連載
posted:2020.6.15 from:栃木県宇都宮市 genre:食・グルメ
sponsored by 宝酒造
〈 この連載・企画は… 〉
「和酒を楽しもうプロジェクト」もいよいよ7年目へ。
舞台をイエノミからソトノミに移し、“酒場推薦人”の方々が、日本各地の魅力的な「ローカル酒場」をご紹介します。
writer profile
Daiji Iwase
岩瀬大二
いわせ・だいじ●国内外1,000人以上のインタビューを通して行きついたのは、「すべての人生がロードムーヴィーでロックアルバム」。現在、「お酒の向こう側の物語」「酒のある場での心地よいドラマ作り」「世の中をプロレス視点でおもしろくすること」にさらに深く傾倒中。シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエ。「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本ワイン専門WEBマガジン『vinetree MAGAZINE』企画・執筆
credit
撮影:池ノ谷侑花(ゆかい)
今回のローカル酒場は、栃木県は宇都宮にご案内。
宇都宮といえば餃子がすぐに浮かびますが、
実はおもしろいカルチャーに溢れたまちでもあります。
例えば自転車。
ツール・ド・フランスなどにもつながる、サイクル・ロードレースの日本での聖地で
トップチームも本拠地を構えます。
そして、フェスでも盛り上がるジャズのまちでもあり、
酒好きには〈宇都宮カクテル〉を展開するバーのまち、
さらに、以前は北関東有数のファッションのまちでもありました。
酒場文化、スポーツ文化、音楽文化、服飾文化。
その中心となったのが「オリオン通り」。
オリオン通りは戦後間もない1948(昭和23)年に生まれ、
1967(昭和42)年には全長280メートルにおよぶアーケードが完成。
以降、文化と商業の担い手となりましたが、
時代の波の中でいわゆるシャッター通りになりつつありました。
しかし、そこから、全国から視察が来るほどの通りに復活。
そのアイコンのひとつが、今回ご案内する〈魚田酒場〉です。
旬の魚を出すうまい店であるだけではなく、
オリオン通りにあるからこその魅力があります。
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その理由はのちほどとして、今回の案内人を紹介しましょう。
タウン情報誌『TonTon(トントン)』の編集長として
宇都宮の情報、カルチャーを紹介している小森裕子さんです。
もともと栃木県の出身ですが、
「死ぬほど東京が好きで(笑)」
ということで大学は東京へ、そして出版社に就職。
編集者としてバリバリ仕事をしていましたが転機が。
それがこのタウン情報誌。
「ちょうどよいタイミングだったんでしょうね。
すごく東京が好きだったので、いつかまた東京に戻りたいと、
最初は、正直、都落ちの気持ちで帰ってきました」
ところが帰ってきて仕事をし、暮らしてみると……
「東京だと取材しても基本は一期一会。
それが宇都宮だとそこからいいおつき合いが始まるんです」
お互いが情報の発信源であり媒介者。
飲食関連、ギャラリーのオーナーとスタッフ、クリエイターにイベントの主催者。
いいお店を共有したり、ムーブメントを支えあったり。
それらを通じてあの頃はわからなかったまちの魅力にも気づきます。
高校まで普通に歩いていたオリオン通りは、
大人として、そして編集者として新たな魅力がありました。
今日は「飲み仲間」という旦那さんと楽しい話をしながらここで注文。
今日の乾杯は〈宝焼酎〉をベースにした緑茶ハイです。
もちろん肴は魚。
中央卸売市場から毎朝仕入れるという魚を堪能しましょう。
刺身、名物のなめろうからスタート。
「この本マグロの中トロ、見た目はA5のお肉みたいですね。
それからアジのなめろうはすごくクリーミー。
こういうものでしたっけ? とてもおいしい!」
と続くうれしい言葉に店長の歌川陽行さんもにっこり。
「特別なことはしてないんですが、できるだけ喜んでいただけるようにと考えています。
ぜひ、アナゴの天ぷらは召し上がってください。
ここで捌いているんです」
店長をはじめとするスタッフさんの工夫や努力。歌川さんは、
「海なし県なので、だからこそ、旬のものをお出ししたい。
ですので市場が休みの日などはお出しできないものもあって。
それは少し心苦しいのですが……」
と言いますが、今日来る意味、今日だからこその体験。
ローカル酒場はそれこそが楽しい。
「店の前を通るといつも混んでいて入れないんです。
その理由がわかりますね」と小森さん。
そして斜め向かいの店を指さします。
「それであちらの店に行くんです。そちらもいつも混んでいるんですけどね」
オリオン通りに向かって開放的な店〈みそだれやきとり かんちゃん〉。
実はそこは、魚田酒場の代表・神田直樹さんが2017年に出した1号店なのです。
はじまりはオリオン通りの近くにある「宇都宮屋台横丁」。
ここは、手狭な6席ほどの店が立ち並ぶ場所で
夢ある人がここで商売を立ち上げ、
軌道に乗ったら卒業していくといういわば登竜門的な飲み屋街。
神田さんは、そこから努力を重ね〈みそだれやきとり かんちゃん〉が誕生し、
順調に成長。もう1軒出すといった際に
「オリオン通りをもっと活性化させたい」という思いで、
斜め向かいの空き地だった場所に目をつけ
地権者の方に思いをぶつけ、魚田酒場を開店。
だから、メニューやおいしさだけではなく
オリオン通りのためにできることはなんでもやる。
例えば、あえて低層にして空が抜ける設計にしたのも
アーケードの中にあって開放感を味わってほしいから。
さらに通りにせり出したテーブル。
全国でも珍しく、公道ながら、
店先3メートルまでは出してよいとの取り決めがされています。
市や警察、事業者の協力で進められたこの取り決めが
オリオン通りを活性化し、
シャッター通りからの復活のひとつの象徴となっています。
かんちゃんにいれば通りをはさんで魚田酒場の賑わいが見える。
魚田酒場にいれば通りをはさんでかんちゃんの煙が見える。
オリオン通りは元気だな。この前を通れば感じられるのです。
ちなみにやきとりと魚、ずいぶんと変えた理由を神田さんに聞けば、
「同じものをやっても飽きちゃう(笑)」
と屈託のない笑顔。
そういえば、と小森さんが教えてくれたのが
『オリオン通り』という曲。
斉藤和義さんと浜崎貴司さん、
ともにこのオリオン通りで青春を過ごしたふたりのアーティストの作品。
そこには当時の活気にかけるせつないオリオン通りが描かれ、
海へと向かいたいという、ここではないどこかへの
若気の静かな叫びが歌われています。
小森さんが東京に向かったのも同じ理由だったのでしょうか。
でもやっぱりこの場所はかけがえのない場所。
この曲と小森さんの物語を聞くと、
歌詞に出てくるカレー屋さんだけではなく
オリオン通りで見かけた2軒の楽器屋さんが、不思議と
ローカル酒場への旅心をくすぐってくれます。
取材先の方と仲良くなり輪が広がる。そして飲み友だちに。
酒場は情報交換の場でもあり、このまちを知ることができる場。
うまい酒、うまい肴、そして楽しい話し相手。
高校生まではわからなかった地元の魅力。
そしてその裏にある物語。
大人になって帰ってきたからこそわかること。
大人になって訪れたからこそわかること。
ローカル酒場には、再発見と新発見があります。
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原料にサトウキビ糖蜜を使用。何度も繰り返して蒸留。
不純物を取り除いてつくられる限りなくピュアな焼酎に、
長年、宝酒造が革新を重ね磨き続けてきた蒸留技術が、ふんだんに生かされ、
ピュアでクセのないすっきりとした味わいを実現しました。
今回のように緑茶割りにしたときも、
お茶の苦みや風味を生かしながらも、焼酎の味をしっかりと感じられます。
風味と使いやすさを両立する、これぞ宝という焼酎です。
※取材撮影は2020年2月。メニューも当時のものです。
information
魚田酒場
住所:栃木県宇都宮市曲師町2-12
TEL:090-8845-3536
休業日:月曜
営業時間:16:00〜22:00
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