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超特選レベルの高品質醤油を全国へ
長崎・チョーコー醤油

醤油ソムリエール黒島慶子の
日本醤油紀行
vol.028

posted:2015.11.6   from:長崎県長崎市  genre:食・グルメ

〈 この連載・企画は… 〉  小豆島の「醤(ひしお)の郷」と呼ばれる地域に生まれ、蔵人を愛する醤油ソムリエールが
真心こもった醤油造りをする全国の蔵人を訪ねます。

writer profile

Keiko Kuroshima

黒島慶子

くろしま・けいこ●醤油とオリーブオイルのソムリエ&Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときに体温が伝わる醤油を造る職人に惚れ込み、小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、さまざまな人やコトを結びつけ続けている。高橋万太郎との共著『醤油本』発売中。

標準の醤油の2倍の旨みがある醤油

長崎県最大手醤油メーカー〈チョーコー醤油〉。
九州の醤油は甘いと言われる要因のひとつとして、
鎖国時代にオランダから長崎に砂糖が入ってきたことが挙げられるが、
チョーコー醤油で造るのは関東中心に造られるタイプの醤油“本醸造”が7割、
全体の生産量の6割以上を本州に出荷している。
チョーコー醤油は昭和16年に発足後、高品質の醤油を造る
大規模会社として知られるメーカーで、旨みの強い「超特選」等級の醤油が主力商品。
九州男児の覇気のある姿勢で挑み続けている。

チョーコー醤油は、昭和16年に長崎の29の醸造元が共存共栄と合理化を目指し、
全国初の共同生産・共同販売の会社として設立されました。
当時の醤油業界では、効率よく醤油を造ろうと
日本各地の醤油組合の組合員が出資して醤油製造工場を設立し、
組合で共同生産した醤油を各社に分けるようになりました。
そんななか、長崎では力のある1社が他社を吸収するのでも、
組合の工場で生産するのでもなく“合併”という道を選択。

タワープレス式の圧搾機。圧搾場は乾燥している状態を保ち、雑菌の繁殖を防いでいる。

木槽タンクを使った〈木樽仕込 国産丸大豆使用醤油〉も販売している。

「設立以後はとにかく品質重視で勝負をしてきました。
9割の醤油に丸大豆を使い、できた濃口醤油の窒素は2~2.8(%)。
減塩醬油ですら、少なくとも窒素1.79。平均1.85くらいです」
と技術部部長の加藤秀男さん。
濃口醤油の窒素が2~2.8! 
JASの規格では、「標準」「上級」「特級」「特選」「超特選」
という等級がありますが、それを決める大きな要素が窒素量。
醤油の旨み成分であるグルタミン酸などのアミノ酸類は、
必ず窒素分を含んでいるためです。
JASで定める濃口醤油の標準の窒素は1.2~1.34なので、
標準醤油の2倍の旨みがある、つまり濃厚で味わい深いということになります。
旨みの強い再仕込醤油ですら、標準の窒素は1.4~1.49。
高窒素を目指している蔵元は多数あっても、2~2.8という高い数字は
容易に出るものではなく、この数字を保つ蔵元は前代未聞。

実際味わってみると、こんなに旨みのある醤油があるのかと驚きました。
塩分は通常の濃口と同じなので骨格ある味わいもあります。
ブリのようなしっかりした風味のお刺身や、お肉のソース、
照り焼きやカレーのコク出しにもよさそうです。

チョーコー醤油の醤油で作った豚の生姜焼き。肉の甘み旨みと濃厚なコクが口の中に広がる。

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チョーコー醤油の高品質の秘密は…?

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全国展開しながら高品質を保つ

また、工場の中は清潔を保ち、仕込みから出荷までに12回もの成分検査と、
人が香りや味をチェックする官能検査を行い、
すべて合格しないと出荷できない徹底ぶり。
この高品質を保つ秘密が、社員が大志を抱く「九州男児」の集まりであること。
「社員はとにかく負けん気が強いんです。
100人近くいる営業部署の社員が全国の現場の声を拾ってきてアイデアを出し、
技術側も造る立場からアイデアを出してきます。
会社としてもいいアイデアを出した人を表彰するなど、
社内の声を反映する社風があるので、現場は日々改善していますよ。
さらに、65歳を定年とし、代替わりや経営革新がやりやすい状態にしています」

そのうえで3割ほどは地元に出荷し、地元向けの甘い醤油に。
「地元の人たちはもともと甘口嗜好で、昔の醤油造りの資料を見ても
原材料に“砂糖”と書いてあります。うちも地元向けに甘い醤油を用意していますが、
甘味成分は甘草・ステビアと天然由来のものしか使いません」とこだわりを貫きます。

充填ラインも隅々まできれいなうえに、現場の声をとり入れて導線がスムーズになっている。

2148個の収納スペースをもつ立体自動倉庫。該当商品が製造日順にボタンひとつですぐに出てくるようになっている。

チョーコー醤油が誕生する前から、チョーコー醤油よりさらに大規模のメーカーが
全国に醤油を届けていました。だからこそ効率より品質を優先。
高ランクの醤油を造る大規模メーカーとして、勝負をかけていきました。
例えば味を濃厚にするために大豆・小麦・塩水を仕込み容器に入れる際に、
入れる水分の量を一般の量より1割以上減らしています。
そうするとかたくて非常に搾りにくいうえに、
とれる醤油の量が減るのですが、それでも旨みの多さを優先。

百数十人の意欲と実行力の強い社員が一丸となり、
市場を読み、設備投資をし、商品の品質を向上させる。
醤油だけでなく、ドレッシングもポン酢も、ウスターソースもおいしくて、
私も繰り返し購入しています。
高ランクの醤油や加工品を全国各地の商品棚で手に取れ、
価格もお手頃なので気軽に使えるのはうれしいものです。

なお、チョーコー醤油は予約をすれば
醤油資料蔵、醤油工場、みそ工場の見学ができます。
この連載では昔ながらの造りの蔵元を紹介することが多いので、
立派な機械を導入した造りも学んでみてはいかがでしょうか?

醤油資料館には、醤油や長崎の歴史がまとまっていたり、昔使っていた道具などが展示されている。

技術部部長の加藤秀男さんと、背景にはチョーコー醤油のキャラクター「元気くん」が。子どもの頃から慣れ親しんでほしいと思ってつくったという。ちなみにお姉さんのチョーコちゃんもいる。

information


map

チョーコー醤油

住所:長崎県長崎市西坂町2-7

TEL:095-826-1234

http://choko.co.jp/

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