連載
posted:2015.11.18 from:愛媛県八幡浜市 genre:食・グルメ
sponsored by 愛媛県
〈 この連載・企画は… 〉
愛媛のフルーツ、おいしいのは柑橘だけではないんです!
イチゴ、柿、栗、キウイなども実は愛媛の銘産です。
愛媛県産フルーツの生産者さんたちを訪ね、愛情をたっぷり注がれて育つフルーツを見てきました。
さらに、秋から冬にかけてぐっとおいしくなる愛媛県産フルーツを使った、
松山市と東京のスイーツ店もご紹介します。
editor’s profile
Miki Hayashi
林 みき
はやし・みき●フリーランスのライター/エディター。東京都生まれ、幼年期をアメリカで過ごす。女性向けファッション・カルチャー誌の編集を創刊から7年間手掛けた後、フリーランスに。生粋の食いしん坊のせいか、飲料メーカーや食に関連した仕事を受けることが多い。『コロカル商店』では主に甘いものを担当。
credit
撮影:小川 聡
supported by 愛媛県
“愛媛県産のフルーツ”と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるであろうフルーツ、みかん。
みかんの花は愛媛県の花とされ、1952年に制定された県旗にも描かれていて、
さらに愛媛県イメージアップキャラクター「みきゃん」のモチーフもみかんなのです。
柑橘王国として知られる愛媛県にとっても、
みかんは身近ながらも特別な思い入れのあるフルーツともいえる存在とも言えるでしょう。
そんな愛媛のみかんの中でも御三家と呼ばれているのが、西宇和地区で育てられている
〈日の丸みかん〉〈川上みかん〉〈真穴(まあな)みかん〉。
この御三家の中でも日の丸みかんは毎年のように“日本最高峰”の評価を得ているだけでなく、
初売りで日の丸みかんの単価が良かった年は
全国のみかんの単価も上がると言われているほど特別なみかんです。
その産地となるのが愛媛県西端にある八幡浜市向灘地区。
海に囲まれた海岸部は典型的なリアス式海岸で、起伏の多い傾斜地が連なり、
平野部は極めて少ない地域です。
そして驚かされるのが、海を面した山々のほとんどが見事な段々畑になっていること。
「向灘の特徴は全面南向きで朝から晩まで日が照っていること。
その勾配が全部段々畑になっていて、さらに砂地で水はけがいい。
だから糖度があるのに酸味が少ないみかんが育つんです」と話すのは、
3代にわたり向灘地区でみかんの生産を続け、
日本一のみかん産地を長年にわたって支えてきた〈小林果園〉の小林聖知さん。
「みかんは日が当たれば当たるほど糖度が上がるんですよ。
よく“3つの太陽”と言うんですけど、
“お天道様の太陽”“宇和海からの反射光”“段々畑の石垣からの反射光”。
あと最近は、みかんづくりへの情熱が4つ目の太陽とも言われるんですけど、
この太陽によって甘くてコクのある、おいしいみかんが育つんです」
現在では10もの園地を管理し、みかんを育てている小林さんですが、
彼がつくるみかんのもうひとつの特徴はその皮の薄さ。
「実際に皮をむいてもらったらわかるんですけど、もう薄い。
うちの子どもが3歳なんですけど、よそのみかんだったらひとりで皮をむけるのだけど、
うちのみかんだと実に指をつっこんでしまうから“皮がむけんので、もいでくれ”って言う。
それくらい違いがあるんですよ」
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〈媛一みかん〉という名で出荷される、小林果園で育ったみかん。
愛媛で一番、つまり日本で一番ともいえるみかんを育てる小林果園と
ほかのみかん生産者の一番大きな違いは、
「共選(共同選果)」ではなく「個選(個別選果)」という方式で
みかんを出荷していること。
多くの生産者の農作物を組合がひとまとめにして選果して、
ひとつのブランドとして出荷する共選に対し、
農家が個人で選果から箱詰めまでして出荷する個選。
小林果園が個選の方式を取り入れるようになったのは小林さんの代になってから。
「2015年で7年目ですけど、共選だった頃はただ言われた通りに出荷するだけで。
出荷したら後は通知がくるけど、自分のみかんを誰が食べているのかがわからないんですよ。
自分の中で“これは本来の農家じゃないな”という想いもあって個選になったんです」
個選となったことにより、よりいいものをつくらないといけないという
自負を抱くようになったと話す小林さん。しかし最初の数年は試行錯誤の連続だったそう。
「営業先もない、ゼロからはじまった状態で。
東京へ行って、飛び込みで営業をするところから始めたんですけど、
それまで結婚式でしかスーツを着たことがなかったんですよ。
だからインターネットで中古のスーツを買って、ネクタイは知り合いにもらって……
これはいまだに覚えていますね」と笑いながら語る小林さん。
そんな先行きがわからない不安な状態の中でも、
真剣にみかんづくりに取り組み続けた小林さん。
「それまでは組合に言われていた肥料をどの畑にも与えていたのですが
“これだと楽を覚えてしまってイカンな”と思って、
自分のところの山の土壌をひとつひとつ分析してもらったんです。
そうしたら、やっぱり山ごとに成分の差があって。
そこで肥料屋さんにそれぞれの山に応じたオリジナルの肥料をつくってもらい、
まく時期とかも変えるようにしました。
基本的に果物は、南向きの土地だとおいしいものが育つんですよ。
ずっと太陽が当たっている良い立地条件があるんだから、
当たり前のことをしたら良いみかんができるんです」
自分が“当たり前”と思うことを、ひたすら守りつづけることだけでなく
「やっぱり信用が一番大事でしたね」と話す小林さん。
「長年バイヤーさんとの約束を守りつづけていたら“小林は信用できる、数量も守る”とウワサになり、バイヤーさんの輪が広がって今があるんです」
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〈媛一みかん〉だけでなく、園地で育つ
さまざまな品種のみかんで自社加工するジュースも高い評価を得ている小林果園ですが
「最近だと冷凍みかんでも名前が広がっているんですよ」と言う小林さん。
「関東で給食に出される冷凍みかんのうち15%くらい、
今年だと量的には20%がうちの冷凍みかん。うちは千葉と埼玉に出荷していて、
週に3〜4回は冷凍みかんが給食に出るらしいんですよ。
逆に愛媛県ではあまりみかんに給食に出ないんですけどね」
みかんの皮に黒い点が4〜5個ついているだけで二級品扱いされてしまうほど
出荷への基準は厳しいのですが、安心・安全を第一とする給食はもっと厳しいのだそう。
「本当に厳しいですよ、傷んだものが1個あるだけでクレームがきますから。
去年は個数でいったら200万個弱出荷して、クレームがあったのが10個。
普通のみかんだったら全体の2%くらいまでは許されるんですが、
200万個の2%だったら4万個でしょ? それに対して10個ですからね」
そんな厳しい条件の中でも“これをちゃんとしたら、後は自然につながる”と考えた小林さん。
給食用のみかんを出荷していることが小林果園の信頼につながり、
新たな店舗との取引にもつながったのだそう。
そしてもうひとつ、うれしいことが。
「それまではほかの産地の冷凍みかんがずっと給食に出されていたそうなんですが、
うちのものを出すようになったら“愛媛の冷凍みかんのおいしさは違う”と言ってくれる
小学生もいたそうなんですよ」
そんな評判もあって小林果園の冷凍みかんの出荷量は増えているのだそう。
「やっぱり美味しかったら、ちゃんと売れるんですよね」と、
この冷凍みかんの一件も小林さんのみかんづくりへの
さらなる自信につながったのがうかがえました。
取材した10月下旬、収穫されていたのは極早生(ごくわせ)という品種。
ひとつ味見させていただくと甘みと酸味、そして爽やかな香りが広がる味わい。
そのおいしさを伝えると「11月に入ったら宮川早生、
12月には南柑20号という日の丸みかんを日本一のみかんにした品種に切り替わるんですが、
これがまたうまいんですよ。
南柑20号が出回り始めると、早生が食べられなくなるくらいに」と小林さん。
バイヤーへの味見用に早めに収穫されていた南柑20号も味見させていただくと、
これまた驚くほどの甘さ。
「もう十分食べられるでしょ? 1か月先に穫った状態でこの味ですから、
12月になったら相当甘くなりますよ」
西宇和のおいしいみかんを育てる
“お天道様の太陽”“宇和海からの反射光”“段々畑の石垣からの反射光”の3つの太陽。
そして、みかんの味わいと品質をさらに高める“みかんづくりへの情熱”という
4つ目の太陽の力を、そのおいしさで教えてくれる小林果園の媛一みかん。
愛媛県の農林水産物統一キャッチフレーズ『愛媛産には、愛がある。』がまさに謳うように、
みかんひとつひとつに小林さんのみかんへの愛と慈しみが詰まっています。
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小林果園
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