連載
posted:2021.9.3 from:兵庫県丹波篠山市 genre:暮らしと移住 / アート・デザイン・建築
sponsored by BESS
〈 この連載・企画は… 〉
ライフスタイルの基本は、やはり「家」。
ログハウスなど木の家を得意とする住宅ブランド〈BESS〉とともに、
わが家に好きなものをつめこんで、
最大限に暮らしをおもしろがっている人たちをご紹介します。
writer profile
Tomohiro Okusa
大草朋宏
おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。
photographer profile
Shinryo Saeki
佐伯慎亮
広島出身、写真家。関西を拠点に雑誌、広告などのカメラマンとして活動。淡路島と大阪の2拠点生活が始まり、淡路の草刈りのことばかり考えている。おもな書籍に『挨拶』『リバーサイド』(赤々舎)などがある。
http://www.saekishinryo.com/
家を建てるにあたって、まずは土地を選ぶ。
整理された住宅地ではなく、裏手に山が迫る土地を選んだ時点で、
山ノ口翔太さん・かなふさん夫妻の「暮らしの覚悟」は決まったのかもしれない。
しかも大阪市内から電車で約1時間、兵庫県丹波篠山市の山間部である。
とにかく「草刈りが大変だ」と翔太さんは繰り返す。
〈BESS〉の「カントリーログ」を建てるために購入した土地は、
「見に来てみたら、雑草が生えまくり」だった。まずは草刈りをしなくてはならない。
ここからすでに、自分たちの手による里山暮らしがスタートしていたようだ。
「最初は雑草に加えて竹もたくさん生えていて、ジャングルのようでした。
1年間かけて、自分たちの手で土地の整備をしました。
竹は400本くらい伐っているんじゃないかな(笑)」
それまで大阪の中心部で暮らしていて、
もちろん草刈りなどしたことはないという翔太さん。
家を建てる前の草刈り作業は、予想以上に過酷だったようだ。
「最初は家も建物もない。つまりトイレも水道もないわけです。
だから、特に炎天下での作業は堪えましたね。
草刈りのために、クーラーボックスいっぱいに水を入れて大阪から通いました」
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こうして自らの手で“開拓”した土地に家が建てられた。
そもそも翔太さんは、移住や田舎暮らしにそれほど興味はなく、
強い思いを持っていたのは妻のかなふさんだ。
翔太さんは大阪に勤めているので通勤は大変になるし、
山登りもキャンプもしたことがない。
どちらかというと、夜の繁華街で飲み歩くほうが好き。
そんな気持ちを変えたのが、BESSの家との出合いだった。
「一度、興味本位で神戸にあるBESSのLOGWAY(ログウェイ・展示場)に
行ってみたんです。そこで出合ったのが、このカントリーログ。
こんなかっこいい家に住めるなら、田舎暮らしをしてもいいかなと思いました」
カントリーログは、広いデッキとその上に張り出した屋根が特徴。
BESSのなかでも、もっとも「ログハウス」らしさを打ち出したモデルだ。
そんなログハウスが都心部に建っているのは想像できない。
そこで視線はどんどん郊外に向いていく。
大阪中心部から土地を探し、少しずつ離れていきながら辿り着いたのが丹波篠山だった。
当初、100坪程度で探していたが、
結果的に決めた土地面積はなんと約800坪(約2650平方メートル)!
前には畑、裏には山、そして充分な庭。それらすべてが自分たちの土地。
豊かな田舎暮らしを目指すうえで、理想的な環境が揃っていた。
「やってみると、できることだらけ」
この翔太さんのひと言に、彼らが新しく手にした暮らし方が集約されているようだ。
「広さという魅力はありますね。何もやったことはありませんでしたが、
土地があるなら畑をやってみよう、山の自然を使ってみよう、小屋も建ててみようと、
とにかくなんでも挑戦してみようという気持ちになりました」
経験がないからこその、初々しい気持ち。
山ノ口さん夫妻を見ていると、そうした姿勢で楽しんでいるように感じる。
「できることの幅は広がっています。
例えば最初に伐った大量の竹も廃棄することなく、竹炭に加工して燃料にしたり、
チップにして肥料にしたり、水はけを良くするための資材に使っています。
春にはタケノコが採れますし、竹林を上手に管理する方法も学びました」
こうした情報を、みずから調べたり、周辺の先輩住民から教えてもらったりしながら、
自分たちで挑戦。これからは、竹を「ささら」にして薪ストーブの掃除や、
釣りざおづくりも計画しているという。
大阪時代からオーガニック野菜に興味があったかなふさんの希望で、
自然農にも挑戦している。
「最初は無農薬、無化学肥料でやろうと思ったんですが、結構、手間がかかる。
それならば思い切って、ほったらかしの自然農をやってみようと思ったんです」
自然農は、無農薬・無肥料なうえ、土を耕すこともほとんどしないし、
雑草も生えっぱなし。植物の自然な成長力だけに任せた、ある意味、放置の農業である。
「場所によっては畝もつくっていないので、雑草とまったく見分けがつきません。
しばらく経ってちょっと違う葉っぱが生えてきたら、それが目印(笑)
今期待しているのは黒豆、オクラ、キュウリ、トマト、ナス、ニンジン。
あととうもろこしも。もれなくヤングコーン状態になりますけど。
スパイス系もたくさん植えたんですが、収穫できたのはパクチーくらいですね」
大阪で流行しているスパイスカレーは夫婦共通の趣味で、
当時、食べ歩きをしていたという。
家庭でもよくつくるそうで、その材料になるスパイスの収穫は夢だ。
現在、1年近く育てているが、まだほとんど収穫できていないらしい。
ただ、まずは育てたいものを植えてみる。商売ではないから失敗しても構わない。
しかしその積み重ねが暮らしの彩りになっていく。
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家の中を見渡してみると、鉄と木を組み合わせた家具で統一されている。
ほとんどは、翔太さんの手づくりで、なんと鉄の溶接も自らの手で行っている。
木に囲まれた家に住むBESSユーザーには、
テーブルや棚など木製品をDIYする人は多いが、
鉄の溶接までこなせる人はそう多くないだろう。
「以前に住んでいた家から持ってきた家具はひとつもありません。
木のものがあっても合板だったりしたので、この家には合わない。
やはり無垢の木がいいと思い、家を建てるのと並行して家具もつくり始めました」
例えばデスク。無垢の耳つき天板に、鉄の角パイプ3本をZ型に溶接して脚にしている。
食器棚は本人いわく「少し歪んでいる」というが、
キャスターがついていて使いやすそう。
庭に設置してある薪棚も自作だ。屋外で風雨にさらされることを考え、
「鉄でつくったほうが耐久性が高いと思う。
僕の予想では40年くらいはもつ」と自信あり。
翔太さんは溶接経験があったわけではないが、
これもやってみたら案外とできたことのひとつ。
この趣味と技術が高じて、
BESS神戸のLOGWAYコーチャー(リアルな暮らしの経験や知恵を教えてくれ
るBESSの先輩ユーザーのボランティア)が集まって、
「テツandモク」という部活動チームが結成された。
メンバーは7人で、溶接経験者も数名所属。
半年に1回ほど、BESS神戸で一般客向けにものづくりワークショップを行っている。
「もともと面識はありませんでしたが、偶然、コーチャー同士で集まって発足しました。
ちなみに新規部員も募集していますよ」
半年に1回の来場者を対象にしたワークショップ以外にも、
自主的に月1、2回は集まって、ものづくりを行っているそう。
「毎月の集まりは、人に教えるのではなくそれぞれ好きなものをつくっています。
この前、スパイスラックをつくってみました。
BESS神戸に行って材料を見たら、
『妻がほしいと言っていたスパイスラックをつくれそうだな』と。
みんなで集まって技術やアイデアを共有することで、
どんどんできることも増えていますね。
『これ、教えられるよね』と、教えることが楽しくなっています」
半年に1回のワークショップは、当然、BESS神戸にとっても集客するチャンスであるが、
毎月の自主的な集まりにも、BESS神戸は場所を提供している。
「テツandモク」に規則はないし、費用なども発生していない。
それでも「作業中に見学に訪れたお客さんと
少しでもコミュニケーションをとってもらえれば、それでいい」と、
快く場所を貸してくれているそうだ。
むしろ自主的に部活名までつけて活動している「テツandモク」は理想的なケースだ。
イベントのたびにお願いするようなかたちだと、どうしても長続きしない。
むしろ自走こそがおもしろい。“勝手に”生まれたコミュニティは、
枠を用意された集まりよりも、よほど楽しく意欲的だろう。
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山ノ口家の暮らしは、丹波篠山でBESSの家に住み始めて「180度変わった」という。
休日はショッピングモールへ行くことがお約束だったが、
今は家で遊ぶか、山か川に出かける。
また、冬の暮らしが楽しくなったという。毎日のように、家の前で焚き火ができるから。
それに薪ストーブもある。
薪を集めること(=薪活動)は大変だが、買うよりいいらしい。
「“薪活”仲間もできましたし、自分の手で薪を伐ると
『コレ、かたかったやつだ』とか愛着もわいてくるんですよね。
結局、燃やすんですけど(笑)」
当初、移住や田舎暮らしに対して特に前向きではなかったという翔太さんも、
家と土地の力を得て「僕の人生はこれでいくんだ」とグッと前のめりに。
うまくチャンネルを切り替えて順応し、
自然とともにある暮らし、そこから生まれる苦労も含めて、
まるごと楽しんでいるようだ。
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