連載
posted:2025.10.31 from:埼玉県秩父郡 genre:食・グルメ
PR 宝酒造
〈 この連載・企画は… 〉
各地のライターが、全国のまちで思わずその場で缶を空けたくなるほど魅力的な「焼酎ハイボールのお供」を見つけます。
“お供”とはご当地グルメに限らず、風光明媚な景色や地域の方々との対話なども立派な酒のアテ!
焼酎ハイボールを通してそのまちの多面的な魅力を発信していきます。

writer profile
Daiji Iwase
岩瀬大二
いわせ・だいじ●国内外1,000人以上のインタビューを通して行きついたのは、「すべての人生がロードムーヴィーでロックアルバム」。現在、「お酒の向こう側の物語」「酒のある場での心地よいドラマ作り」「世の中をプロレス視点でおもしろくすること」にさらに深く傾倒中。シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエ。「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本ワイン専門WEBマガジン『vinetree MAGAZINE』企画・執筆。
credit
photo:黒川ひろみ
今回のお楽しみは、自然に癒されながらの時間。
お出かけ先は、埼玉の景勝地・長瀞。
酷と名がつくような夏が長くなって、
秋との境目がなんだかわかりにくくなったけれど、
自然の中に身を置けば、ようやく五感で季節を感じられるはずだ。

川底が深く、流れが静かなところを「瀞(とろ)」といい、荒川上流のこのあたりが美しい瀞であるところから、「長瀞」と名づけられたという。隆起した岩が畳を敷き詰めたように広がる「岩畳」と、古代からの地層の重なりを目の当たりにできる「秩父赤壁」がこの地の見どころで、舟下りも人気だ。
今日は勇まず、のんびりいこう。
検索アプリを使えば都内から最短ルートはあるけれど、ちょっと回り道。
熊谷駅で乗り換え、秩父鉄道のSLパレオエクスプレスに乗っていく。

1988年に登場したパレオエクスプレス。牽引するのは、C58363(シゴハチ サンロクサン)。1972年に引退。県内の小学校の校庭で“余生”を過ごし、現役復活した。車両は2012年にリニューアルされ快適。2025年は、12月7日までの土休日を中心に運行している。
エクスプレスと名はついているが、実際はのんびり。
なぜなら蒸気機関車だから。
熊谷から長瀞は通常の各駅停車で約50分、SLは約1時間15分。
音と蒸気が旅心をくすぐる。
もちろん僕はリアルタイムで乗っていたわけではないので、
懐かしさよりもむしろ新鮮に感じているうちに、
SLは警笛を鳴らしながら、
ゆっくりと長瀞駅に入線していく。


1911(明治44)年開業。1997(平成9)年には、「開業当時のままで残され、歴史を物語る木造建築の駅」として「関東の駅百選」に選定された。ICカードが使えたりインバウンド対応も進んでいるが、歴史の香りを存分に味わえる駅舎だ。
レトロな駅舎の改札を抜けてまずは深呼吸。
小雨があがった駅前の空気は確かに秋の気配。
岩畳へはここから歩いて10分ほど。
その間にアテを手に入れよう。
まずは駅に併設される形で営業している
〈ながとろ蕎麦 ちちてつ長瀞駅そば店〉へ。
ここでの目的のアテは「石炭みそポテト」。

改札を出てすぐ。窓から駅舎の風景が見られるのも楽しみの一つ。特にSLは10分ほど停車するので、これを見ながら食するのもいい。店内では「長瀞流しそうめん」も人気。ちなみに石炭みそポテトはSL内でも販売。
みそポテトは秩父の名物B級グルメ。
「昔からなじみのある、伝統的なおやつですね」とスタッフさん。
サイズ感、口触り、歯ごたえ、使用する味噌の種類など、
その店ならではのバリエーションがある。
もともとこちらでも定番のみそポテトがあったが、
ここに加わったのが、ビジュアル的にもネーミング的にも、
インパクト大の石炭みそポテトだ。

まさに真っ黒。見た瞬間は本当に食べられるのかと頭に「?」が浮かぶが……「石炭みそポテト」300円(税込)(1カップ5個入り)
「SLの運行にあわせて何かできないかと思い販売されました。
SLの燃料である石炭をイメージしています」。
まさに石炭を連想する漆黒は、
衣と味噌だれに食用の竹炭を練りこんだもの。
さて、お味は? 楽しみにしておこう。
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駅前から岩畳までの約400m、細くて少し曲がった通りに、土産物屋、食事処、カフェなど約30軒が連なる。細く、少し曲がっていく道は、先が遠くまで見通せない分、迷宮に誘われるようなワクワク感もある。
駅から岩畳へと向かう道は〈長瀞岩畳通り商店街〉。
ほどなく昭和レトロな食堂が左手に見える。
昭和8年開業の〈喜久家食堂〉。

創業は昭和8年。店内では秩父名物の味噌カツなどをアテに飲める。全国の銘酒もそろっており、「昼から吞まれてる人もいらっしゃいますよ(笑)」と真生さん。頼もしい。
昭和レトロな店構えの店頭に、
これまた昭和の家庭でよく見た白地に花柄の鍋。
覗き込めば、串に刺したこんにゃくがいい具合に温まっている。
昔からの名物だという、みそおでんだ。


懐かしさたっぷりの店構えの軒先に味噌おでん。「冬はもちろんですが、夏の暑い時期でも結構出ますね」と4代目の真生さん。「味噌おでんも、昔からなじみのある伝統的なおやつです」。店内ではみそポテトもあり。また、この味噌をアレンジしたみそかつ丼も名物。
ここでも味噌のアテ。そう、秩父の名物といえば味噌。
山間の厳しい環境の中で、保存食であり、
栄養面でも優れた味噌は大切な食材であり食文化。
「テイクアウトもできますよ」
声をかけてくれたのは、
「4代目……候補ですかね(笑)」という堀口真生さん。
「味噌ダレには白味噌を使うところが多いんですが、
うちは2代目である祖母が昔から使っていた赤味噌。
ちょっと高いんですけれど、ずーっと使っています」。
そのエピソードだけでもそそられる。

味噌おでん 3本300円
こんにゃくを取り出し、トレーに乗せ、
目の前でその味噌をかけてくれる。
「甘じょっぱさが特徴です。何を入れているかですか?
砂糖を入れているので甘さもしっかりあります」
レシピは企業秘密じゃないんですか?と冗談っぽく聞けば、
「いえいえ、もう食べればわかりますので(笑)」
旅先、軒先での軽やかな会話は、早く呑みたくなる誘い水。
商店街をさらに進むと、
創業 1949年というお土産物屋〈万寿庵〉がある。
その一角に併設されているのが、〈長瀞とガレ〉。


アテにもいい「しゃくし菜のたまり漬け」といった郷土の名物や、地酒、自慢のみそ豚の腸詰などがズラリと並ぶ<万寿庵>。その一角に併設されている<長瀞とガレ>は、「長瀞で岩畳が多くの文化を育んだように、小さなガレ(フランス語で小石を意味)となって長瀞の新しい文化を育んでいきたい」との思いで名付けられた。
ここは万寿庵の3代目である井上裕羽也さんが、
地域の魅力を伝えたいという思いで立ち上げた、
ガレットをスペシャリティにした店だ。
お目当ては「みそ豚ガレドッグ」。


開店は2013年。井上さんは、東京で会社員経験があるが「育った場所でもあり、愛着もある」好きな長瀞に帰ってきた。「キュッとした中に自然も街もある。感覚的にもクローズではなくオープン。この店を通して長瀞の魅力をもっと伝えていきたいです」。
そもそも万寿庵では2階の工房で豚肉の味噌漬けを製造。
もっと美味しい食べ方があるんじゃないかと、
何年も試行錯誤した末に生み出されたのが、みそ豚の腸詰。
「みそ豚は味噌の中で豚肉を低温熟成するのですが、
その工程でせっかくの肉汁が出てしまう。
それをしっかり閉じ込めたかったんです」
噛みしめて溢れる肉汁を想像しただけで喉が鳴る。
「みそ豚ガレドッグ」はそんなみそ豚の腸詰を、
ガレットでラッピングしたわけだが、ここにも秩父・長瀞らしさがある。


「みそ豚ガレドッグ」は、注文を受けてから店頭で調理。小麦粉をブレンドした生地は、まるでホットケーキのような質感だが、次第にきれいな円を描き、ほどよい厚みに整っていく。すると腸詰の焼けていく香りも……。これを見ながらでも一杯いけそう。
ガレットというと、日本においても、
フランス・ブルターニュのそば粉を使ったものが一般的だが、
こちらは地産の小麦粉をメインにした、オリジナルブレンドの生地。
「秩父は米があまりとれなかった分、
小麦、雑穀はいろいろな種類があり発展してきました。
そば粉もなかったので、小麦のうどん文化だったんです」。
味噌も小麦も、長瀞・秩父エリアが大切に育んできた食文化。
これも井上さんが伝えたかった地域の魅力。
手渡されたアツアツのガレドックからは、
なんだか静かな熱気まで伝わってくるようだった。
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岩畳を歩き、秩父赤壁と静かな流れを眺めながら、
見晴らしのいい東屋に到着。

まずは、冷やしておいた焼酎ハイボールをぐっとひと飲み。
自然に癒され、少しずつ蘇ってきたような五感に、
ガツンと刺激が加わり、しばし目を閉じれば、
さらに五感が覚醒されるような感覚だ。

目を開ければまた岩畳と赤壁の借景。
まだ元気な夏っぽい日差しと、わずかだが秋の訪れの涼風が、
焼酎ハイボールを、もうひと飲みとすすませる。

まだ熱気が伝わる「みそ豚ガレドッグ」からいこう。
小ぶりながら重量感もたっぷり。
かぶりつけば、生地はもっちり。
ブレンド小麦の生地そのものの味わいを感じながら、
みそ豚の腸詰を噛みしめる。
パリッという音の後、肉汁の甘味と旨味がじわり。
そこに味噌の風味も絡んできて、うれしい混然一体となる。
焼酎ハイボールが加われば、
爽快なキレ味でさらに混然一体が進み、
口の中が幸せに包まれていく。

「味噌おでん」は少し冷めても、
むしろ夏の和スイーツを思わせるようで、
これはこれでアリ、というか、これも気に入った。
「うちの甘めの味噌は焼酎ハイボールに合うと思いますよ。
店でも酒のアテにされる方も多いんです」
という真生さんの言う通り。
味噌だれの風味がまったり絡む感じがたまらない。
こんにゃくの弾力と強炭酸がリズムを刻んでくれる。
「石炭みそポテト」は、ほくほく感もあるけれど、
ポテトの食感はしっかりしていて、意外と食べ応えがしっかりある。
色は黒いが、見た目に反して味噌だれはさっぱりめ。
甘じょっぱさもしつこくなく、飽きずに食べられる。
そもそも今までのアテ探しの経験から、
味噌のコクと甘みは焼酎ハイボールと合うことは予想していたが、
ソーセージやこんにゃく、ポテトといった素材との組み合わせは、
新たな発見に導いてくれた。

そして、この素晴らしい風景の中で味わうという要素。
実は古くから、この地の名所である宝登山神社の参拝客が、
この岩畳で月を愛でながら宴会を催したという話を聞いた。
それはきっと、酒に乗じて興に乗りすぎた宴会ではなく、
酒と自然と五感が一体となる、
神秘的な儀式の一つだったのかもしれない……。
そんな物思いにふけっていると、
川遊びをする学生さんたちの元気な声が聞こえてきて、ふと現実に戻る。
なんだかそれさえも心地よいBGMだ。
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ガツンとくる辛口ドライチューハイ!
昭和20年代後半の東京・下町の大衆酒場で生まれた
元祖“焼酎ハイボール”の味わいを追求。
ベースアルコールに伝統の宝焼酎を使用することで実現した、飲みごたえと
キレのある辛口な味わいに加え、糖質ゼロ※1、プリン体ゼロ※2、甘味料ゼロ※3
といった機能面もうれしいひと缶です。
※1 食品表示基準に基づき、100ml当たり糖質0.5g未満を糖質ゼロと表示。
※2 100ml当たりプリン体0.5㎎未満をプリン体ゼロと表示。
※3 食品添加物としての甘味料は使用していません。
information
ながとろ蕎麦 ちちてつ長瀞駅そば店
住所:埼玉県秩父郡長瀞町長瀞528-2
TEL:0494-66-3331
営業時間:10:00〜15:30
定休日:火曜、水曜
information
喜久家食堂
住所:埼玉県秩父郡長瀞町長瀞455
TEL:0494-660-638
営業時間:11:30〜16:00
定休日:不定
information
長瀞とガレ(万寿庵)
住所:埼玉県秩父郡長瀞町長瀞447
TEL:0494-660-637
営業時間:10:00〜16:30
定休日:不定
information
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