルさんの弟子になります。
そして1880(明治19)年に開業。ここに日本初の本格的テーラーが誕生します。

当時の日本ではあまり手に入らなかった最高級の生地を使い、
とにかく着心地のいい、丁寧な仕事。その噂を聞きつけ、
初代兵庫県知事の伊藤博文もスーツやコートをあつらえたそうです。

創業以来顧客の型紙が保存されています。震災前には2万枚の型紙がありましたが、建物の倒壊で一部は持ち出せませんでした。それでも2000枚を保存しているのは、お客さんと一生のおつき合いをしていく証。

「これ以後、伊藤博文に大変かわいがられ、
伊藤博文が天皇に対して礼服は洋装にすべき、と進言することになった
きっかけだと言われています」と言うのは、5代目の柴田音吉さん。
なんと太政官布告に列記された内容は、
柴田音吉洋服店の初代が深く関係していたのでした。

それから代は移り、阪神淡路大震災も経験し、店は現在の場所へ。
予約制のテーラーとして、新たな価値をつくり出しています。
「近年は既製のスーツをフィッティングするだけで買える時代です。
しかし、やはりその人に合う一着というのは
じっくり話をし、採寸するというプロセスを経ないといけません」
そう、現代の柴田音吉洋服店は、テーラーの国イギリスの本流でもある
ビスポークテーラーとして、ひとりひとりのお客さんに向き合っているのです。

お客さんとの話は、体型や好みの話だけではありません。
経済のこと、嗜好品のこと、あらゆる話をしてお客さんとのつながりを深め、
その中から最適の一着を生み出していきます。

生地はオールシーズン使えるものを常時500種類そろえています。

「洋服は利益ではなく芸術性を追求しなさい」
先代に教えられた言葉を守りながら、日本最古のテーラーは、
今日も紳士服を生み出しています。
「いい洋服をつくるのは、テーラーなら当たり前。
うちはその先の世界まで、お客さんと共有していきます」
5代目の言葉は、服づくりの魂を物語っていました。

「ブランドを誇るのではなく、質を誇ってほしい」。お客さんにそう願うから、ブランドタグは襟元だけにさらりと入っています。

information

map

柴田音吉洋服店

住所:兵庫県神戸市中央区元町通4-2-22 2F

TEL:078-341-1161

営業時間:12:00~18:00(要予約、予約時間により午前中も可能)

定休日:水曜、日曜、祝日

*都市によっては訪問も可能
http://www.otokichi-kobe.co.jp/

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