連載
posted:2015.11.20 from:愛媛県大洲市 genre:食・グルメ
sponsored by 愛媛県
〈 この連載・企画は… 〉
愛媛のフルーツ、おいしいのは柑橘だけではないんです!
イチゴ、柿、栗、キウイなども実は愛媛の銘産です。
愛媛県産フルーツの生産者さんたちを訪ね、愛情をたっぷり注がれて育つフルーツを見てきました。
さらに、秋から冬にかけてぐっとおいしくなる愛媛県産フルーツを使った、
松山市と東京のスイーツ店もご紹介します。
editor’s profile
Miki Hayashi
林 みき
はやし・みき●フリーランスのライター/エディター。東京都生まれ、幼年期をアメリカで過ごす。女性向けファッション・カルチャー誌の編集を創刊から7年間手掛けた後、フリーランスに。生粋の食いしん坊のせいか、飲料メーカーや食に関連した仕事を受けることが多い。『コロカル商店』では主に甘いものを担当。
credit
撮影:小川 聡
supported by 愛媛県
青々とした葉がしげる枝に実った、大きな橙色の果実。
この写真を愛媛で撮影したと伝えれば、大半の人は「みかんの写真?」と思うかもしれません。
でもこれは、みかんではなく柿の写真。
和歌山県や福岡県などの大産地ほど知られてはいませんが、
実は愛媛県も柿の有数な産地のひとつなのです。
県原産の愛宕柿(あたごがき)をはじめ、富有柿(ふゆうがき)、
刀根早生柿(とねわせがき)、富士柿などさまざまな品種の柿が生産されている愛媛県。
南予地方の最北部に位置する豊かな山間地の大洲市東大洲で、
親子2代にわたり富有柿を生産しつづけている若宮清志さんを訪れました。
ゆるやかな勾配の山に、数々の柿の木が植えられた若宮さんの園地。
麓から頂上まで植えられたどの木にも、きれいな橙色に実った柿が生っていました。
東大洲はみかんを育てるには標高が高すぎるものの、朝晩の気温差が大きく、
柿を甘く育てるのに適した地域なのだそう。
「9月、10月と雨も少なかったこともあって、今年は最高のできなんですよ」
と豊かに実った柿を前に話す若宮さん。
「糖度でいうと今年は16〜18度くらい。でも、こっちの木の実は20度くらいありますね」
と見せてくれたのが、ひとつひとつの実が袋がけされた木。
「これは12月頃に収穫する県産ブランドに認定されている〈媛のふゆ〉で、
贈答品向けの柿。樹上で完熟をさせるからすごく甘くて、
穫るときには真っ赤になるんですよ。
12月まで実を生らせておくと雨や雪、あと霜にあたって皮が汚れてしまうんですが
〈媛のふゆ〉は早いうちに袋をかけるので汚れないし、農薬がかかる量も少ないから
安心・安全と人気なんですよ。7月後半から8月の一番暑い時季に袋がけをするので、
なかなか大変なんですけどね」
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贈答品となる『媛のふゆ』は310〜359gの「3L」、
360g以上の「4L」といわれるサイズまで大きく育てるそうですが、
袋がけをしない富有柿は220〜259gの「L」サイズになるよう、
あえて小さめに育てているという若宮さん。
「もともとは2Lや3Lの大きい実の方が良いとされていたんですが、
今は方針を大きく変えていて。収穫される98%がスーパーで販売されるんですが、
一生懸命大きく育てても単価が高くなってしまうからスーパーでは売れないんですよ。
贈答用のものは3キロ箱で3〜4千円で売れますけど、
普段の暮らしの中で食べる柿としてはなかなか買えないじゃないですか?
だから一般のお客さんが買いやすい単価になるよう、小さめに育てているんです。
全国的に見ても、こんなこと言うのは僕たちだけでしょうね」
とはいえ、自然の恵みである果物。そう簡単には人間が思うようにはいきません。
「これがなかなかうまくいかないんですよね。花の蕾の数を減らしたり、
摘果するときにこれまで2〜3つにしていたのを5〜6つにするんですが、
どうしても“これは大丈夫かな……?”と思ってしまうんですよ。
何せ今まで30年も40年も、2Lや3Lサイズになるよう育てていたので」
そしてもちろん天候にも育ち方は大きく左右されます。
「今年みたいに天気が良くて気温が高いと、2Lくらいにまで育ってしまうんです。
大きく生りすぎる木もあれば、大きく生らない木もありますし……
とはいえ、そんなことを言ってもきりがないので
“天候が変わっても同じものをつくるようしよう”と僕らは言っていて。
完璧に育てられるようになるにはあと4〜5年はかかるんじゃないかな」
おいしく育てるだけでなく、それを食べる人の手に入れやすさまで考え、
年単位で試行錯誤を重ねる生産者の方々。あらためて農産業を営むことの大変さと、
その努力の成果である果物をいただくありがたみの深さを実感させられました。
しっかりと管理をして育てれば、100年は生きるといわれる富有柿の木。
“桃栗三年柿八年”ということわざがあるほど成熟に年月がかかる柿ですが、
木が古くなればなるほど独特のとろみがかった甘さのある実を生らすのだそう。
「みんなで組合をつくり、柿を生産するようになって今年で88年だそうですが、
内子町にある一番古い木は100年のもので、ものすごくおいしい実が生るんですよ。
糖度とか科学的なものを調べただけでは分りづらいものの、
選果場へ柿を毎年買いにきてくださる方には“古い木の実はありますか?”って聞かれますね。
うちの園地は麓の古いもので70年、上の方は50年くらいで
一番奥の方に古い木があるのですが、親戚にもその木の柿を送って欲しいって言われますね」
しかし愛媛県に限らず、全国的に見ても問題となっているのが後継者不足。
「10年先には、間違いなく現在の生産量の6割くらいまで落ちてしまうでしょうね。
僕らJA愛媛たいきの柿部会に所属している生産者の平均年齢は今68歳なので、
10年後には柿部会の人数も30%は減ってしまうんじゃないかな」
「これは和歌山にせよ福岡にせよ、全国ほぼ同じ状態なんです。
でも生産者が減ってきたら減ってきたで、逆に若い者は楽しみなんじゃないかな?
僕らが今のうちに生産量があがるようにしておけば」と、若宮さん。
次の世代のことまでしっかりと考えて柿を育てつづけるその姿は、
私たちの目に実に頼もしく映りました。
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JA愛媛たいき
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